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6.そして向きあう

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「私、千歌と一緒に頑張りたいと思っていたはずだったのに、どこかで千歌に抜かされないって思っていたんだ。だから、千歌が私より上手になったことに嫉妬した。最低だよね、本当にごめん」
 一緒に頑張るって、お互い励ましあうことのはずなのに、私の中ではどこかで千歌は追いかけてくるものだと思っていた。
 初心者のままだと思ってしまっていたんだ。
 その驕った心が、現実を受け入れられず、嫉妬としてさらに劣等感を生んだ。
 ばかみたいにプライドもあったんだ。それが全部崩れ落ちた。
 弱いだけじゃなくて、みっともないよね、本当に。

「あたしは、夕映を抜かしたなんて、一度も思ったことがないよ」
「はぁ?」
 予想しなかった言葉に思わず顔を上げると、千歌はまだ泣きそうな顔をしていた。
 え? なんでそんな顔してるの?
 今の言葉は、私をバカにしたんじゃないの?

「夕映は最初から上手で、ずっと憧れだった。確かに途中であたしがスタメン選ばれるようになったけど、誰だって好不調はあるもん。だから夕映はまた調子を取り戻すって思っていたの。だけど、夕映はそんなことを思っていたんだね」
 好不調……。千歌から見たら、そんな風に見えたのか。
 私は必死に足掻いていたっていうのに。
 でもそうか。千歌って純粋だから、私みたいに誰が上とかそんなことに捉われないんだ。
 だから上達も早かったし、私が藤咲に行くって最後まで疑わなかったんだ。

「ごめん……弱くて。千歌の気持ちも気づかなくて、私は自分で自分を苦しめていたんだね」
「あたしね、夕映がバスケを辞めたのはショックだったし、藤咲に行かないって言ったのもショックだった。だけど、ううん、だからこそかな。あたしは藤咲に行かなくちゃって思ったの。だってあたしがバスケを好きになったのも、続けていられるのも、夕映がいたからだし、夕映が大好きだから」
「千歌……」

「だから今日、会えて本当に嬉しかった。ありがとう、夕映」
 涙を振り払うように瞬きを繰り返して、千歌は歯を見せて笑った。
 ありがとうって、言ってくれるの?
 私が一方的に嫉妬して、一方的に傷つけたのに。

「千歌、優しすぎるよ。怒っていいんだよ。今日は怒られる覚悟で来たんだから」
 逃げ続けたのは嫌われたくなかったから。
 傷つきたくなかったから。
 正直なにが正解かわからない。こうして怒っていいって相手にゆだねるのも、本当はズルいのかもしれない。
 許してもらおうと思っている気持ちが、あるんだもん。
 だって、千歌に嫌われなくない。だから逃げていた。
 醜い心を知られたら、離れていくんじゃないかって。
 それでも今のままじゃいけないって思ったから、会いに来たんだ。
 簡単には変われなくても、自分と向き合う為に。そしてこれからの為にも。
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