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話し合い3

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「友人達に申し訳なさすぎてやめました。」
「確かにいきなり王族とランチはキツすぎるわね…。」
「あぁ、わたくしも一度食堂で皆さんで召し上がっている所を目撃しましたけれど、そういう事だったのですね。…完全にあの4名以外はお通夜状態でしたわよね。」

ラウラの言葉にセシリアさんはそうなのですよ、と心から同意した。

「では、職員室に長居作戦は?」
「皆様、成績は大変およろしいではないですか。だから分からない所なら俺が教えてやると仰って…。」
「あぁ…。」
「それに先生も察して必要のない細かすぎる部分まで説明して時間稼ぎをしてくださっても、終わるまで律儀に待ってくださっているのですよね…。先生方にも迷惑ですし流石にお昼抜きも申し訳ないのでこれもやめました。」
「なんて事…。」
「…、逃げ回る作戦はどうなっておりますの?」

アリシア様が一応、といったように尋ねるとセシリアさんは死んだ目でフッと笑った。…先日のセシリアさんの呟きでこの先の展開はもう分かってしまう。

「転移魔法で逃げてみたのですが、魔法の痕跡をオルニートガルム君に辿られてすぐ居場所がバレました。なので次の日は友人に痕跡を消してもらったのですが、運悪く誰かしらに見つかってしまいまして…。…そこで私達魔法科は考えました。敵を知り己を知れば百戦危うからず。まずは殿下方の時間割と行動パターンを把握しようと。」
「え、魔法科?」
「えぇ、これは最早私1人では対処不可能。そして殿下方からの執着は、実は私だけでなく我がクラスの皆からも不満が上がっているのです。恐らく学院の生徒全員からアンケートを取ったら魔法科2年の生徒からは“平民がはしたなく高位貴族を手玉に取ろうとしている”という意見は出ないと思います、私が必死で逃げようとしているのと、…私にその気がないのを彼らはよくよく知っていて協力もしてくれているので。私達はここ数ヶ月間、殿下方から逃げるために日々精進しております。」

セシリアさんの話にわたくしは目を見開く。魔法科が総力を挙げても捕まってしまうというの…⁉︎

「殿下方の行動パターンを把握し、先生方も察して昼前の授業は数分早く授業を終わらせてくださいます。そして授業が終わった瞬間私は絶対に鉢合わせない場所へ転移して気配遮断もして友人達に魔法の痕跡を消してもらったのですが、…オルニートガルム君はそれでも私を見つけて来て…。机の横にかけてあった体育着の匂いを嗅いで、その匂いを辿って来たそうです。」
「に、匂い⁉︎しかも体育着を勝手に⁉︎」
「どういう事⁉︎」
「はは、なんだかもう訳がわからないですよね。なんですか匂いって。犬かよ。」

セシリアさんは最早口調も取り繕わずに乾いた笑いをこぼした。それも無理はないだろう。これではもうただのストーカーだ。

「まぁそういう訳で、私のクラスで彼は変態悪質ストーカーと認定されております。他の生徒達もいつか自分達がストーキングの対象となったらと戦々恐々としていて…。殿下方から私の居場所を本当に知らないのに毎日毎日詰問されるのもみんなそろそろ本気で疲れていますし…。…ですので少なくとも、我がクラスでの彼の評判は…。」
「そう…。…けれど、よく抗議しないわね。いくら相手が王族や名門のご子息とはいえ、確固たる証拠と全員の署名を集めれば学院側だって無下には絶対にしないでしょうに…。」
「いえ、それは…」

グラシアの言葉にセシリアさんは目を泳がせた。あら?どうしたのかしら、何か不都合でもあるのかしら…?

「…あの、突然話は変わってしまうのですが。皆様、“ウィルフレッド・カンパヌラ”をご存知でいらっしゃいますか?」
「「「「!」」」」

ウィルフレッド・カンパヌラ。昨年王立学院魔法科を首席で卒業した直後に魔法師団2番隊副隊長となった稀代の天才。他国からのヘッドハンティングも後を絶たなかったようで、光属性のセシリアさん同様王国民なら誰でも知っているような有名人だ。

「もちろんですわ。その有り余る実力から、学生にして既に魔法師団の団員としても活動していらしたのですわよね。」
「えぇ、わたくし達魔法科の大英雄よ。」
「…実は、先程お話した私の正体を知る幼馴染。あれは彼の事なのです。」
「「「「えぇ!!!???」」」」

わたくし達はつい大きな声を上げてしまう。あの大天才様が、セシリアさんの幼馴染…⁉︎…あぁでも、昨年は既に彼は学院で学ぶ傍ら魔法師団でも仕事をこなしていて取っている講義も少なかったそうだから、セシリアさんと学院内で会う機会はそう多くなかったのかしら。それで噂にはならなかった…。

「そして私達は将来を誓い合った仲なのです。」
「「「「将来を!!!!!?????」」」」
「はい。まぁそれもあって同級生の皆さんは“あの憧れのカンパヌラ様の恋人はお守りせねば!!!”と親身になってくれている訳なのですが。基本的に騎士科と魔法科はがっつり実力主義ですし。──更にウィルは、…その、少々過保護なきらいがありまして…。」

あまりの衝撃の事実に驚愕しつつも段々セシリアさんの言いたい事が分かってきた。少し過保護な恋人が、史上最年少で魔法師団の副隊長に就いた魔法の大天才。…つまり。

「ウィルフレッド卿にバレてしまったらどうなるか分からない、という事かしら…?」
「流石はレティシア様、ご名答です。…ウィルにバレてしまっては王都は全壊するでしょうし、彼らのお命も保証致しかねます。」
「…ソウナノネ。」
「という事で、私達はなんとか学院内だけで解決できるよう奮闘している…という訳です。」
「…なるほど、よく分かったわ。…セシリアさん。」

グラシアはため息を吐きつつ立ち上がった。セシリアさんはぱちくりと瞬きをする。

「婚約者が大変失礼致しました。代わりに謝罪させてください。」
「なっ、オルキデア様⁉︎おやめください!貴女様のせいでは、」
「いいえ、噂については随分前から聞き及んでいたもののどうせ結婚はしなくてはいけないのだしと放置していた私にも責任はあるわ。ごめんなさい、ここまで大変な事になっているとは思わなかったわ。」

そう、ただの火遊びだと思っていたのにまさか魔法科2年を巻き込んだ問題になっているとは…。もっと早くに対処すべきだった。

「わたくしからも謝罪を、まさか後輩達がそんな状態に陥っていただなんて…。」
「ごめんなさいセシリアさん、魔法科の皆さんにも本当にご迷惑をおかけしてしまったわ。わたくしがもっときちんとレオナルド様を止められていれば…。」
「わたくしも、噂を鵜呑みにして貴女の方がフェルに言い寄っているのだと思っていましたわ。それにあなたは平民、どうせ卒業したら会う事もないでしょうから自然と離れるだろうと…。…ごめんなさい。」

わたくし達も頭を下げて謝罪すると、セシリアさんはとても慌てていらした。

「いえ、こちらこそもっと早くに無礼を承知でお話させていただくべきでした!それに、…私の話を聞いてくださっただけでも本当にありがたく存じております。ですのでどうかお顔を上げてください。…それより、今後の対策のためどうか皆様の知恵もお借りさせていただけませんか?」
「…えぇ、そうね。」
「分かりましたわ。」

わたくし達が頷いて再びソファに腰を下ろすとセシリアさんはホッとしたような表情を見せた。
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