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04:中身が違う人間と、離縁を申し込みましたが···
しおりを挟む(どう、話を切り出そうかしらね···)
これを言ったら、最悪不敬罪で断罪されてしまうかも知れないと思うと、私は無意識に羽毛布団をギュッと握っていた。
「···殿下?」
そこに、殿下の手がそっと乗せられて、温かい手の平から温もりが伝わって来る。
「こんなに手を震わせて、無理をして話す必要がある事なのかい?それに君はまだ病み上がりだ。落ち着いてからでも良いんじゃないかな?」
「···、ありがとうございます。ですが、お願いです。どうか聞いてください」
「わかった。ブランシュにとって、大切な事なんだね?」
「はい」
「わかった。それじゃあ、話してみて」
殿下の言葉に、私は静かに頷いて全てを話す事にした。
「それでは、···単刀直入にお伝えします。私は、ブ・ラ・ン・シ・ュ・ではありません。外見はブランシュさんですが、中身は別の世界で生活していた、ただの社会人です。名前は井上 ともえと申します」
「井上 ともえ···、社会人···?」
「はい。ここより、遥かに科学が発達した世界に住んでおりました」
「···」
「···。こんな事を殿下にお伝えする事は、まことに心苦しい事なのですが。どうか、お願い致します。私・と離縁しては頂けませんでしょうか···?」
「···!」
殿下の息が詰まるような喉の音が聞こえて、焦燥感が走る。
「妃教育を受けられたブランシュさんでしたら、きっと立派に務め上げられるでしょうけれど、この世界に例えれば、立場的には平民のような物です。ですから···婚約破棄を···殿下?」
握られた私の手の甲を殿下は自分の頬へと持って行く。その行動が分からなくて、きょとーんとしながらされるがままにしていると、頬に触れさせ、流れる様に殿下の唇に私の指先を当てた。
「··っっ!?」
驚いて手を引っ込めようにも、殿下の力が強すぎて引っ込める事も出来ない。私を他所に、更に首筋、や服の上から体をスーッと撫でさせながら、下へと持って行く。
「っ、えっ、ちょっ···ちょっと待って!ストップ!!」
あまりの羞恥に顔が見る見るうちに熱くなる。
いやいやいや、腰から下は流石にアウトでしょ!
と言うか、これでも淑女(外見は)に何してくれてるのこの変態は!!
空いている手で殿下の胸板を押せば、やっと意味不明な行為を止めてくれた。何だったんだ、いったい。
「君がブランシュじゃないっては話は、本当みたいだね」
(いったい、今の何処にそのブランシュさんがブランシュさんじゃないって···確信できたんだろう)
「腑に落ちないって顔をしているね。いいよ、教えてあげる。ブランシュの性格は君とは正反対なんだ。私がこうして触れるだけでも、彼女は必ず拳をぶつけてくるからね。間違えても君の様に顔を赤くさせて、しおらしい態度なんてするような子じゃなかったからね」
「そう、なんですね···」
(すっごいじゃじゃ馬な子だったのかしら)
「だから、君の反応を見るのは凄く新鮮。あぁ、悪く言っているつもりじゃないよ」
「信じて頂けたのならば幸いに思いますが、離縁の方は···」
「申し訳ないけれど、それは出来ない」
一方的に告げられた中に感じた圧。
「っ、しかし私は···」
詰まりそうな息の中で、やっと声に出せたかと思えば、コンコンコンと数回のノック音ののち、メイドのミーアちゃんが、食事を持って来てくれたようだった。
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