僕と松姫ちゃんの妖怪日記

智春

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暗闇の迷路

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7月25日未明


「あれ?こっちで合ってると思うんだけど・・・」

僕は真っ黒い闇夜に取り囲まれて、立ち往生していた。

傲慢な松姫ちゃんとの言い争いで突発的に家を飛び出した後、しばらく車で山中をうろうろ運転して時間を潰していた。出て行くなんて言ったのは、ワガママ放題のあの子にお灸を据えてやろうと思ったからで、本気で自宅に帰る気はなかった。

ところが、土地勘もないくせに街灯もまばらな田舎道を走ってたせいで、完全に迷子になってしまっていた。自分では来た道を戻ったつもりなのに、全然知らない風景ばっかりが現れる。

「ヤバい、ちょっと怖くなってきちゃった」

フロントガラスに映るのは、車ごと飲み込んでしまいそうな山奥へ誘い込む漆黒の暗闇だけ。スマホも圏外で、父さんに助けを求めることもできない。ここ数日給油していなかったから、そろそろガソリンも空になりそうだった。

僕は標識もない林道をひたすら進み続けることが怖くなって、夜が明けるまで道端で停車して過ごすことにした。

「今、何時かな」

スマホを取り出して画面を見ようとしたけど、待ち受けは真っ黒だ。まさか、バッテリー切れ?

「嘘でしょ?」

車のバッテリーで充電しようとキーを回したけど、キュルキュルッという音だけでエンジンはかからない。ガソリンのメーターも振り切ったまま動かない。

どうしよう、父さんの故郷で遭難?笑えない冗談だよ。

「山の中っていっても、民家はあるよね。電話貸してもらおう」

明るくなったら林道を頼りに車を降りて歩いて行動するしかないな。
集落からそれほど離れていないはずだし、きっと林道沿いに住んでいる人もいるよね。もし民家がなくても、林道を進めばどこかの集落に出られると思うし。

少し気が緩んだのか、うとうとしてきた。

「朝になるまで少し眠ろうかな。最近、ずっと誰かと一緒にいて一人でゆっくりする暇なんてなかったからな・・・」

シートを倒して目を閉じると疲労と睡眠不足の波がドッと押しよせてきた。

「松姫ちゃんたち、心配してるかな・・・」

売り言葉に買い言葉でキツいこと言っちゃったけど、子供相手にムキになったなんて冷静になって思い出すと恥ずかしいな。痛いところをグサッと突かれて、素直に受け止められなかっただけなのに。

これじゃ、仕事辞めたあの日の再現みたいだ。

「カッコわる・・・」

ふぅっと吐いたため息と同時に、全身の力が抜けて瞼が完全に開かなくなった。指一本動かすことも面倒なくらい何もできない。

そのまま僕は、暗い水の底にずぶずぶ沈んでいくみたいに、深い眠りの中に落ちていった。
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