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7.キミとまた会えたから
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ミニバスの練習が終わって帰る時、直哉に送ってもらうのがもう当然となっていた。
それどころか、『カスミ』のバイト帰りでも、直哉がお店に来ている時には送ってもらうようにって、おじいちゃんもお母さんも直哉に言うんだもん。
頼り過ぎじゃない? 子供じゃないから一人で帰れるっていうのに。
直哉も直哉で嫌な顔しないから、今日もこうして並んで帰ることになっている。
傍にいるのが当たり前で、いないことが考えられない。
いつの間に直哉はそんな存在になっていたんだろう。
中学生の頃は直哉のことをそんな風には考えていなかったのに。
再会してから? ううん。そんなことはない。
でも、再会してから色んなことがあったから。
どんな時も直哉は嫌な顔しないし、受け止めてくれる。
ってことは、直哉も懐が深いってこと? 誰にでもそうなのかな?
「夕映? さっきから黙り込んでどうした?」
つい考えごとに集中していたから、直哉の呼びかけに顔を上げたら、思ったより至近距離に直哉の顔があった。
「うわっ、近いっ!」
「あ、悪い。なんかずっと俯いていたからどうしたかと思って」
「どうしたって……」
言えるわけないじゃない。直哉のこと考えていたから、なんて。
「あ、そう! この前ね、千歌とちゃんと話し合えたの!」
誤魔化すように話しはじめたけど、これだってちゃんと直哉に伝えたかったことだし。
直哉は驚いたように目を丸くして、言葉をなくしている。
「それは、突然だな」
呆気にとられたのか、ぽかんとした表情の直哉が面白くて、つい笑ってしまった。
「うん。この前さ、三角公園で直哉が自分のこと話してくれたでしょ? それで直哉はちゃんと自分で前を向いて進んできたのに、私っていつも直哉に助けられてばっかりだったなって。それにお母さんとも和解できて、今の私なら千歌と向き合っても逃げずにちゃんと話せるんじゃないかって、そう思ったの。それでね、そうしたら……」
「どうした?」
不自然に言葉が途切れた私に、直哉は声をかけてくる。
でも私は、ここまで話して気づいてしまったんだ。
千歌と向き合うと決めたのは、いつまでも逃げた自分じゃいけないと思ったから。
この先に進む一歩の為に、弱い自分だけど少しでも強くなりたいと思ったから。
そうしたら、直哉も笑ってくれるんじゃないか……って。
「夕映?」
今まで何度だって呼ばれた名前なのに、どくんっと心臓が跳ねあがる。
『直哉くんのこと、本当に友達だと思っているの? あたしや、学校のお友達と同じ枠組みに、彼は入っているの?』
千歌の言葉が頭の中でリフレインする。
違う。直哉は千歌や真夏ちゃんたちとは一緒じゃない。
優しいからだけじゃない、守ってくれるからだけじゃない。
おじいちゃんと話す優しい声も、時々悪ガキに戻る表情も、どれもこれもが急に色鮮やかに浮かんでくる。
「さっきからどうした? おかしいぞ。体調悪いとかか?」
心配そうに顔を覗き込まれて、そのまま額に手を置かれて熱を測られる。
「わかんないな。とりあえず身体冷やしたかもしれないし、急いで帰るか」
今までだって何度も手を繋いできたし、こんな接触どうってことないはずなのに、急に恥ずかしくなってきた。
おかしい。完全に感情がコントロールできなくなっている。
「とりあえず俺ので悪いけど、これも羽織っておけ。風邪の引き始めかもしれないし」
「ちがっ」
こんなに私が取り乱しているっていうのに、直哉は平然としている。
千歌の嘘つき。なにが特別よ。
確かにこれは大事にしてくれているんだろうけど、オカン的に過保護なだけじゃないの? 直哉ってば。
「とにかく帰ろう。そんで早く寝ろ」
「いやっ」
人の気を知らずに手を引っ張って帰ろうとする直哉の手を、勢いよく振り払った。
「夕映?」
「あ、その、いやっていうか、あの」
あーもう、うまく説明できない。
なにこれ。自覚した途端、人間ってこんなにポンコツになるの?
