殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*

文字の大きさ
上 下
3 / 17

大きな一歩

しおりを挟む
『拝啓 シルエラ公爵令嬢レティシア様


 突然のお手紙失礼致します。どうしても昼間のお話の続きをさせていただきたくこうしてお手紙を書かせて頂きました。お手数ですが、どうかお読みになられた後は燃やして処分なさってください。

 私がここで一方的に私の主張を書き連ねるよりも、面と向かってお話させていただく方が良いかと存じます。つきましてはそのためのお時間をいただけませんでしょうか。お返事はお手数ですが、安全のため王国騎士団第三師団長のナランホ卿にお伝えいただけますと幸いでございます。またオルキデア伯爵令嬢グラシア様にヒラソル伯爵令嬢アリシア様、オルテンシア公爵令嬢ラウラ様ともお話させていただければと思っているのですが可能でしょうか。
 重ね重ねご迷惑とお手数をおかけ致しまして申し訳ございませんが、どうぞ宜しくお願い致します。

 セシリア ビオレータ』

簡単に纏めるとセシリアさんからの手紙はこんな感じだった。なんて用心深くて行動力のある方なのかしら。確かにナランホ伯爵閣下ならセシリアさんもよくご存知でしょうし、とてもおおらかな気の良い方だと聞くから伝令役として適任だろう。学院ではいつ邪魔が入るとも分からないし…。わたくしは早速セシリアさんからの手紙を燃やすとグラシア達セシリアさんに熱を上げている4人の殿方達の婚約者の皆さんに手紙を書いた。明日、お話したい事があるのでお昼に会いたいと。


 翌日。わたくし達4人は校内にあるサロンに集っていた。リカルド様の婚約者で魔法科3年のアリシア様が盗聴防止のために結界を張ってくださり、わたくしは昨日の出来事とセシリアさんからの手紙の内容をお話する。

「なるほど…、噂の事は把握していましたがそんな事になっていたとは…。」
「私はもちろんセシリアさんの話を聞きに行くわ。」

グラシアは即答する。するとアリシア様も「私も行きますわ。」と頷く。

「わたくしも行きましょう。セシリアさんを信用した訳ではございませんけれど、フェルが浮気をしているのは紛れもない事実ですもの。双方の言い分を聞かなくては、ね?」

ラウラはニコ、と笑った。恐ろしい笑顔だ。

「ではそうお伝えするわね。皆さん今週の土曜日のご予定は?」

土曜日は学院も休みで皆予定もないようだったのでわたくしは家に帰るとお父様に頼んでナランホ卿にお手紙を渡してもらった。



「レティ、ナランホ卿から手紙だ。」

お父様に手紙を預けた2日後、王宮から帰って来たお父様はわたくしに手紙を手渡した。

「まぁ、ありがとうございますお父様。」
「…レティ、大丈夫か?最近学院で不穏な噂が飛び交っているようだが。」

あぁ、やはりお父様達の耳にも入っているのね…。わたくしは心配そうなお父様に笑ってみせる。

「えぇ、今のところは大丈夫ですわ。これもその噂への対処の一歩なのです。」
「そうか…。」
「…ご安心くださいお父様。もしわたくし達だけではどうにもならなさそうでしたら、その時はちゃんとお父様に助けを求めますわ。」

なおも心配そうなお父様にそう言うと、お父様はやっと「あぁ、そうしてくれ。」と微笑んだ。…できればお父様達に頼らずに解決したいけれど。
 わたくしは部屋に戻って手紙の封を開ける。閣下からの手紙の内容は、土曜日の午後にしようという事、それから場所は第三師団の応接室を使うと良い、といった内容だった。第三師団司令部の部屋を貸してくださるなんて…。本当に寛大な方なのね…。わたくしは少し驚きつつ再び手紙を燃やし、翌日3人にも伝えて土曜日の午後、第三師団司令部へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられ令嬢は皇太子のお気に入り

怜來
ファンタジー
「魔力が使えないお前なんてここには必要ない」 そう言われ家を追い出されたリリーアネ。しかし、リリーアネは実は魔力が使えた。それは強力な魔力だったため誰にも言わなかった。そんなある日王国の危機を救って… リリーアネの正体とは 過去に何があったのか

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

現実的な異世界召喚聖女

章槻雅希
ファンタジー
 高天原の神々は怒っていた。理不尽な異世界召喚に日ノ本の民が巻き込まれることに。そこで神々は怒りの鉄槌を異世界に下すことにした。  神々に選ばれた広瀬美琴54歳は17歳に若返り、異世界に召喚される。そして彼女は現代日本の職業倫理と雇用契約に基づき、王家と神殿への要求を突きつけるのだった。

断罪茶番で命拾いした王子

章槻雅希
ファンタジー
アルファーロ公爵嫡女エルネスタは卒業記念パーティで婚約者の第三王子パスクワルから婚約破棄された。そのことにエルネスタは安堵する。これでパスクワルの命は守られたと。 5年前、有り得ないほどの非常識さと無礼さで王命による婚約が決まった。それに両親祖父母をはじめとした一族は怒り狂った。父公爵は王命を受けるにあたってとんでもない条件を突きつけていた。『第三王子は婚姻後すぐに病に倒れ、数年後に病死するかもしれないが、それでも良いのなら』と。 『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『Pixiv』・自サイトに重複投稿。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

婚約破棄していただきます

章槻雅希
ファンタジー
貴族たちの通う王立学院の模擬夜会(授業の一環)で第二王子ザームエルは婚約破棄を宣言する。それを婚約者であるトルデリーゼは嬉々として受け入れた。10年に及ぶ一族の計画が実を結んだのだ。 『小説家になろう』・『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

何故恋愛結婚だけが幸せだと思うのか理解できませんわ

章槻雅希
ファンタジー
公爵令嬢のファラーシャは男爵家庶子のラーケサに婚約者カティーブとの婚約を解消するように迫られる。 理由はカティーブとラーケサは愛し合っており、愛し合っている二人が結ばれるのは当然で、カティーブとラーケサが結婚しラーケサが侯爵夫人となるのが正しいことだからとのこと。 しかし、ファラーシャにはその主張が全く理解できなかった。ついでにカティーブもラーケサの主張が理解できなかった。 結婚とは一種の事業であると考える高位貴族と、結婚は恋愛の終着点と考える平民との認識の相違のお話。 拙作『法律の多い魔導王国』と同じカヌーン魔導王国の話。法律関係何でもアリなカヌーン王国便利で使い勝手がいい(笑)。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

処理中です...