ミラー★みらくる!

桜花音

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8.リナとして

8-2

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 沈黙がつづいて、その間、わたしは怖くて目を開けていられなかった。

 どれくらいそうしていたんだろう。
 鳴海の声が聞こえなくて、とうとうわたしはチラッと目を開けて、鳴海の様子を見た。
 すると、わたしが目を開けるのを待っていたかのように、鳴海はフッと笑った。

「【鏡の部屋】って? 莉菜だけど違うっていうのは、どういうことか、もうちょっと説明してくれるか?」
「……信じて、くれるの?」
「まあ、違和感の正体っぽいからな」

 突拍子もない話だろうに、ちゃんと聞いてくれる姿勢にホッとする。
 わたしが鳴海をイイやつだって思うのは、こういう面なのかもしれない。

「わたしってどうして存在しているか、自分でもわからないの。気がついたら莉菜の私室とまったく同じの【鏡の部屋】にいた。違うのは、あくまで鏡の中であるってこと。莉菜の一部だとは思うけれども、莉菜とは心が繋がっているわけじゃない。だから鏡として見て知っていることはあるけれど、莉菜の心を理解しているわけじゃないってこと、かな」

 改めて説明しようとすると難しいなぁ。
 莉菜は感覚的にわかってくれたみたいだけど。
 鳴海は再び考えるように、口元に手を持っていって静かになっていたけど、やがて小さく息をはいた。

「つまり、目の前にいるお前は、楠木の姿をしているけれど、別人ってことだよな?」
「うん……でも完全に別人というよりは、分身とか? わかっていると思うけど、学力とか体力とか、能力的なものは莉菜そのものだよ」
「それで鏡の中にいたけれど、今は外に出てきている、と。それなら、楠木はどうしているんだ?」
「莉菜は、今は【鏡の部屋】にいるの。わたしたち、入れ替わっちゃったの」
「なんで?」
「それは……」

 多分、一番は莉菜がテストが嫌だったからなんだろうけど。
 でもそれを鳴海に言っていいのかな?
 それに、それだけじゃない。きっとわたしが無意識のうちに外に興味を持っていたんだ。
 莉菜が逃げたい気持ちと、わたしが外に出たい気持ち。両方が重なって入れ替わっちゃったんだと思う。
 片方の思いだけじゃきっと変われないんだ。
 莉菜が繋がらなくて不安だったって言ったあの時、あれはわたしが完全に気持ちが【鏡の部屋】になかったからだ。

 そのことに、この前気づけたんだ。
 そうだとすると、入れ替わりの原因はわたしにもある。
 わたしが、外に興味を持ったことも理由の一つなんだ。

「楠木は、入れ替わって、大丈夫なのか?」
 入れ替わりの理由を言い渋ったわたしに気遣ったのか、鳴海が質問を変えてきた。
「う、うん! 入れ替わっていても鏡を通して会話ができていたから……元気、だよ」
 その言葉を聞いて、鳴海がちょっと安心したような顔をする。

 心配、したんだ。
 そうだよね。だって莉菜は本来こっちにいるべき人なんだから。
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