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1.鏡の中からこんにちは
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六月下旬とはいえ、街路樹の隙間から零れる陽射しは思ったより強烈だった。
【鏡の部屋】からみていた時は、ただの映像として見ていたから、陽射しがこんなに眩しいものだとも、肌にひりつく感覚があるとも思わなかったんだもん。
歩いているうちに、少しずつ汗ばむ肌も、坂道をのぼるうちにあがっていく息も。
なにもかもこんな感覚は、はじめての体験!
坂をのぼりきって見上げれば、どこまでも続く広い青空。
こんなに視界が変わるんだ。空の色ってこんなに青いんだ。
「すごーーーーいっ‼︎」
思わず両手で空を抱きしめたくなるくらい感動していたら、頭にバコンッ! と衝撃がはしった。
痛かったわけじゃないけど、何が起きたのかと振り返ったら、そこには莉菜の親友、道場芹香ちゃんが呆れ顔をして立っていた。
「芹、香ちゃん?」
頭をさすりながら声をかけると、芹香ちゃん大きくため息をついた。
「朝っぱらから正門近くでなに騒いでるのよ、恥ずかしい」
芹香ちゃんは莉菜と同じ陸上部に所属していて、ハードル走をやっている。
百六十センチを超える身長の芹香ちゃんがハードルを飛び越える様は、すごくカッコいいんだ。
それに、その時になびくショートカットの髪が、きれいなの。
鏡越しに見ていて、思わず見とれちゃったくらい。
その芹香ちゃんが、今、目の前にいる。
「芹香ちゃんだぁーーーーっ!」
思わず嬉しくなって、芹香ちゃんに、むぎゅっと抱きついた。
多分、幼い頃に離れ離れになった友達に再会できたような気持ちじゃないかな。
「うわっ! どうしたの? 莉菜」
「なんでもなーいっ!」
「なんでもないって……」
いきなりのハグに戸惑いながらも、芹香ちゃんは諦めて天を仰いだ。
ふふっ。優しいんだよね、芹香ちゃん。
【鏡の部屋】からみていた時は、ただの映像として見ていたから、陽射しがこんなに眩しいものだとも、肌にひりつく感覚があるとも思わなかったんだもん。
歩いているうちに、少しずつ汗ばむ肌も、坂道をのぼるうちにあがっていく息も。
なにもかもこんな感覚は、はじめての体験!
坂をのぼりきって見上げれば、どこまでも続く広い青空。
こんなに視界が変わるんだ。空の色ってこんなに青いんだ。
「すごーーーーいっ‼︎」
思わず両手で空を抱きしめたくなるくらい感動していたら、頭にバコンッ! と衝撃がはしった。
痛かったわけじゃないけど、何が起きたのかと振り返ったら、そこには莉菜の親友、道場芹香ちゃんが呆れ顔をして立っていた。
「芹、香ちゃん?」
頭をさすりながら声をかけると、芹香ちゃん大きくため息をついた。
「朝っぱらから正門近くでなに騒いでるのよ、恥ずかしい」
芹香ちゃんは莉菜と同じ陸上部に所属していて、ハードル走をやっている。
百六十センチを超える身長の芹香ちゃんがハードルを飛び越える様は、すごくカッコいいんだ。
それに、その時になびくショートカットの髪が、きれいなの。
鏡越しに見ていて、思わず見とれちゃったくらい。
その芹香ちゃんが、今、目の前にいる。
「芹香ちゃんだぁーーーーっ!」
思わず嬉しくなって、芹香ちゃんに、むぎゅっと抱きついた。
多分、幼い頃に離れ離れになった友達に再会できたような気持ちじゃないかな。
「うわっ! どうしたの? 莉菜」
「なんでもなーいっ!」
「なんでもないって……」
いきなりのハグに戸惑いながらも、芹香ちゃんは諦めて天を仰いだ。
ふふっ。優しいんだよね、芹香ちゃん。
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