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8.リナとして
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思わず、コクン、と喉を鳴らす。
静かな部屋ではその小さな音さえ響いている気がする。
なにか……なにか言わなくちゃいけない。
でも、なにを?
なんて言ったらいいの?
話して信じてくれる?
だけど今日で入れ替わりは終わりにするのに、話す必要ある?
混乱して、なにを言葉にしたらいいのかわからない。
「悪い……変なこと言ったな」
「ちが! 変じゃ、ない」
莉菜のためには、言わない方がいいってわかっている。
だけど、なかったことにしたくない自分が、どこかでいる。
違和感を感じたと言ってくれた鳴海なら、わたしに気づいてくれるのかもしれない。
たとえ元に戻っても、わたしのことを憶えていてくれるかもしれない。
誰かに憶えていて欲しい。わたしという存在がいたことを。
そんな欲が芽生えてしまった。
「……信じられないような話、しても、いい?」
頭の片隅で言わない方がいいと思っているのに、目の前の鳴海が優しく笑うから、その瞳に縋ってしまった。
「あぁ。違和感の答え、教えてくれるなら」
「違和感……どこが気になったんだろう? 見た目、じゃないよね」
「そうだな。見た目は変わらないよ。でも……俺の知っている楠木は、もっと皮肉れているし、素直じゃない」
あんまりな言い分に思わず笑ってしまう。
きっと【鏡の部屋】で莉菜は怒っているんじゃないかな。
「頑張り屋ではあるだろうけど、もっと嫌なことからは逃げるタイプだし、冷静に考えて頼まれたからってあんな素直に俺とペアを組むとは思えない」
「あー……そうかなぁ」
でもあの状況だったら、莉菜だって仕方なしだとしても了承したんじゃないかな。
だって、ほかにどうしようもなかったしね。
「なにより楠木が俺の前で泣くとは思えないな。ざっくりとは、そんな感じだ。で? この違和感の正体、教えてくれるのか?」
「うん。思ったより違和感を持たれていたことにビックリした」
「最初に強く違和感持ったのは音楽室だよ。俺のこと『イイやつ』なんて、楠木からは世界がひっくり返っても出てこない」
「そんなことないよ」
「あるね、断言できる」
なんでこんなに拗れているんだろう?
確かに鳴海と莉菜って喧嘩ばっかりだったけど、でもわたしも最初は鳴海とぶつかってたのになぁ。
「本当に、信じられない話だと、思うよ?」
「もうここまで話してたら俺の中では別人説が確定しているよ。ただ、見た目が楠木だからそこがわかんねー」
別人、か。
別人といえば、そうなのかもしれない。
だって、わたしと莉菜は心は繋がっていないんだもん。
きっと鳴海は信じてくれる。そう信じて、わたしは大きく深呼吸をした。
「わたし……わたしはリナ。楠木莉菜だけど、莉菜じゃない。【鏡の部屋】からずっと莉菜を見守っていた、もう一人のリナなの」
言って、しまった。
鳴海が違和感持っているって知ったとはいえ、言ってしまったことに、思わず全身緊張が走る。
どう思った? 信じる? それとも、おかしいって思う?
怖くて鳴海の顔が見られず、膝の上で強く拳を作って、思わず目をつむる。
お願い、なにか言って。
できれば、否定の言葉じゃなくて、信じて。
静かな部屋ではその小さな音さえ響いている気がする。
なにか……なにか言わなくちゃいけない。
でも、なにを?
なんて言ったらいいの?
話して信じてくれる?
だけど今日で入れ替わりは終わりにするのに、話す必要ある?
混乱して、なにを言葉にしたらいいのかわからない。
「悪い……変なこと言ったな」
「ちが! 変じゃ、ない」
莉菜のためには、言わない方がいいってわかっている。
だけど、なかったことにしたくない自分が、どこかでいる。
違和感を感じたと言ってくれた鳴海なら、わたしに気づいてくれるのかもしれない。
たとえ元に戻っても、わたしのことを憶えていてくれるかもしれない。
誰かに憶えていて欲しい。わたしという存在がいたことを。
そんな欲が芽生えてしまった。
「……信じられないような話、しても、いい?」
頭の片隅で言わない方がいいと思っているのに、目の前の鳴海が優しく笑うから、その瞳に縋ってしまった。
「あぁ。違和感の答え、教えてくれるなら」
「違和感……どこが気になったんだろう? 見た目、じゃないよね」
「そうだな。見た目は変わらないよ。でも……俺の知っている楠木は、もっと皮肉れているし、素直じゃない」
あんまりな言い分に思わず笑ってしまう。
きっと【鏡の部屋】で莉菜は怒っているんじゃないかな。
「頑張り屋ではあるだろうけど、もっと嫌なことからは逃げるタイプだし、冷静に考えて頼まれたからってあんな素直に俺とペアを組むとは思えない」
「あー……そうかなぁ」
でもあの状況だったら、莉菜だって仕方なしだとしても了承したんじゃないかな。
だって、ほかにどうしようもなかったしね。
「なにより楠木が俺の前で泣くとは思えないな。ざっくりとは、そんな感じだ。で? この違和感の正体、教えてくれるのか?」
「うん。思ったより違和感を持たれていたことにビックリした」
「最初に強く違和感持ったのは音楽室だよ。俺のこと『イイやつ』なんて、楠木からは世界がひっくり返っても出てこない」
「そんなことないよ」
「あるね、断言できる」
なんでこんなに拗れているんだろう?
確かに鳴海と莉菜って喧嘩ばっかりだったけど、でもわたしも最初は鳴海とぶつかってたのになぁ。
「本当に、信じられない話だと、思うよ?」
「もうここまで話してたら俺の中では別人説が確定しているよ。ただ、見た目が楠木だからそこがわかんねー」
別人、か。
別人といえば、そうなのかもしれない。
だって、わたしと莉菜は心は繋がっていないんだもん。
きっと鳴海は信じてくれる。そう信じて、わたしは大きく深呼吸をした。
「わたし……わたしはリナ。楠木莉菜だけど、莉菜じゃない。【鏡の部屋】からずっと莉菜を見守っていた、もう一人のリナなの」
言って、しまった。
鳴海が違和感持っているって知ったとはいえ、言ってしまったことに、思わず全身緊張が走る。
どう思った? 信じる? それとも、おかしいって思う?
怖くて鳴海の顔が見られず、膝の上で強く拳を作って、思わず目をつむる。
お願い、なにか言って。
できれば、否定の言葉じゃなくて、信じて。
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