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第六章 地上調査
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✳︎✳︎✳︎
寛人は水縁に屈みこみ、水面を覗き込んでいた。
大小の小魚が泳ぎ回っていた。水底には貝などの水生生物が群れ、柔らかそうな藻が揺れている。水はものすごく澄んでいた。
「きれいな水がこんなに沢山あるなんて贅沢だねえ」
ふいに斎藤が寛人の隣に屈みこんだ。斎藤は塗り潰したような目で水面をじっと見つめながら、飲めるといいんだけどねえと呟いた。
「水質検査してみましょうか。大丈夫そうなら煮沸して、皆の水筒に足しましょう」
「――あんたら、水際から離れたほうがいい。なんか嫌な予感がする」
渥美が少し離れた草地から声をかけた。張り詰めた顔で周囲を見渡している。
寛人は顔を上げた。
(確かに、妙に閑散としている。水辺には色んな生き物が集まっていてもおかしくないはずなのに――)
その時だった。ぶうんと低い翅音が耳朶を震わせた。
「屈め、柚木!!」
渥美の声が飛ぶと同時に、斎藤が寛人を抱えるように背後に倒れ込んだ。
強い風が吹きぬけた。見上げると、開帳二メートルを超える蜻蛉が空に大きく弧を描いている姿が目に入った。
「は――速っええな……」
渥美は呆然と呟いた。
寛人は、すみません――と身を起こした。斎藤は無言でじっと頭上を見据えている。
空には巨大蜻蛉が十数匹あまりも旋回していた。
「くそっ、どうゆうことだよ。じっとしてたのに襲ってきやがった」
渥美は歯を食いしばった。この蜻蛉は飛んでいる生き物だけでなく、地を這うものも襲うのか。水辺に、他の動物がいないのはこうゆうわけだったのだ。
先ほど急降下してきた蜻蛉が再び青空を滑るように引き返してきた。
ふいにぴたりと宙に停止飛翔する。翡翠のごとく美しい複眼がじっと見降ろし、寛人はぎくりとした。巨大蜻蛉は確実に寛人に照準を合わせていた。
渥美はとっさに河野のレーザーライフルを手に取った。
「で――電源はどこだよ⁉︎」
「さあねぇ」
斎藤は淡々と呟くと、ウィンドブレーカーを脱ぎだした。
「……何してんだよ」
「この上着、気に入ってるので。傷まないようにね」
Tシャツ姿になった斎藤は、ウィンドブレーカーを畳んで自分の背嚢に仕舞った。
「渥美くん。銃なんて置いておきなさい。素人があんな速いものを狙えるわけがない。電池の無駄になるだけだから」
「……でも、黙って食われるわけにはいかねえだろ」
ようやくレーザーライフルの電源を見つけた渥美に、斎藤は――そうだね、と呟くように言った。
その虚のごとく暗い眼差しに、渥美はすっと背筋が凍る思いがした。
巨大蜻蛉と対峙した寛人は、凍りついたように動けなかった。
(やっぱり、発煙筒を使うべきだったんだ)
迷っていずに、最初から使えばよかったのだ。残り少ないことを惜しんで、取り返しのつかないことになるとはこのことだ。
食べられる――恐怖にどっと汗がふき出した。頭で考えるとまるで現実味がないというのに、震えがとまらなかった。この身体は、これから起こることをちゃんとわかっているのだ。
(発煙筒――今からでも、間に合うだろうか)
寛人は蜻蛉に目を向けたまま、ゆっくりと屈みこんだ。そっと背嚢をおろし、手探りでファスナーに手をかける。
その時だった。斎藤が、寛人の背嚢を上からすいっと取りあげた。
寛人は驚いて顔をあげた。
「な――何するんです!」
「発煙筒は使わせないよ、柚木くん」
斎藤は蜻蛉をじっと見据えながら言った。瞳の奥の底知れぬ闇に――寛人は息を飲む。
「何やってんだよ斎藤さん!!」
渥美が血相を変えて叫んだ。
「柚木くんはお金のため、渥美くんは地上を見たいがために調査隊に紛れ込んだのだったね。私はね――このために地上に来たんですよ。捕食生物と命をかけた戦いがしたくて――」
さあ蜻蛉狩りだ――斎藤は呟くと、腰に帯びたナイフを鞘から引き抜いた。
殺気に気付いた蜻蛉が、斎藤に向かって方向転換した。――狙いが、寛人から斎藤に移った瞬間だった。
「……ナイフで戦う気かよ」
渥美が呆然と呟いた。
斎藤は寛人の背嚢を左手に持ったまま、右手でナイフを構えた。薄い唇を舐める。
