ミラー★みらくる!

桜花音

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1.鏡の中からこんにちは

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「もう、莉菜っ。なんでそんな濡れているの」
 リビングに入った途端、お母さんが早口で言うなり、頭からタオルでゴシゴシとわたしの身体を拭きはじめた。
 そういえば、蛇口から出した水の勢いがよすぎて、思いっきり水かかっちゃったんだった。

「本当に、そそっかしいわねぇ」
 ため息交じりに言いながらも、手を休めず制服も拭いてくれるお母さんの感覚に、なんだか嬉しくなってくる。
 優しくされる感覚って、こんなにあったかいんだ。
 莉菜が普段お母さんに口うるさく言われるたび、『お母さん、ウザイッ』なんて言ってるけど、本当は感謝しているのをわたしは知っている。
 だから莉菜の気持ちも込めて伝えてみることにした。
「ありがとう、お母さん」

 だけど、お母さんはわたしの言葉を聞いて、目を丸くした。
「え? 今日、雨降るんじゃない⁉ 傘、持っていく?」

 ……人が、人が感謝を伝えてるっていうのに、あんまりだぁ。
 莉菜がウザいって言ったのが、ちょっとだけわかったよ。

「もうっいい! 行ってきますっ!」
 ふてくされて玄関を出ようとするわたしに、クスクス笑いながらお母さんが「行ってらっしゃい」と見送ってくれた。
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