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とりあえず、えんでぃんぐ
01 最後は唐突に
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オフィスにて。
上司のタチナとの対話。
「それ、もう終わっているから」
タチナが唖然とする。
「終わっているって?」
「新しいタウンでしょ。終わっているから」
「……早すぎない?」
「そう? 準備は必要だから。イメージは聞いていたから」
「それで、どこまで?」
「あとは、いつも通り、要望があれば、武器、アイテム屋などを」
「――他は全然できていないのに」
「でも、背景とか、武器とか、エネミーとか。……けっこうあるね」
「だから、今で――。来年のを準備していたのに」
「その辺は、オツで」
「――誰かに狙われない?」
「さぁ、ネット攻撃は受けているみたいだけど」
「ほら~~」
コールが来る。
「あ、電話。用事、終わり?」
「そうだけど――」
「じゃあ、それで。よろ」
「本当、その気楽さとスピードに……」
「そうね――」
「今度は、サポートで」
「そうだね――」
数週間前。
「――来ないか? というか、来てくれないか」
「他にも言ってるけど、今のが終わったら次を――」
「それは、判っている」
「その業界の通りを破るほど、大変なの?」
「あぁ」
「そんなに? どこが」
「主に、スケジュール面で」
「ヘルプでもダメなんだ」
「なんとか、今年中に出して、収益を出さないと――」
「会社が潰れるほど、か。この前貸したAIは?」
「それでも、間に合わなくて――」
「相当ギリギリだね。しかも、お金の問題ね――」
「このままだと、路頭に迷うから」
「――僕、陣頭指揮とか取れないよ」
「判っている。席もお金も用意する。だから――」
「お金、ギリギリなのに? 頑張るね~~」
「あのタウンや背景などはソラタしかできない。だから――」
頭を下げる、次の依頼先。
「……ダメか?」
「タチナに聞かないと。やっぱり最後はね。大丈夫だとは思うけど」
そして、今に至る。
「なに、出たくない?」
「いや、僕に退去する拒否権はないから」
「寂しいこと言うよね。ソラタって」
「でも、この業界、お金ないから」
「そうだけど。でも、あのタウンのお陰で、相当人気になった」
「そうなんだ」
「やっぱり、ゲームで落ち着ける場所だからね。絶対に高精細じゃないと」
「まぁ、また呼んでよ」
「お願いするね」
電話を終える。
アカネが走ってくる。
「ソラタ。どういうこと!?」
「だって、結局インフィニティチェアーが一番落ち着けるんだもん」
「……何の話?」
「何の話なわけ?」
「いや、だから――。社内報!」
「誰が異動するの? よくあることだよ」
「私たち!」
「――。うん。そう」
「……知っていたの?」
「そりゃあ、チーフだから。というか、僕が決めたし。それで廃止、統合を」
「何で?」
「何でって、この仕事の用が済んだから」
「でも――」
「でもさ、この業界、退職が基本だから」
「そうだけど――」
「僕、次が決まっているから」
「あ、ズルい! ――それで廃止?」
「一応、責任者がいないとダメだから」
「……私は」
「不適任」
「そう……。そりゃあ、私はソラタみたいに上手くないし、競争を受け続けていた」
「そうじゃなくて、もっと好きなのを探してもいいんじゃない?」
「……え?」
「他も見て、それでも背景やタウンと決めてからでも、いいかなって」
「でも、ここは――」
「ここに縛られていると、それこそ他が見えなくなるよ。だから不適任」
「……判った」
納得するアカネ。
「で、私はどうなるの?」
「……退職」
「次は?」
「……決まってない」
「あのね~~!? ――本当、どうするの?」
「でもさ、プログラマーってそういうものだからさ」
「責任放棄するな!」
上司のタチナとの対話。
「それ、もう終わっているから」
タチナが唖然とする。
「終わっているって?」
「新しいタウンでしょ。終わっているから」
「……早すぎない?」
「そう? 準備は必要だから。イメージは聞いていたから」
「それで、どこまで?」
「あとは、いつも通り、要望があれば、武器、アイテム屋などを」
「――他は全然できていないのに」
「でも、背景とか、武器とか、エネミーとか。……けっこうあるね」
「だから、今で――。来年のを準備していたのに」
「その辺は、オツで」
「――誰かに狙われない?」
「さぁ、ネット攻撃は受けているみたいだけど」
「ほら~~」
コールが来る。
「あ、電話。用事、終わり?」
「そうだけど――」
「じゃあ、それで。よろ」
「本当、その気楽さとスピードに……」
「そうね――」
「今度は、サポートで」
「そうだね――」
数週間前。
「――来ないか? というか、来てくれないか」
「他にも言ってるけど、今のが終わったら次を――」
「それは、判っている」
「その業界の通りを破るほど、大変なの?」
「あぁ」
「そんなに? どこが」
「主に、スケジュール面で」
「ヘルプでもダメなんだ」
「なんとか、今年中に出して、収益を出さないと――」
「会社が潰れるほど、か。この前貸したAIは?」
「それでも、間に合わなくて――」
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「――僕、陣頭指揮とか取れないよ」
「判っている。席もお金も用意する。だから――」
「お金、ギリギリなのに? 頑張るね~~」
「あのタウンや背景などはソラタしかできない。だから――」
頭を下げる、次の依頼先。
「……ダメか?」
「タチナに聞かないと。やっぱり最後はね。大丈夫だとは思うけど」
そして、今に至る。
「なに、出たくない?」
「いや、僕に退去する拒否権はないから」
「寂しいこと言うよね。ソラタって」
「でも、この業界、お金ないから」
「そうだけど。でも、あのタウンのお陰で、相当人気になった」
「そうなんだ」
「やっぱり、ゲームで落ち着ける場所だからね。絶対に高精細じゃないと」
「まぁ、また呼んでよ」
「お願いするね」
電話を終える。
アカネが走ってくる。
「ソラタ。どういうこと!?」
「だって、結局インフィニティチェアーが一番落ち着けるんだもん」
「……何の話?」
「何の話なわけ?」
「いや、だから――。社内報!」
「誰が異動するの? よくあることだよ」
「私たち!」
「――。うん。そう」
「……知っていたの?」
「そりゃあ、チーフだから。というか、僕が決めたし。それで廃止、統合を」
「何で?」
「何でって、この仕事の用が済んだから」
「でも――」
「でもさ、この業界、退職が基本だから」
「そうだけど――」
「僕、次が決まっているから」
「あ、ズルい! ――それで廃止?」
「一応、責任者がいないとダメだから」
「……私は」
「不適任」
「そう……。そりゃあ、私はソラタみたいに上手くないし、競争を受け続けていた」
「そうじゃなくて、もっと好きなのを探してもいいんじゃない?」
「……え?」
「他も見て、それでも背景やタウンと決めてからでも、いいかなって」
「でも、ここは――」
「ここに縛られていると、それこそ他が見えなくなるよ。だから不適任」
「……判った」
納得するアカネ。
「で、私はどうなるの?」
「……退職」
「次は?」
「……決まってない」
「あのね~~!? ――本当、どうするの?」
「でもさ、プログラマーってそういうものだからさ」
「責任放棄するな!」
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