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イヤミな上司
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あれからやたらと江口さんから電話が掛かってくるようになった。
支店長も二つ返事で行くように言ってくれる。
何か罪悪感アリアリですが、意図せず悪く無い立ち位置を確保できたようだ。
実際にも既にトップの売上を上げていたこともあり、中心的な存在となりつつあった。
そんな順調な仕事ではあったが、支店長が体調を崩して入院することとなったのだ。
支えとしていた支店長が抜けるとなると大変になる事は目に見えていた。
なんとか穴埋めをしようと残ったみんなで協力しあって行くように話をしているところだったが、会社が代わりの支店長を派遣してきたのだ。
「坂田支店長の代役として来た支店長代理の大西だ。みんな宜しくな。」
そう言って現れたのは偉そうで上から目線で物を言う大西部長だった。
直接は部下になったわけでは無いが、同期入社の同僚がパワハラタイプだと言っていたのを思い出した。
大西部長はまだ何も分からないはずではあるが、いつもオレのやる仕事に難癖を付けてきては怒鳴る状態だった。
周りのみんなが出来ていない事も全てオレのせいと言った感じで目の敵にされているようだ。
その理由が全く分からなかったためにどうする事も出来なかった。
あとで聞いた話だが、坂田支店長とはライバル関係で坂田さんが築いた部下との関係を良いように思わなかったためらしい。
後は単に嫌がらせ体質だったようだ。
そんな大西支店長代理のおかげでどんどんと業績が悪化していった。
それでもその原因は全てオレに押し付けられた。
みんなも不満ばかり言うようになり、もう辞めるとまで言うメンバーも出てきた。
なんとか乗り越えようと頑張っていたが、正直やる気も起きなくなってきていた。
これはいよいよヤバいなと思っていた矢先、とてつもなく大きな仕事が舞い込んだ。
鉄道関係の仕事だが、今までに無い規模で通常なら本社の役員決済レベルの案件だ。
オレはさすがに大西支店長代理にその旨を伝えて、内容を合わせてメールしておいた。
支店長代理はここぞのチャンスと思ったのか、ろくろく確認もせずにどんどんと話を進めている。
しっかり受注出来れば大きな利益にはなりそうであるが、下請けを不安なところで見積もりを取っていたので心配ではあった。
もう数社、時間を掛けてでも見積もりとった方が良いと助言したが、全く聞く耳持たず。
それどころかイライラを募らせオレに怒鳴るばかり。
さすがにこれじゃサポートも出来ないなとオレも諦めてしまった。
「好きにやってくださいね。どうなろうが代理の責任ですからね。」
と言い放ったが、それも癇に障ったのか、また怒鳴られる。
そんな中、なんと競合とのコンペは最安値で勝利し、受注できる事に。
しかし支店長代理の力では全く無く、下請けが準備したプレゼンでの勝利であった。
もちろんながらそんな事はお構いなしで、自分の手柄だとみんなの前でも言い回っていた。
祝勝会でもそんな話ばかりで全く下請けさんにお礼の気持ちも無いような対応だった。
「見事に私のプレゼンで、受注を勝ち取りました。」
と意気揚々と挨拶してた支店長代理であったが、その対応に怒りをあらわにしたのが下請けの横山社長であった。
「山下くん、悪いけどこの仕事降りるわ。こんなに馬鹿にされたと思うのはオレだけなのかな?」
「あ、横山社長。申し訳ございません。正直、私から見てもこの対応はいかがなものかと思います。」
「弊社の話で申し訳ありませんが、私から話したところで何一つ効果がありませんので、お手数ですが社長から支店長代理にお申し出ください。」
「それは良くわかってるよ。明日、11時に御社にお伺いするのでお伝えください。」
「はい、承知致しました。お手数おかけしますが、宜しくお願いします。」
そう言い残して横山社長は宴会場を後にした。
横山社長の申し出に感謝しつつも、支店長代理にこっそりと耳打ちしておいた。
「横山社長は先にお帰りになられました。今後の話だと思いますが、明日訪問されるそうです。11時です。」
良い話と勘違いしているのだろうが、ニコニコ顔で分かったと答える支店長代理。
少しは苦労すれば良いんだよ…とも思いつつ、明日は荒れるなぁとね。
