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2.逃げた過去
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静寂の中、教室内の緊張を解き放つチャイムの音で、一気に空気が変わった。
帰り支度を済ませて廊下に出ると、足早に皆が通り過ぎる。
「やっと終わったー!」
「ねぇ、最後の問題難しすぎない?」
「やっと部活行けるよ。早く行こ、行こ」
受験程じゃなくても、テストというのはピリピリするもの。一応進学校だしね。
中学の頃の雰囲気とは全然違って、みんなテスト期間中は集中していた。それを考えると中学って結構テスト中でもふざけている子とか多かったなぁって思う。
「夕映、テストできた?」
「まあまあかな」
……自然に答えてしまってから、気づいた。
今、クラスで私にこんな風に話しかけてくる友達はいないということに。
話しかけてくるとしたら一人だけ。答え合わせするまでもないけど、振り返れば予想通り直哉が立っていた。
「へぇー。夕映ってそんなに勉強できたっけ?」
「……受験でしっかり勉強したからね。その貯金がまだあるってだけよ」
「そっか」
思わず返事をしてしまったことをなかったことにしたくて、足早に立ち去ろうと思うのに、ピッタリ歩幅合わせてついてくる。
なんで? 今まで学校では話しかけてこなかったのに。
「俺もまぁ、まあまあだよ」
「そう。それじゃ」
下駄箱までついてこられたけど、さっさと靴を履き替えて帰ろうとしたら、肩をグイっと掴まれた。
「なに?」
「今日は『カスミ』お休みだろ? ちょっと付き合ってよ」
確かに今日は定休日。把握するくらい常連になってることに、ちょっとびっくりする。
「なんでよ」
「……そろそろ、向き合ってくれてもよくない?」
「嫌よ」
「いつまで逃げるんだ?」
いきなり核心をついてきた直哉に、驚いた。
あの日以来、直哉だってこの話題避けていたのに。
「ねえ、オブラートって言葉知らないの?」
「そんなもん、知ったことか」
完全に油断していた。
『カスミ』ではおじいちゃんがいるからか、直哉は優しい言葉だったし、学校では気を遣っていたのか今まで話しかけてこなかったし。
いきなり突撃されるなんて思っていなかったんだ。
「これでも待ったよ。そのうち話しかけてくれるかもって『カスミ』にも通ったし、学校でも様子見てたけど、夕映は全然こっち見ないだろう? だから決めてたんだよ、中間テスト終わったらはっきりさせようって」
「勝手に決めないでよ。私にだって心構えってものが……」
ずるい。心が無防備の時に揺さぶってくるなんて。
こんなの我慢できないに決まってる。
ポロッとこらえきれない涙が一度零れてしまえば、あっという間に決壊してしまった。
「夕……」
「ばか直哉!」
こんなところで泣き崩れるわけにはいかない。
乱暴に拭ってヒリヒリする頬を隠すかのように、うつ向いて校門へと全力で走った。
帰り支度を済ませて廊下に出ると、足早に皆が通り過ぎる。
「やっと終わったー!」
「ねぇ、最後の問題難しすぎない?」
「やっと部活行けるよ。早く行こ、行こ」
受験程じゃなくても、テストというのはピリピリするもの。一応進学校だしね。
中学の頃の雰囲気とは全然違って、みんなテスト期間中は集中していた。それを考えると中学って結構テスト中でもふざけている子とか多かったなぁって思う。
「夕映、テストできた?」
「まあまあかな」
……自然に答えてしまってから、気づいた。
今、クラスで私にこんな風に話しかけてくる友達はいないということに。
話しかけてくるとしたら一人だけ。答え合わせするまでもないけど、振り返れば予想通り直哉が立っていた。
「へぇー。夕映ってそんなに勉強できたっけ?」
「……受験でしっかり勉強したからね。その貯金がまだあるってだけよ」
「そっか」
思わず返事をしてしまったことをなかったことにしたくて、足早に立ち去ろうと思うのに、ピッタリ歩幅合わせてついてくる。
なんで? 今まで学校では話しかけてこなかったのに。
「俺もまぁ、まあまあだよ」
「そう。それじゃ」
下駄箱までついてこられたけど、さっさと靴を履き替えて帰ろうとしたら、肩をグイっと掴まれた。
「なに?」
「今日は『カスミ』お休みだろ? ちょっと付き合ってよ」
確かに今日は定休日。把握するくらい常連になってることに、ちょっとびっくりする。
「なんでよ」
「……そろそろ、向き合ってくれてもよくない?」
「嫌よ」
「いつまで逃げるんだ?」
いきなり核心をついてきた直哉に、驚いた。
あの日以来、直哉だってこの話題避けていたのに。
「ねえ、オブラートって言葉知らないの?」
「そんなもん、知ったことか」
完全に油断していた。
『カスミ』ではおじいちゃんがいるからか、直哉は優しい言葉だったし、学校では気を遣っていたのか今まで話しかけてこなかったし。
いきなり突撃されるなんて思っていなかったんだ。
「これでも待ったよ。そのうち話しかけてくれるかもって『カスミ』にも通ったし、学校でも様子見てたけど、夕映は全然こっち見ないだろう? だから決めてたんだよ、中間テスト終わったらはっきりさせようって」
「勝手に決めないでよ。私にだって心構えってものが……」
ずるい。心が無防備の時に揺さぶってくるなんて。
こんなの我慢できないに決まってる。
ポロッとこらえきれない涙が一度零れてしまえば、あっという間に決壊してしまった。
「夕……」
「ばか直哉!」
こんなところで泣き崩れるわけにはいかない。
乱暴に拭ってヒリヒリする頬を隠すかのように、うつ向いて校門へと全力で走った。
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