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10.そして、これから
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そう思ったら、悲しい気持ちも落ち着いてきた。
もちろん、今でも淋しいとは思ってしまうけれど、それよりも誰より強い味方が、すぐ傍にいてくれるんだって思ったら、頑張れる気がした。
鳴海とだって、きっと……。
タイミングよくSNSの通知が来たので確認すると、鳴海から『先に中に入っている』っていうメッセージだった。
朝勉もだったけど、鳴海って時間厳守どころか、時間前行動が徹底しているんだなぁ。
返事を打とうかと思ったけど、あたしももう店前まで着いていたので、返事は送らずそのまま店内に入ることにした。
土曜日とはいえまだ十時前。レジのカウンターは混んでいたけれど、テーブル席がある二階はそれ程混んでいなかった。
鳴海は……と探してみれば、窓際奥の角席で、外を眺めていた。
そういえば朝勉の時にもそんな様子見せていたっけ。
景色を見ているのか、ぼぉっとしているのかは、わかんないけどね。
「おまたせ」
向かいの席に座ると、ハッと窓からあたしの方へと意識と視線を向けた。
戸惑っているようでありながら、まじまじとあたしの顔を見る。
「……なに?」
「いや……」
そういえば泣きはらした目をしているから、それが気になったのかな。
テーブルの上にはドリンクと、自分の勉強用か、あたしに用意をしてくれているのか、ノートが置いてあった。
「勉強、の前に、説明した方がいいよね」
「そうしてくれると、助かる」
「って言っても、なんて説明したらいいんだろうね」
リナとのお別れについては、あたしたちのことだから話したくはない。
鳴海に話せるのは状況だけなんだけど。
「リナは、もういないよ」
「……端折り過ぎじゃないか?」
「だって事実としては、それがすべてだもん」
確かにちょっと突き放したような言い方にはなっちゃったかもしれないけどね。
鳴海は驚いた顔をしながらも、大きくため息をついた。
「楠木、だな」
「そうだよ」
「はぁ……ま、言い方はなんだけど、お前もダメージは大きかったみたいだし、今はその説明で納得してやるよ」
自分の目元を指さしながら、諦めたようにそう言った。
目元……泣いたあとね。
「そうね。今はそれで納得しておいて。いずれ気が向いたら話すかもしれないしね」
「お前、本当に……そうだな。そういうやつだったな」
なによ、その言い方。
「あぁ、リナは素直だったもんねー」
「そうだな。こうして改めて楠木を見ると、態度も表情も全然違うな」
「わるかったわねーっ。素直じゃなくて」
「でもまぁ、その顔見せられたら、本質は案外似てるんだろうなって思うよ」
「う、うるさいなぁ!」
やっぱりしっかりと目のケアしておくべきだった!
思わずプイッと横向けば、クスクスと笑う鳴海の声が聞こえてきた。
不思議……鳴海とこんな風に過ごしているなんて。
不意打ちの笑い顔に、胸の奥で微かな想いを感じる。
それは、リナの中で芽生えようとしていた淡い想い。
だけど、それはあたし自身の気持ちじゃない。
あたしはこれから、リナの存在を受け止めたうえで、あたしとして鳴海と向き合うんだ。
「さっ、鳴海センセ。あたしが赤点取らないように、必勝法を教えてくださいな」
「ねーよ、必勝法なんて。時間がなくてもやることは根気だ。とにかく書いて解く!」
お互い、気持ちを切り替えるようにと、テーブルに勉強道具を広げた。
リナが頑張ってきたことを無駄にしないよ。
そしてこれからは、あたしが自分で頑張るんだ。
だからずっと、これからも、見守っていてね。
もちろん、今でも淋しいとは思ってしまうけれど、それよりも誰より強い味方が、すぐ傍にいてくれるんだって思ったら、頑張れる気がした。
鳴海とだって、きっと……。
タイミングよくSNSの通知が来たので確認すると、鳴海から『先に中に入っている』っていうメッセージだった。
朝勉もだったけど、鳴海って時間厳守どころか、時間前行動が徹底しているんだなぁ。
返事を打とうかと思ったけど、あたしももう店前まで着いていたので、返事は送らずそのまま店内に入ることにした。
土曜日とはいえまだ十時前。レジのカウンターは混んでいたけれど、テーブル席がある二階はそれ程混んでいなかった。
鳴海は……と探してみれば、窓際奥の角席で、外を眺めていた。
そういえば朝勉の時にもそんな様子見せていたっけ。
景色を見ているのか、ぼぉっとしているのかは、わかんないけどね。
「おまたせ」
向かいの席に座ると、ハッと窓からあたしの方へと意識と視線を向けた。
戸惑っているようでありながら、まじまじとあたしの顔を見る。
「……なに?」
「いや……」
そういえば泣きはらした目をしているから、それが気になったのかな。
テーブルの上にはドリンクと、自分の勉強用か、あたしに用意をしてくれているのか、ノートが置いてあった。
「勉強、の前に、説明した方がいいよね」
「そうしてくれると、助かる」
「って言っても、なんて説明したらいいんだろうね」
リナとのお別れについては、あたしたちのことだから話したくはない。
鳴海に話せるのは状況だけなんだけど。
「リナは、もういないよ」
「……端折り過ぎじゃないか?」
「だって事実としては、それがすべてだもん」
確かにちょっと突き放したような言い方にはなっちゃったかもしれないけどね。
鳴海は驚いた顔をしながらも、大きくため息をついた。
「楠木、だな」
「そうだよ」
「はぁ……ま、言い方はなんだけど、お前もダメージは大きかったみたいだし、今はその説明で納得してやるよ」
自分の目元を指さしながら、諦めたようにそう言った。
目元……泣いたあとね。
「そうね。今はそれで納得しておいて。いずれ気が向いたら話すかもしれないしね」
「お前、本当に……そうだな。そういうやつだったな」
なによ、その言い方。
「あぁ、リナは素直だったもんねー」
「そうだな。こうして改めて楠木を見ると、態度も表情も全然違うな」
「わるかったわねーっ。素直じゃなくて」
「でもまぁ、その顔見せられたら、本質は案外似てるんだろうなって思うよ」
「う、うるさいなぁ!」
やっぱりしっかりと目のケアしておくべきだった!
思わずプイッと横向けば、クスクスと笑う鳴海の声が聞こえてきた。
不思議……鳴海とこんな風に過ごしているなんて。
不意打ちの笑い顔に、胸の奥で微かな想いを感じる。
それは、リナの中で芽生えようとしていた淡い想い。
だけど、それはあたし自身の気持ちじゃない。
あたしはこれから、リナの存在を受け止めたうえで、あたしとして鳴海と向き合うんだ。
「さっ、鳴海センセ。あたしが赤点取らないように、必勝法を教えてくださいな」
「ねーよ、必勝法なんて。時間がなくてもやることは根気だ。とにかく書いて解く!」
お互い、気持ちを切り替えるようにと、テーブルに勉強道具を広げた。
リナが頑張ってきたことを無駄にしないよ。
そしてこれからは、あたしが自分で頑張るんだ。
だからずっと、これからも、見守っていてね。
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