「おはようございます。支店長代理はいらっしゃいますか。」
「横山社長、ようこそお越しくださいました。代理を呼んできます。こちらにどうぞ。」
と応接室に通す。
後は野となれ山となれの気分で、外で待つオレ。
結構な言い合いが続いているようだ。
「お前のその態度が気に入らんのじゃ。
もうお前のところの仕事は2度とやらんからな!」
と言い放ちながら出てくる横山社長。
小声で、
「ゴメンな。また飲みに行こうな。」
あっけらかんと笑って話す横山社長。
オレは深くお辞儀をして、また連絡しますと声を掛けた。
部屋に入ると支店長代理は顔面蒼白で、
どうしようかとオロオロしていた。
「どうかしたんですか?」
「横山さん、今回の仕事降りるって言ってきた。もう客先にはここでやるって話してるんだけどな。」
「どうして降りるって言ってたんですか?そんな人じゃ無いと思うんですが。」
「手柄を取られたのが気に入らなかったらしい。きちんと説明してるんだけどな。」
「いや、代理の態度でしょう?さすがにあれは酷すぎますよ。何もかも準備させて、お礼の1つも無いのは普通なら我慢ならんでしょう。」
「なんでそんな事知ってるんだ?お前がそそのかしたんだろう?」
「事前に申し訳ないと話してくれました。横山社長から直接話するまでは言うなと言われてましたので。」
「なんだ、やっぱりそう言う事だったんだな?私を貶めるためにやったんだな。」
「この責任は重いぞ、この後処理はお前にやってもらうからな。」
「自分の失敗を人になすり付けるおつもりですね。分かりました、その代わり今後一切この案件に関わらないでください。」
「もちろん役員案件なので今までの経緯をしっかりと報告させて頂きますので。」
そう言い放ってオレは部屋を出た。
代理が女々しくゴニョゴニョ言ってたようだが、見てみぬ振りして相手にしなかった。
オレはその日のうちに坂田支店長の上司でもある牧田取締役に連絡をして事の経緯を話した。
翌日、牧田取締役が本社から支店に飛んできて、大西代理にこっぴどく説教したそうだ。
もちろん業務も停止で、近く管理部に左遷される事になりそうな話だった。
牧田取締役が
「山下くん、良く報告してくれた。あいつは昔から変わってない。せっかくのチャンスを無駄にしてしまったようだな。」
「いえ、もっと早く報告するべきでした。申し訳ございません。代理の無茶を知りながらそのままにしていた私にも責任があります。」
「まぁそこは後にして、現状でお客様に迷惑掛けないためにはどうするんだ?」
「はい、このプランで再申請をお願いしなければならないと考えてます。」
ヤバいと思いつつ社内的には動かせてなかったが、個別には別業者にも見積もりを取っていて、
オレの思っていたプランに近い提案をしてきた業者が有ったので、もしもの事を考えて枠は押さえていたのだ。
「正直、代理の取ってきた価格では対応できないと思います。プランも十分で無いし下請けの力も足りないと感じてます。」
「イニシャルコストはおそらくかなり赤字になるかと思いますが、新しい下請けのプランでいけばランニングで回収は可能とみてます。」
「いずれにしても新しい下請けとそのプランを明日にでも先方に説明に行ってきます。」
「そうか、そこまで準備はしてくれていたんだな。この案件は私から社長へ話しておくよ。」
「明日の客先説明は私も一緒に行こう。受けた限りは赤になろうがやり遂げる事が重要。お客さんに迷惑を掛けてはいけないからな。」
「はい、ありがとうございます。明日は宜しくお願いします。」
翌日、担当課長にお会いして、今までの経緯と新プランについて説明し、コストが変わらないならと了承して頂いた。
他社と比べて明らかに価格が安すぎるレベルだったのでと担当者も多少の心配はしていたそうだ。
牧田取締役も事前に担当課長の上司に連絡して頂いていたようで、スムーズに商談を終える事が出来た。
「牧田取締役、ありがとうございました。」
「いやいや、俺は何もしてないよ。山下くんの手柄だよ。大きな損害になるところを最小限に食い止めたんだからね。事前の対応もやってくれていて助かったよ。」
「社長にも説明したら良くやってくれたと誉めてたぞ。」
「そうですか。そう言って頂けるだけでありがたいですね。」
なんとかこの件に関しては良い形に戻す事が出来たが、代理が引っ掻き回した案件が多数あり、部のメンバーも余計な対応をせざるを得なかった。
