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1.鏡の中からこんにちは
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今まで感じたことがない、光の中に自分がいるということを、少しずつ実感する。
立っている足の裏には、床を踏みしめているという感覚がある。
ひらっと身体を少しひねれば、ふわっと舞った制服のスカートの重みが伝わってくる。
……意外に、スカートって重いんだ。
半袖のセーラー服から伸びる、日焼けした肌。
そっ、と触ってみると、今までと違う、熱を感じる。
「出……ちゃった、の?」
ふにっと、自分の頬っぺたをつねってみれば、かすかに痛みを感じた。
感じた。そう。感じるの。
目の前の洗面台の蛇口は、ちょっぴりヒヤッとして、レバーをあげれば、勢いよくジャーッて水が流れ出す。
触れてみようと手を伸ばせば、水は四方に飛び散った。
「キャーッ!」
慌てて手を引っ込めるものの、手だけでなく制服も髪も濡れてしまった。
ポタッと、前髪から落ちる雫が洗面所の床に落ちる。
「現実……よね?」
おそるおそる、前を向く。
洗面台だから、そこには当然【鏡】がある。
見たら、どうなるんだろう?
わたしは、また、戻っちゃうのかな?
そこに映っていたのは、わたしの姿。
それともあたしなのかな?
【鏡】に映る姿は何も反応がない。
……向こうは、どうなっているんだろう?
そっと【鏡】に触れようとしたところ、大きな声が響いてきた。
「莉菜ーっ! いつまで洗面所にいるの! 遅刻するでしょっ」
多分、お母さんだ。
とにかく、今は支度して学校に行かないと、だよね?
「はーいっ! 今行く!」
最後にもう一度【鏡】を見てみるけど、やっぱりそこには莉菜の姿が映っているだけだった。
とにかく今は、莉菜として過ごしてみよう!
だって、せっかく外に出られたんだもん。
思いもしなかった出来事にワクワクしながら、わたしは洗面所を鼻歌交じりに飛び出した。
立っている足の裏には、床を踏みしめているという感覚がある。
ひらっと身体を少しひねれば、ふわっと舞った制服のスカートの重みが伝わってくる。
……意外に、スカートって重いんだ。
半袖のセーラー服から伸びる、日焼けした肌。
そっ、と触ってみると、今までと違う、熱を感じる。
「出……ちゃった、の?」
ふにっと、自分の頬っぺたをつねってみれば、かすかに痛みを感じた。
感じた。そう。感じるの。
目の前の洗面台の蛇口は、ちょっぴりヒヤッとして、レバーをあげれば、勢いよくジャーッて水が流れ出す。
触れてみようと手を伸ばせば、水は四方に飛び散った。
「キャーッ!」
慌てて手を引っ込めるものの、手だけでなく制服も髪も濡れてしまった。
ポタッと、前髪から落ちる雫が洗面所の床に落ちる。
「現実……よね?」
おそるおそる、前を向く。
洗面台だから、そこには当然【鏡】がある。
見たら、どうなるんだろう?
わたしは、また、戻っちゃうのかな?
そこに映っていたのは、わたしの姿。
それともあたしなのかな?
【鏡】に映る姿は何も反応がない。
……向こうは、どうなっているんだろう?
そっと【鏡】に触れようとしたところ、大きな声が響いてきた。
「莉菜ーっ! いつまで洗面所にいるの! 遅刻するでしょっ」
多分、お母さんだ。
とにかく、今は支度して学校に行かないと、だよね?
「はーいっ! 今行く!」
最後にもう一度【鏡】を見てみるけど、やっぱりそこには莉菜の姿が映っているだけだった。
とにかく今は、莉菜として過ごしてみよう!
だって、せっかく外に出られたんだもん。
思いもしなかった出来事にワクワクしながら、わたしは洗面所を鼻歌交じりに飛び出した。
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