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5.ふたりの距離感
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朝起きて、身支度を整えていた時に思い出した。
わたし、昨日は莉菜と話していない!
でも今は、朝勉の時間を考えるとゆっくりしてはいられない。
莉菜のことは気になるけれど、とりあえず帰ってきてからゆっくり話そう。
そう思って家を飛び出した。
今日こそはわたしの方が先だと思ったのに、下駄箱を確認したら鳴海はいた。
朝練こないけど、鳴海って朝強いんだなぁ。
教室に入れば昨日と同じように窓際の席に座っていて、軽く手をあげる。
時間が惜しいとばかりに問題を用意されたから、すぐさまそれにとりかかった。
きっとこんなに机に向かっているのは、莉菜の人生ではじめてだ。
正直、頭がショートしそうになるくらいだけれど、同時に運動とは違う疲れが心地いいとも思う。
少しずつ、少しずつ覚えていくこと。少しずつ、少しずつ解けていく問題。
たった数日なのに、それでも成果を感じるということ。
まぁ、今までがサボり過ぎっていうのもあるんだけどね。
チラッと前に座る鳴海を見れば、窓の外を眺めていた。
こんな朝早くから勉強につきあって、しかもこの解いている問題は鳴海の手作りだ。
ってことは、昨日の夜に準備しているんだよね。
それを考えるだけで、かなりマメだと思う。
芹香ちゃんにどんだけ『イイやつ』って言われてもわからなかったけど、ペアを組んだことで少し、鳴海のことが分かった気がする。
今までってちゃんと話したことがなかったんだよね。
いっつも莉菜と鳴海って喧嘩ばっかりしていたからなぁ。
「……終わったのか?」
視線に気づいたのか外を見ていた鳴海がこっちを向くから、ビックリして思わず大きく首を横に振る。
「ま、まだっ!」
「じゃあよそ見してんなよ。ほら、手動かせ」
「はぁい」
言われた通り手を動かしはじめたのに、鳴海が不思議そうな顔をする。
そういえばわたしの勉強ばかりに付き合っているけど、自分の勉強は大丈夫なのかな?
「ねぇ、自分の勉強は大丈夫?」
「あぁ、それほど範囲も広くないし、こうして教えたりとかまとめてることで復習にもなっているしな」
なんてことはないというように言うけれど、それって日頃がちゃんとしているからなんだろうな。
「すごいね」
素直にそう思って口にしたんだけど、鳴海が驚いたようにこちらを見た。
「なに?」
「いや……」
何故か目を逸らされた後、考え込むようにして黙っちゃった。
なんか変なこと言った? わたし。
そう思いながらも鳴海がなにも言わないから、わたしもそれ以上はなにも言えず、ただひたすらに問題と向き合った。
わたし、昨日は莉菜と話していない!
でも今は、朝勉の時間を考えるとゆっくりしてはいられない。
莉菜のことは気になるけれど、とりあえず帰ってきてからゆっくり話そう。
そう思って家を飛び出した。
今日こそはわたしの方が先だと思ったのに、下駄箱を確認したら鳴海はいた。
朝練こないけど、鳴海って朝強いんだなぁ。
教室に入れば昨日と同じように窓際の席に座っていて、軽く手をあげる。
時間が惜しいとばかりに問題を用意されたから、すぐさまそれにとりかかった。
きっとこんなに机に向かっているのは、莉菜の人生ではじめてだ。
正直、頭がショートしそうになるくらいだけれど、同時に運動とは違う疲れが心地いいとも思う。
少しずつ、少しずつ覚えていくこと。少しずつ、少しずつ解けていく問題。
たった数日なのに、それでも成果を感じるということ。
まぁ、今までがサボり過ぎっていうのもあるんだけどね。
チラッと前に座る鳴海を見れば、窓の外を眺めていた。
こんな朝早くから勉強につきあって、しかもこの解いている問題は鳴海の手作りだ。
ってことは、昨日の夜に準備しているんだよね。
それを考えるだけで、かなりマメだと思う。
芹香ちゃんにどんだけ『イイやつ』って言われてもわからなかったけど、ペアを組んだことで少し、鳴海のことが分かった気がする。
今までってちゃんと話したことがなかったんだよね。
いっつも莉菜と鳴海って喧嘩ばっかりしていたからなぁ。
「……終わったのか?」
視線に気づいたのか外を見ていた鳴海がこっちを向くから、ビックリして思わず大きく首を横に振る。
「ま、まだっ!」
「じゃあよそ見してんなよ。ほら、手動かせ」
「はぁい」
言われた通り手を動かしはじめたのに、鳴海が不思議そうな顔をする。
そういえばわたしの勉強ばかりに付き合っているけど、自分の勉強は大丈夫なのかな?
「ねぇ、自分の勉強は大丈夫?」
「あぁ、それほど範囲も広くないし、こうして教えたりとかまとめてることで復習にもなっているしな」
なんてことはないというように言うけれど、それって日頃がちゃんとしているからなんだろうな。
「すごいね」
素直にそう思って口にしたんだけど、鳴海が驚いたようにこちらを見た。
「なに?」
「いや……」
何故か目を逸らされた後、考え込むようにして黙っちゃった。
なんか変なこと言った? わたし。
そう思いながらも鳴海がなにも言わないから、わたしもそれ以上はなにも言えず、ただひたすらに問題と向き合った。
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