そんなみんなを元気付けながら、1つずつ丁寧に対応していった。
支店長も二つ返事で行くように言ってくれる。
何か罪悪感アリアリですが、意図せず悪く無い立ち位置を確保できたようだ。
実際にも既にトップの売上を上げていたこともあり、中心的な存在となりつつあった。
そんな順調な仕事ではあったが、支店長が体調を崩して入院することとなったのだ。
支えとしていた支店長が抜けるとなると大変になる事は目に見えていた。
なんとか穴埋めをしようと残ったみんなで協力しあって行くように話をしているところだったが、会社が代わりの支店長を派遣してきたのだ。
「坂田支店長の代役として来た支店長代理の大西だ。みんな宜しくな。」
そう言って現れたのは偉そうで上から目線で物を言う大西部長だった。
直接は部下になったわけでは無いが、同期入社の同僚がパワハラタイプだと言っていたのを思い出した。
大西部長はまだ何も分からないはずではあるが、いつもオレのやる仕事に難癖を付けてきては怒鳴る状態だった。
周りのみんなが出来ていない事も全てオレのせいと言った感じで目の敵にされているようだ。
その理由が全く分からなかったためにどうする事も出来なかった。
あとで聞いた話だが、坂田支店長とはライバル関係で坂田さんが築いた部下との関係を良いように思わなかったためらしい。
後は単に嫌がらせ体質だったようだ。
そんな大西支店長代理のおかげでどんどんと業績が悪化していった。
それでもその原因は全てオレに押し付けられた。
みんなも不満ばかり言うようになり、もう辞めるとまで言うメンバーも出てきた。
なんとか乗り越えようと頑張っていたが、正直やる気も起きなくなってきていた。
これはいよいよヤバいなと思っていた矢先、とてつもなく大きな仕事が舞い込んだ。
鉄道関係の仕事だが、今までに無い規模で通常なら本社の役員決済レベルの案件だ。
オレはさすがに大西支店長代理にその旨を伝えて、内容を合わせてメールしておいた。
支店長代理はここぞのチャンスと思ったのか、ろくろく確認もせずにどんどんと話を進めている。
しっかり受注出来れば大きな利益にはなりそうであるが、下請けを不安なところで見積もりを取っていたので心配ではあった。
もう数社、時間を掛けてでも見積もりとった方が良いと助言したが、全く聞く耳持たず。
それどころかイライラを募らせオレに怒鳴るばかり。
さすがにこれじゃサポートも出来ないなとオレも諦めてしまった。
「好きにやってくださいね。どうなろうが代理の責任ですからね。」
と言い放ったが、それも癇に障ったのか、また怒鳴られる。
そんな中、なんと競合とのコンペは最安値で勝利し、受注できる事に。
しかし支店長代理の力では全く無く、下請けが準備したプレゼンでの勝利であった。
もちろんながらそんな事はお構いなしで、自分の手柄だとみんなの前でも言い回っていた。
祝勝会でもそんな話ばかりで全く下請けさんにお礼の気持ちも無いような対応だった。
「見事に私のプレゼンで、受注を勝ち取りました。」
と意気揚々と挨拶してた支店長代理であったが、その対応に怒りをあらわにしたのが下請けの横山社長であった。
「山下くん、悪いけどこの仕事降りるわ。こんなに馬鹿にされたと思うのはオレだけなのかな?」
「あ、横山社長。申し訳ございません。正直、私から見てもこの対応はいかがなものかと思います。」
「弊社の話で申し訳ありませんが、私から話したところで何一つ効果がありませんので、お手数ですが社長から支店長代理にお申し出ください。」
「それは良くわかってるよ。明日、11時に御社にお伺いするのでお伝えください。」
「はい、承知致しました。お手数おかけしますが、宜しくお願いします。」
そう言い残して横山社長は宴会場を後にした。
横山社長の申し出に感謝しつつも、支店長代理にこっそりと耳打ちしておいた。
「横山社長は先にお帰りになられました。今後の話だと思いますが、明日訪問されるそうです。11時です。」
良い話と勘違いしているのだろうが、ニコニコ顔で分かったと答える支店長代理。
少しは苦労すれば良いんだよ…とも思いつつ、明日は荒れるなぁとね。
「おはようございます。支店長代理はいらっしゃいますか。」
「横山社長、ようこそお越しくださいました。代理を呼んできます。こちらにどうぞ。」
と応接室に通す。
後は野となれ山となれの気分で、外で待つオレ。
