ミラー★みらくる!

桜花音

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9.莉菜とリナ

9-1

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 光が少しずつ落ち着いてきて、ようやく目を開けられるくらいになったわたしは、何故か莉菜の部屋にいた。

「え!? なんで?」
 思わず見渡して、さらにビックリしたのは、ベッドの上に莉菜が座っていること。

「莉菜? え? どういうこと?」
 莉菜が元に戻っているのに、わたしも現実にいる?
 そんなこと、ありえるの?

「リナ……」
 何故か悲しそうな表情を浮かべて、莉菜がわたしの頬を触ろうと手を伸ばしたけれど、わたしには莉菜が触っただろう手のひらの感覚がなかった。

「え……?」
 よく見ると、わたしの腕やスカートは、なんだか薄い。
 半透明のように見える。

「なにこれ? 幽霊みたい」
「リナ、リナ!」
 莉菜が一生懸命わたしに触れようとするけれど、その手は空を切るばかりで、触れることはなかった。
 そしてわたし自身、身体が軽いという今の状況を、少しずつ理解しはじめてきた。

 これは【鏡の部屋】にいた時と同じ感覚。
 だけど違うのは、今も私は光の粒子に包まれていて、漫画やアニメだったら精霊とか女神みたいな描写の状態なのかな。
 なんて、ビックリするくらい冷静に考えてしまっている自分にちょっと笑ってしまう。

「リナ? なんで笑ってるの? 心配じゃないの、自分のこと」
 莉菜が涙をいっぱいためた瞳でこちらを見てくる。
 うん、莉菜もきっと本能で感じているんだよね。

「理由はわからないけど、きっと来たんだろうね。【おわり】の時が」
 その言葉に莉菜がハッとする。

 部屋に飛ばされた直後こそ混乱したけど、莉菜と面と向かっているうちに、不思議な感覚が少しずつ強くなっていることに気がついた。
 一番の変化が、莉菜の気持ちが少し伝わってくること。
 今までは心が繋がっていなかった。それが繋がりはじめていて、尚且つわたしの姿は、今にも消えそうな状態だ。
 消えそう? うん。消えそうって言葉でごまかそうとしているけど、心のどこかでわかっている。
 消えるんだ。
 【鏡の部屋】に戻るんじゃなくて、わたしという存在のおわりがきたんだ。

 目の前で莉菜が信じたくないと言わんばかりに、首を大きく横に振り続ける。
 そんな莉菜の頭を撫でようと手を伸ばしても、やはり触れることが出来ない。
 わたしに莉菜の気持ちが伝わってくるように、莉菜にもきっとわたしの気持ちは伝わっている。
 決して綺麗なだけじゃない、消えたくないって気持ちも。
 だけど、どこかで納得しちゃっているんだ。

 だってさっき、わたし自身が鳴海に言ったんだもの。
 『分身』だって。
 わたしは莉菜の一部。きっと共存することは出来ないんだ。
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