ミラー★みらくる!

桜花音

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9.莉菜とリナ

9-3

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 そして気持ちのシンクロが進むにつれて、身体の透明化も進んでいる。
 もう、あとどれくらいわたしは、この状態を維持できるんだろうか。
 完全に消えてしまう前に、ちゃんと莉菜に伝えたい。

「莉菜。短い間だったけど、莉菜として過ごせて楽しかった。現実の世界って、こんなに鮮やかなんだね」

【鏡の部屋】は現実をそのまま映しているはずなのに、鏡一枚隔てていたからか、あくまで映像のように見ていたからか。
 本当の世界を知ってしまえば曇りガラスのように思えてしまう。
 太陽の日差しも、木々の緑も、お母さんの料理の匂いも、何もかも【鏡の部屋】ではわからなかったことだから。

「あた、あたしもっ。リナに会えてよかった。リナがあたしとして生活しているのを見て、楽しかったし、いっぱい色んなこと知ったよ。もっと素直にならなくちゃって思った」
「あ、そこ気づいてくれた?」
 照れくさそうに莉菜が俯きながらも言葉を続ける。

「だって、お母さんも嬉しそうだったし。リナが素直だったから、きっと芹香ちゃんや鳴海も違う一面を見せてくれたんだ。あたし、芹香ちゃんにいつも甘えてばかりだったし、鳴海はただムカつくやつって思ってたけど、リナのおかげで違うって気づけた」

 やっぱり莉菜自身が本来、素直なんだよね。
 きっとわたしの本質は莉菜そのもののはずだもん。

「テスト勉強、頑張ってね」
「……リナが頑張ってたの、見てたもん。あたしだって、頑張らないとね」
「うん。莉菜ならきっと大丈夫」

 あぁ、もう、限界かな。
 もう自分が莉菜の姿を保っていないくらい、光に溶けたように揺らめいている。

「莉菜、ずっと傍にいる」

 だから、泣かないで。
 これはお別れじゃないよ。姿が見えなくなったって、わたしはきっと莉菜の中にいるから。
 これからも見守っているよ。
 楽しそうにしている姿も、怒っている姿も。
 ひょっとしたらこれからかわっていくかもしれない、新しい感情をみせてくれる時にも。
 ずっと、ずっと、傍にいるからね。

「リナッ‼」
 叫ぶような声を耳にして、少しでも安心させたくて、わたしは微笑んだつもりだけれど、きっとその姿はもう莉菜には見えていなかったと思う。
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