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ウチのハイエナ獣人の旦那さまと天使な双子たち。
しおりを挟む「ただいま戻りました~」
ギルド王都東支部に帰還した旦那のラシャと俺を迎えてくれたのは、俺たちの担当のギルド職員の青年ラーナさんだ。ラシャと同じ獣人で、ラシャはハイエナ獣人、ラーナさんは猫獣人である。
東支部のギルド職員には獣人が多く、冒険者も獣人が多い。その家族やパーティーには、俺のように人族や他種族もいるけれど、王都の東地区には獣人が住む区画が多いのだ。
ハイエナ獣人たちが集まって暮らす区域も王都の東地区にある。
「あ、お帰りなさいリューイさん、ラシャさん!実は託児所でクウくんがケンカをっ」
カウンターを乗り越えたかたかとこちらに突進してきたラーナさんに何事かと思いきや。
「ええぇっ!?あう、すぐ行きます!報告は任せるね!ラシャ!」
「あぁ、リューイ」
依頼達成報告をラシャに任せ、俺はギルドに併設された託児所に急いだ。
※※※
「クーウ、ケンカしたんだって?」
託児所につけば、ウチの双子が託児所の職員さんたちと一緒に待っていた。
「だって、まま!あのこがぱぱのわるくちゆったの。はいえなはわるいやつだって」
そう元気に告げるクウと、その隣でうんうんと頷くシャナは双子ちゃんである。
2人ともラシャと同じハイエナ獣人で、ケモ耳も襟もとの襟もふもふにふに、ふわふわでかっわえぇっ!めちゃかっわえぇっ我が子たち!
なのだが今回はーー
「そっか、それは辛かったね」
ぐずるクウと、一緒にぷんすかしているシャナをそっと抱き締める。あぁ、ふかふか、温かい。しかも子どもはふっかふかの襟もふが常にオープンなのだ。
大人になるとしまえるようになるから、旦那のラシャはあまり出してくれないけど。
双子のふかふか堪能できるのも、やっぱままの特権だよなぁ。
ーーとはいえ、本題は。
「でも、おともだちをたたいたらいけないよ?たたかれたら痛いでしょ?」
職員さんから聞いた話では、同じ組のおともだちを叩いてしまったらしい。
「・・・うん」
クウは素直な子だ。俺の問いにもこくんと頷いてくれた。
「それじゃぁ、おともだちに謝れるかな?」
優しく告げればーー
「うぅ」
やっぱり、悔しいものね。
「でもぱぱも悪いことしたら、きちんと謝れるよ」
「うん、わかた」
再びこくんと頷くクウ。ふふっ。かわいいんだから、もう。そんなところも愛らしい。
クウと共にクウが叩いちゃったおともだちのところに行けば、相手さんの親御さんも来ていた。
冒険者の旦那さんとその奥さんである。
そしてクウがおともだちにぺこりと頭を下げる。
「たたいちゃってごめんなしゃい」
うぅっ!ウチの子、めちゃイイコっ!親バカかもしれんけどイイコすぎてまま涙でそうっ!今すぐ襟もふもふしてあげたいよぉっ!!
「こら、アンタも謝んなさい!この街の平和が守られてるのは、この子のぱぱのお陰なんだから!ウチのぱぱも助けられてるんだから!」
と、相手方の奥さんが告げれば、おともだちもしぶしぶウチの子に向き直る。
あはは。ここのギルドでウチの旦那知らない冒険者とか、いないし。常駐してる冒険者なら何かと接点あるかも。憧れてくれてる冒険者も多いのだ。
「あう、ご、ごめんなしゃい」
おともだちもクウに続いて謝ってくれたので、クウも満足げに頷いた。
「うんっ」
子どもたちって、素直でかわいいよなぁ。次の瞬間には、笑顔でお手手を振り合って、ばいばい、また明日ねって出きるんだもの。
大人はこうもあっさりはいかない。
「ほら、クウとシャナもお手手繋いで。ぱぱのところ行こっか」
『はぁい!』
双子ちゃんで仲良くお手手を繋いだ2人が、元気に叫んだ。ひゃうっ!!やっぱりウチの子たちかっわえぇっ!!
※※※
おともだちを叩いたらいけないと子どもたちに教えた直後だと言うのに、ウチの旦那がーー
他の冒険者をぶっ飛ばしてたぁ――――――っ!!?
武器使ってないだけましだけど!
でも口から覇気みたいなのふしゅーって吐いてるよっ!?
目なんてギラギラしちゃってるーっ!
「あの、何がどうなって?」
と、思っていたらラーナさんが飛んできた。
「あぁっ!リューイさん助けて下さい~~っ!俺たちには止められなくって!」
「一体何があったんですか?」
「あのぶっ飛ばされた冒険者が、ハイエナ族は残飯でも漁ってろと暴言を」
「あぁー……」
そりゃぁ、怒るわ。見ればその冒険者たちは人族。ハイエナ獣人のことをよく知らない、外からやって来た冒険者か。出身世界は違うとはいえ同じ人族として恥ずかしい。
でも暴力はいけないと子どもたちに教えたばかりだしなぁ。ギルド職員たちからのうるうる視線もあるし。
「子どもたち、頼みますね」
「もちろんです!命に代えてもっ!」
と、ラーナさん。後ろでは他の職員たちも力強く頷いている。いやおっもいわぁっ!
まぁ確かにウチの双子はみんなの天使だけどねっ!もし手を出せばギルド職員用心棒、ウチの双子を知る冒険者総出でタコ殴りだろうけどねっ!
とりまラシャを何とかしなくては。子どもたちの前だし。
「ちょっと、ラシャ。子どもたちがいるんだからっ!」
「でも、リューイ」
先ほどまで口から覇気みたいなのを吐いていたラシャがしれっといつもの無表情に戻る。
でも俺が来たからか、ちょっと嬉しそう。同じ無表情でも、嬉しそうな時や怒ってる時は分かるのだ。
あ、いや今はそれよりも。
「おともだちを叩いたら、ちゃんとごめんなさいする!」
「おともだち?」
ラシャがきょとんとしながら首を傾げる。
まぁ、赤の他人だろうけどな!?その反応は仕方ないけどもっ!
「子どもたちが見てるんだから!ごめんなさいって!」
「……」
ラシャは俺をじっと見つめた後、後ろでギルド職員たちと待機している子どもたちを見る。そしてぶっ飛ばされて気絶している冒険者を見やる。
「ごめんなさい」
ものっそい凶悪な顔してたけどー。
しかしながらそれを見ていた子どもたちは。
「ぱぱ、しゅごい!」
「ちゃんと謝れてカッコいいね!」
尊敬の眼差しで父を見上げていた。
「……ん」
子どもたちに褒められて何だか嬉しそうなラシャ。
そして双子をいとも簡単にその細い腕で抱き上げると、双子が安心したように父親の胸元に身を預けた。
「さて、帰ろうか」
「んだな」
最後にギルドの職員さんたちにぺこりと謝り、俺たちはマイホームへと向かうのだった。
因みにぶっ飛ばされた冒険者は、多分これからギルドの用心棒たちにシメられるんだろうが、子どもたちには内緒である。
さて、俺がこうしてちょっと物騒だけども強くてカッコいい、ステキな旦那さまと結ばれマジキュートな天使な双子のままとなるまでには、実にたくさんのことがあった。
まずはそこから語ろうと思う。
応援ありがとうございます!
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