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大きな一歩
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『拝啓 シルエラ公爵令嬢レティシア様
突然のお手紙失礼致します。どうしても昼間のお話の続きをさせていただきたくこうしてお手紙を書かせて頂きました。お手数ですが、どうかお読みになられた後は燃やして処分なさってください。
私がここで一方的に私の主張を書き連ねるよりも、面と向かってお話させていただく方が良いかと存じます。つきましてはそのためのお時間をいただけませんでしょうか。お返事はお手数ですが、安全のため王国騎士団第三師団長のナランホ卿にお伝えいただけますと幸いでございます。またオルキデア伯爵令嬢グラシア様にヒラソル伯爵令嬢アリシア様、オルテンシア公爵令嬢ラウラ様ともお話させていただければと思っているのですが可能でしょうか。
重ね重ねご迷惑とお手数をおかけ致しまして申し訳ございませんが、どうぞ宜しくお願い致します。
セシリア ビオレータ』
簡単に纏めるとセシリアさんからの手紙はこんな感じだった。なんて用心深くて行動力のある方なのかしら。確かにナランホ伯爵閣下ならセシリアさんもよくご存知でしょうし、とてもおおらかな気の良い方だと聞くから伝令役として適任だろう。学院ではいつ邪魔が入るとも分からないし…。わたくしは早速セシリアさんからの手紙を燃やすとグラシア達セシリアさんに熱を上げている4人の殿方達の婚約者の皆さんに手紙を書いた。明日、お話したい事があるのでお昼に会いたいと。
翌日。わたくし達4人は校内にあるサロンに集っていた。リカルド様の婚約者で魔法科3年のアリシア様が盗聴防止のために結界を張ってくださり、わたくしは昨日の出来事とセシリアさんからの手紙の内容をお話する。
「なるほど…、噂の事は把握していましたがそんな事になっていたとは…。」
「私はもちろんセシリアさんの話を聞きに行くわ。」
グラシアは即答する。するとアリシア様も「私も行きますわ。」と頷く。
「わたくしも行きましょう。セシリアさんを信用した訳ではございませんけれど、フェルが浮気をしているのは紛れもない事実ですもの。双方の言い分を聞かなくては、ね?」
ラウラはニコ、と笑った。恐ろしい笑顔だ。
「ではそうお伝えするわね。皆さん今週の土曜日のご予定は?」
土曜日は学院も休みで皆予定もないようだったのでわたくしは家に帰るとお父様に頼んでナランホ卿にお手紙を渡してもらった。
「レティ、ナランホ卿から手紙だ。」
お父様に手紙を預けた2日後、王宮から帰って来たお父様はわたくしに手紙を手渡した。
「まぁ、ありがとうございますお父様。」
「…レティ、大丈夫か?最近学院で不穏な噂が飛び交っているようだが。」
あぁ、やはりお父様達の耳にも入っているのね…。わたくしは心配そうなお父様に笑ってみせる。
「えぇ、今のところは大丈夫ですわ。これもその噂への対処の一歩なのです。」
「そうか…。」
「…ご安心くださいお父様。もしわたくし達だけではどうにもならなさそうでしたら、その時はちゃんとお父様に助けを求めますわ。」
なおも心配そうなお父様にそう言うと、お父様はやっと「あぁ、そうしてくれ。」と微笑んだ。…できればお父様達に頼らずに解決したいけれど。
わたくしは部屋に戻って手紙の封を開ける。閣下からの手紙の内容は、土曜日の午後にしようという事、それから場所は第三師団の応接室を使うと良い、といった内容だった。第三師団司令部の部屋を貸してくださるなんて…。本当に寛大な方なのね…。わたくしは少し驚きつつ再び手紙を燃やし、翌日3人にも伝えて土曜日の午後、第三師団司令部へと向かうのだった。
突然のお手紙失礼致します。どうしても昼間のお話の続きをさせていただきたくこうしてお手紙を書かせて頂きました。お手数ですが、どうかお読みになられた後は燃やして処分なさってください。
私がここで一方的に私の主張を書き連ねるよりも、面と向かってお話させていただく方が良いかと存じます。つきましてはそのためのお時間をいただけませんでしょうか。お返事はお手数ですが、安全のため王国騎士団第三師団長のナランホ卿にお伝えいただけますと幸いでございます。またオルキデア伯爵令嬢グラシア様にヒラソル伯爵令嬢アリシア様、オルテンシア公爵令嬢ラウラ様ともお話させていただければと思っているのですが可能でしょうか。
重ね重ねご迷惑とお手数をおかけ致しまして申し訳ございませんが、どうぞ宜しくお願い致します。
セシリア ビオレータ』
簡単に纏めるとセシリアさんからの手紙はこんな感じだった。なんて用心深くて行動力のある方なのかしら。確かにナランホ伯爵閣下ならセシリアさんもよくご存知でしょうし、とてもおおらかな気の良い方だと聞くから伝令役として適任だろう。学院ではいつ邪魔が入るとも分からないし…。わたくしは早速セシリアさんからの手紙を燃やすとグラシア達セシリアさんに熱を上げている4人の殿方達の婚約者の皆さんに手紙を書いた。明日、お話したい事があるのでお昼に会いたいと。
翌日。わたくし達4人は校内にあるサロンに集っていた。リカルド様の婚約者で魔法科3年のアリシア様が盗聴防止のために結界を張ってくださり、わたくしは昨日の出来事とセシリアさんからの手紙の内容をお話する。
「なるほど…、噂の事は把握していましたがそんな事になっていたとは…。」
「私はもちろんセシリアさんの話を聞きに行くわ。」
グラシアは即答する。するとアリシア様も「私も行きますわ。」と頷く。
「わたくしも行きましょう。セシリアさんを信用した訳ではございませんけれど、フェルが浮気をしているのは紛れもない事実ですもの。双方の言い分を聞かなくては、ね?」
ラウラはニコ、と笑った。恐ろしい笑顔だ。
「ではそうお伝えするわね。皆さん今週の土曜日のご予定は?」
土曜日は学院も休みで皆予定もないようだったのでわたくしは家に帰るとお父様に頼んでナランホ卿にお手紙を渡してもらった。
「レティ、ナランホ卿から手紙だ。」
お父様に手紙を預けた2日後、王宮から帰って来たお父様はわたくしに手紙を手渡した。
「まぁ、ありがとうございますお父様。」
「…レティ、大丈夫か?最近学院で不穏な噂が飛び交っているようだが。」
あぁ、やはりお父様達の耳にも入っているのね…。わたくしは心配そうなお父様に笑ってみせる。
「えぇ、今のところは大丈夫ですわ。これもその噂への対処の一歩なのです。」
「そうか…。」
「…ご安心くださいお父様。もしわたくし達だけではどうにもならなさそうでしたら、その時はちゃんとお父様に助けを求めますわ。」
なおも心配そうなお父様にそう言うと、お父様はやっと「あぁ、そうしてくれ。」と微笑んだ。…できればお父様達に頼らずに解決したいけれど。
わたくしは部屋に戻って手紙の封を開ける。閣下からの手紙の内容は、土曜日の午後にしようという事、それから場所は第三師団の応接室を使うと良い、といった内容だった。第三師団司令部の部屋を貸してくださるなんて…。本当に寛大な方なのね…。わたくしは少し驚きつつ再び手紙を燃やし、翌日3人にも伝えて土曜日の午後、第三師団司令部へと向かうのだった。
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