ミラー★みらくる!

桜花音

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5.ふたりの距離感

5-2

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 勉強が楽しい。
 きっと今までの莉菜だったらそんなこと思いもしなかった。
 嫌いという先入観が先にあったせいなのか、それとも難しいと思った時点で挫折してしまったのか。
 それとも、鳴海の教え方が上手なのかな?

 昼休み、鳴海がまとめたノートを机の上に広げて、隣に座った芹香ちゃんも覗き込む。
 昨日の計算問題を間違えた原因を、わかりやすく書いてくれていた。
 通信教育の先生より丁寧なんじゃないかな。

「あそこの兄弟って、こういうところがマメなんだよね」
「そうなの?」
「竣人さんはね、『まとめることで自分の頭に理解が深まるんだよ』なんて言ってたけど」
 なるほど~。確かに莉菜だったら、そもそもまとめるというのが難しいかもしれない。

「ま、遥人のはそれを更に莉菜用にわかりやすく読みやすくしてって。ほんと、手がかかってるし、あ……」
「余計なこと言ってるんじゃねーよ」
 芹香ちゃんの言葉を遮るように、鳴海が開いたノートの上に、勢いよく別のノートを叩くように置いた。

「アニキからだよ。『愛されている』芹香にな」
 瞬間、芹香ちゃんは置かれたノートを奪うように自分の顔に引き寄せて隠れてしまった。
 その様子を見て鳴海は、してやったりな顔をしている。

 この二人の空気感、本当に仲がいいんだよね。
 昨日、芹香ちゃんから聞いているから、付き合っているのは鳴海のお兄ちゃんだって知ってるけど、知らなかったらわたしはふたりが付き合ってるって思っちゃったんじゃないかな。

 ……そう、思うことが不思議に思えた。
 だって、昨日までは恋そのものに興味がないくらいだったのに。
 たった一日。昨日、芹香ちゃんの話を聞いただけなのに、なんだか恋というものが一気に身近になった気がする。
 すみれちゃんと益子くんが付き合っているって聞いても、ビックリしただけで、それに対してどうという感情はなかったのに。
 芹香ちゃんが詳しく話してくれたからかな?

「なぁに? 莉菜。じーっとこっちを見てきて」
 鳴海とじゃれあっていたのに、わたしの視線に気づいて芹香ちゃんがこっちを見る。
「ううん。仲いいなと思って」
「まぁ、腐れ縁だからね」
 ペアワークするようになって、鳴海と一緒の時間が増えたけど、芹香ちゃんと鳴海みたいな距離感にはなれそうにない。

 芹香ちゃんみたいな?
 なんでそんなこと思ったんだろう。
 そりゃあちょっとは鳴海のこと、イイやつだと見直したけど、だからって仲良くなりたいなんて……。
 ふと鳴海の方を見たら、バッチリと目が合った。はずなのに、鳴海はサッと逸らして自分の席へと行ってしまった。

 やっぱりね。わたしとの関係なんてそんなもんだよ。
 納得しているはずなのに、どこかでチクンと小さな痛みを感じていた。
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