「だ、大丈夫! 風邪じゃないし、元気! 一人で帰れるし、もうここでいいよ。じゃっ」
とにかく今はもう無理。いろいろ無理。
キャパオーバーもいいとこだよ。
「あ、上着も返すね、それじゃっ」
押し付けるように上着を渡して方向転換しようとしたら、その手首を掴まれた。
「な、直哉?」
思ったより強い力で掴まれたから、逃げることなんてできなかった。
それどころか、『カスミ』のバイト帰りでも、直哉がお店に来ている時には送ってもらうようにって、おじいちゃんもお母さんも直哉に言うんだもん。
頼り過ぎじゃない? 子供じゃないから一人で帰れるっていうのに。
直哉も直哉で嫌な顔しないから、今日もこうして並んで帰ることになっている。
傍にいるのが当たり前で、いないことが考えられない。
いつの間に直哉はそんな存在になっていたんだろう。
中学生の頃は直哉のことをそんな風には考えていなかったのに。
再会してから? ううん。そんなことはない。
でも、再会してから色んなことがあったから。
どんな時も直哉は嫌な顔しないし、受け止めてくれる。
ってことは、直哉も懐が深いってこと? 誰にでもそうなのかな?
「夕映? さっきから黙り込んでどうした?」
つい考えごとに集中していたから、直哉の呼びかけに顔を上げたら、思ったより至近距離に直哉の顔があった。
「うわっ、近いっ!」
「あ、悪い。なんかずっと俯いていたからどうしたかと思って」
「どうしたって……」
言えるわけないじゃない。直哉のこと考えていたから、なんて。
「あ、そう! この前ね、千歌とちゃんと話し合えたの!」
誤魔化すように話しはじめたけど、これだってちゃんと直哉に伝えたかったことだし。
直哉は驚いたように目を丸くして、言葉をなくしている。
「それは、突然だな」
呆気にとられたのか、ぽかんとした表情の直哉が面白くて、つい笑ってしまった。
「うん。この前さ、三角公園で直哉が自分のこと話してくれたでしょ? それで直哉はちゃんと自分で前を向いて進んできたのに、私っていつも直哉に助けられてばっかりだったなって。それにお母さんとも和解できて、今の私なら千歌と向き合っても逃げずにちゃんと話せるんじゃないかって、そう思ったの。それでね、そうしたら……」
「どうした?」
不自然に言葉が途切れた私に、直哉は声をかけてくる。
でも私は、ここまで話して気づいてしまったんだ。
千歌と向き合うと決めたのは、いつまでも逃げた自分じゃいけないと思ったから。
この先に進む一歩の為に、弱い自分だけど少しでも強くなりたいと思ったから。
そうしたら、直哉も笑ってくれるんじゃないか……って。
「夕映?」
今まで何度だって呼ばれた名前なのに、どくんっと心臓が跳ねあがる。
『直哉くんのこと、本当に友達だと思っているの? あたしや、学校のお友達と同じ枠組みに、彼は入っているの?』
千歌の言葉が頭の中でリフレインする。
違う。直哉は千歌や真夏ちゃんたちとは一緒じゃない。
優しいからだけじゃない、守ってくれるからだけじゃない。
おじいちゃんと話す優しい声も、時々悪ガキに戻る表情も、どれもこれもが急に色鮮やかに浮かんでくる。
「さっきからどうした? おかしいぞ。体調悪いとかか?」
心配そうに顔を覗き込まれて、そのまま額に手を置かれて熱を測られる。
「わかんないな。とりあえず身体冷やしたかもしれないし、急いで帰るか」
今までだって何度も手を繋いできたし、こんな接触どうってことないはずなのに、急に恥ずかしくなってきた。
おかしい。完全に感情がコントロールできなくなっている。
「とりあえず俺ので悪いけど、これも羽織っておけ。風邪の引き始めかもしれないし」
「ちがっ」
こんなに私が取り乱しているっていうのに、直哉は平然としている。
千歌の嘘つき。なにが特別よ。
確かにこれは大事にしてくれているんだろうけど、オカン的に過保護なだけじゃないの? 直哉ってば。
「とにかく帰ろう。そんで早く寝ろ」
「いやっ」
人の気を知らずに手を引っ張って帰ろうとする直哉の手を、勢いよく振り払った。
「夕映?」
「あ、その、いやっていうか、あの」
あーもう、うまく説明できない。
なにこれ。自覚した途端、人間ってこんなにポンコツになるの?
「だ、大丈夫! 風邪じゃないし、元気! 一人で帰れるし、もうここでいいよ。じゃっ」
とにかく今はもう無理。いろいろ無理。
キャパオーバーもいいとこだよ。
「あ、上着も返すね、それじゃっ」
押し付けるように上着を渡して方向転換しようとしたら、その手首を掴まれた。
「な、直哉?」
思ったより強い力で掴まれたから、逃げることなんてできなかった。
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