結構な言い合いが続いているようだ。
「お前のその態度が気に入らんのじゃ。
もうお前のところの仕事は2度とやらんからな!」
と言い放ちながら出てくる横山社長。
小声で、
「ゴメンな。また飲みに行こうな。」
あっけらかんと笑って話す横山社長。
オレは深くお辞儀をして、また連絡しますと声を掛けた。
部屋に入ると支店長代理は顔面蒼白で、
どうしようかとオロオロしていた。
「どうかしたんですか?」
「横山さん、今回の仕事降りるって言ってきた。もう客先にはここでやるって話してるんだけどな。」
「どうして降りるって言ってたんですか?そんな人じゃ無いと思うんですが。」
「手柄を取られたのが気に入らなかったらしい。きちんと説明してるんだけどな。」
「いや、代理の態度でしょう?さすがにあれは酷すぎますよ。何もかも準備させて、お礼の1つも無いのは普通なら我慢ならんでしょう。」
「なんでそんな事知ってるんだ?お前がそそのかしたんだろう?」
「事前に申し訳ないと話してくれました。横山社長から直接話するまでは言うなと言われてましたので。」
「なんだ、やっぱりそう言う事だったんだな?私を貶めるためにやったんだな。」
「この責任は重いぞ、この後処理はお前にやってもらうからな。」
「自分の失敗を人になすり付けるおつもりですね。分かりました、その代わり今後一切この案件に関わらないでください。」
「もちろん役員案件なので今までの経緯をしっかりと報告させて頂きますので。」
そう言い放ってオレは部屋を出た。
代理が女々しくゴニョゴニョ言ってたようだが、見てみぬ振りして相手にしなかった。
オレはその日のうちに坂田支店長の上司でもある牧田取締役に連絡をして事の経緯を話した。
翌日、牧田取締役が本社から支店に飛んできて、大西代理にこっぴどく説教したそうだ。
もちろん業務も停止で、近く管理部に左遷される事になりそうな話だった。
牧田取締役が
「山下くん、良く報告してくれた。あいつは昔から変わってない。せっかくのチャンスを無駄にしてしまったようだな。」
「いえ、もっと早く報告するべきでした。申し訳ございません。代理の無茶を知りながらそのままにしていた私にも責任があります。」
「まぁそこは後にして、現状でお客様に迷惑掛けないためにはどうするんだ?」
「はい、このプランで再申請をお願いしなければならないと考えてます。」
ヤバいと思いつつ社内的には動かせてなかったが、個別には別業者にも見積もりを取っていて、
オレの思っていたプランに近い提案をしてきた業者が有ったので、もしもの事を考えて枠は押さえていたのだ。
「正直、代理の取ってきた価格では対応できないと思います。プランも十分で無いし下請けの力も足りないと感じてます。」
「イニシャルコストはおそらくかなり赤字になるかと思いますが、新しい下請けのプランでいけばランニングで回収は可能とみてます。」
「いずれにしても新しい下請けとそのプランを明日にでも先方に説明に行ってきます。」
「そうか、そこまで準備はしてくれていたんだな。この案件は私から社長へ話しておくよ。」
「明日の客先説明は私も一緒に行こう。受けた限りは赤になろうがやり遂げる事が重要。お客さんに迷惑を掛けてはいけないからな。」
「はい、ありがとうございます。明日は宜しくお願いします。」
翌日、担当課長にお会いして、今までの経緯と新プランについて説明し、コストが変わらないならと了承して頂いた。
他社と比べて明らかに価格が安すぎるレベルだったのでと担当者も多少の心配はしていたそうだ。
牧田取締役も事前に担当課長の上司に連絡して頂いていたようで、スムーズに商談を終える事が出来た。
「牧田取締役、ありがとうございました。」
「いやいや、俺は何もしてないよ。山下くんの手柄だよ。大きな損害になるところを最小限に食い止めたんだからね。事前の対応もやってくれていて助かったよ。」
「社長にも説明したら良くやってくれたと誉めてたぞ。」
「そうですか。そう言って頂けるだけでありがたいですね。」
なんとかこの件に関しては良い形に戻す事が出来たが、代理が引っ掻き回した案件が多数あり、部のメンバーも余計な対応をせざるを得なかった。
そんなみんなを元気付けながら、1つずつ丁寧に対応していった。
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