「君たちは適当にさがっていなさい」
巨大蜻蛉が一直線に急降下し、目にもとまらぬ速さで斎藤の胴体を掴み上げた。
「さ――斎藤さん!!」
斎藤の身体がわずかに浮かび、それと同時に蜻蛉の大顎がばっくりと開いた。鋸のような二本の牙が食らいつかんと飛び出し――そこに斎藤は、寛人の背嚢を思い切りつっこんだ。
化け物相手にまったく怯まぬ斎藤に、寛人と渥美は仰天した。
斎藤はすかさず反対の手で蜻蛉の眼球にナイフを突き刺し、力任せに引き下ろした。ぶちぶちと角膜が引き裂かれる音が生々しく響く。
片目を失いながらも、蜻蛉は顎の力を緩めることはなかった。万力のように背嚢をみしみしと締めつけながら――翅を大きくはためかせた。
連れて行かれる――渥美がレーザーライフルの銃口を蜻蛉に向けた。寛人は咄嗟に叫んだ。
「よせ! 斎藤さんに中る!」
斎藤はちらと蜻蛉の背中に目を馳せると、その翅の根元をむんずと掴み、ねじるように引きちぎった。翅の付け根から腱や筋肉がずるずると引き出されてゆく。
巨大蜻蛉はぐらりと傾き、斎藤を掴んだまま地面にどうと倒れた。残った三枚の翅が、はたはたと力なく地を叩いている。
寛人と渥美は呆然と立ち竦んだ。あまりのことに、斎藤を助け起こすことすら思い至らなかった。
斎藤は胴回りに蜻蛉をぶら下げたまま、ムクリと半身を起こした。
腕を蜻蛉の頸部にぐるりとまわし、頭をがっちり抱きかかえた。そして眼球からナイフを引き抜き、そのまま首のつけ根に突き刺した。――瞬き一つせず、丁寧な所作で地道に肉を切り裂いてゆくさまは異様だった。
最後は頭を捻って胴から切り離した。ごとんと背嚢ごと頭部が地に落ちる様を、寛人と渥美は信じられない思いで見つめた。
蜻蛉は、頭部を失ってもなお、斎藤の身体をがっちりつかんだままだった。脚先の鎌状の棘が胴体に食い込み、Tシャツが大きく裂け、血で染まっている。
斎藤は全身に荒々しいものを漲らせたまま、目を上げた。蜻蛉との戦いの残余を感じさせる凄惨な眼差しだった。
「君たち、脚を外すのを手伝ってくれないかな。すぐに次のを相手しなければならないから」
「い……一匹一匹相手なんかしなくっても、あんたが柚木の背嚢を渡してくれればことは済むんだよ……」
渥美は掠れた声で言った。その声はひどく上擦っていた。
「発煙筒なんかで一網打尽にしてしまったら台無しになるじゃないか。言ったでしょう。私は命と命をかけあうやり取りがしたくて地上に来ているんです。だから銃だとか一方的なものは使いたくないんだ。ナイフなら公平感があるし、刃を通じて相手の体と繋がるでしょう。――この感覚を大事にしているんですよ、私は」
斎藤の白い首筋がほのかに紅潮していた。――息を切らしているのではない。死と隣り合わせの状況を悦しみ、興奮しているのだ。
寛人は息を呑んだ。蜻蛉は協力し合って狩りをする習性はない。戦うにしても一匹ずつになるだろうが――この十数匹の群れを、ナイフ一本で戦い続けることなんて、できるはずがない。
しかも――寛人は斎藤を見やる。斉藤は、胴に食い込んだ蜻蛉の脚を外していた。脚を一本外すたびに、Tシャツは赤く濡れ広がってゆく。――斎藤はもうすでに、激しく負傷を負っているのだ。
「……あの、またきっとこうゆう機会はありますよ。だから、今回は我慢してもらえませんか」
斎藤は――我慢ねぇ、と低く呟いた。
「私がどれだけ地下都市で我慢してきたかわかるかい? 前回の地上調査参加から三か月――込み上げる欲求を押さえつけるのが、どれだけ大変だったか」
物凄く殺したくなるんだ――と斎藤は言った。
「でも地下都市は人間しか生き物がいないから。ほら、人間に手をかけてはいけないでしょう。……だから地上でこの殺意を癒すしかないんだよ」
「でも僕たちは、あなたみたいに蜻蛉相手に戦うことなんてできない。河野さんたちだって襲われかねません。皆が助かるには、発煙筒を使うしかないんです」
寛人は懇々と訴えた。
斎藤は――うん、と視線を落とす。
「……私の我儘に皆を巻き込んで、申し訳ないと思ってるよ」
「思ってねえだろ、このサイコパスが!」
渥美はそう吐き捨てると、銃口を斎藤に向けた。
「発煙筒をよこせ!!」
斎藤がすっと目を細めた。足元に転がった寛人の背嚢を、食らいついたままの蜻蛉の頭部ごと持ち上げる。
「私の楽しみを邪魔しないでくれるかな?」
斎藤は渥美にナイフを真っ直ぐに突きつけた。
頭上では、徐々に蜻蛉が集まってきていた。まるで順番待ちの整列でもしているかのように等間隔で並び、それぞれがこっちを見ている。
退路がない――寛人は絶望的な気持ちでその場に立ち尽くした。
寛人は水縁に屈みこみ、水面を覗き込んでいた。
大小の小魚が泳ぎ回っていた。水底には貝などの水生生物が群れ、柔らかそうな藻が揺れている。水はものすごく澄んでいた。
「きれいな水がこんなに沢山あるなんて贅沢だねえ」
ふいに斎藤が寛人の隣に屈みこんだ。斎藤は塗り潰したような目で水面をじっと見つめながら、飲めるといいんだけどねえと呟いた。
「水質検査してみましょうか。大丈夫そうなら煮沸して、皆の水筒に足しましょう」
「――あんたら、水際から離れたほうがいい。なんか嫌な予感がする」
渥美が少し離れた草地から声をかけた。張り詰めた顔で周囲を見渡している。
寛人は顔を上げた。
(確かに、妙に閑散としている。水辺には色んな生き物が集まっていてもおかしくないはずなのに――)
その時だった。ぶうんと低い翅音が耳朶を震わせた。
「屈め、柚木!!」
渥美の声が飛ぶと同時に、斎藤が寛人を抱えるように背後に倒れ込んだ。
強い風が吹きぬけた。見上げると、開帳二メートルを超える蜻蛉が空に大きく弧を描いている姿が目に入った。
「は――速っええな……」
渥美は呆然と呟いた。
寛人は、すみません――と身を起こした。斎藤は無言でじっと頭上を見据えている。
空には巨大蜻蛉が十数匹あまりも旋回していた。
「くそっ、どうゆうことだよ。じっとしてたのに襲ってきやがった」
渥美は歯を食いしばった。この蜻蛉は飛んでいる生き物だけでなく、地を這うものも襲うのか。水辺に、他の動物がいないのはこうゆうわけだったのだ。
先ほど急降下してきた蜻蛉が再び青空を滑るように引き返してきた。
ふいにぴたりと宙に停止飛翔する。翡翠のごとく美しい複眼がじっと見降ろし、寛人はぎくりとした。巨大蜻蛉は確実に寛人に照準を合わせていた。
渥美はとっさに河野のレーザーライフルを手に取った。
「で――電源はどこだよ⁉︎」
「さあねぇ」
斎藤は淡々と呟くと、ウィンドブレーカーを脱ぎだした。
「……何してんだよ」
「この上着、気に入ってるので。傷まないようにね」
Tシャツ姿になった斎藤は、ウィンドブレーカーを畳んで自分の背嚢に仕舞った。
「渥美くん。銃なんて置いておきなさい。素人があんな速いものを狙えるわけがない。電池の無駄になるだけだから」
「……でも、黙って食われるわけにはいかねえだろ」
ようやくレーザーライフルの電源を見つけた渥美に、斎藤は――そうだね、と呟くように言った。
その虚のごとく暗い眼差しに、渥美はすっと背筋が凍る思いがした。
巨大蜻蛉と対峙した寛人は、凍りついたように動けなかった。
(やっぱり、発煙筒を使うべきだったんだ)
迷っていずに、最初から使えばよかったのだ。残り少ないことを惜しんで、取り返しのつかないことになるとはこのことだ。
食べられる――恐怖にどっと汗がふき出した。頭で考えるとまるで現実味がないというのに、震えがとまらなかった。この身体は、これから起こることをちゃんとわかっているのだ。
(発煙筒――今からでも、間に合うだろうか)
寛人は蜻蛉に目を向けたまま、ゆっくりと屈みこんだ。そっと背嚢をおろし、手探りでファスナーに手をかける。
その時だった。斎藤が、寛人の背嚢を上からすいっと取りあげた。
寛人は驚いて顔をあげた。
「な――何するんです!」
「発煙筒は使わせないよ、柚木くん」
斎藤は蜻蛉をじっと見据えながら言った。瞳の奥の底知れぬ闇に――寛人は息を飲む。
「何やってんだよ斎藤さん!!」
渥美が血相を変えて叫んだ。
「柚木くんはお金のため、渥美くんは地上を見たいがために調査隊に紛れ込んだのだったね。私はね――このために地上に来たんですよ。捕食生物と命をかけた戦いがしたくて――」
さあ蜻蛉狩りだ――斎藤は呟くと、腰に帯びたナイフを鞘から引き抜いた。
殺気に気付いた蜻蛉が、斎藤に向かって方向転換した。――狙いが、寛人から斎藤に移った瞬間だった。
「……ナイフで戦う気かよ」
渥美が呆然と呟いた。
斎藤は寛人の背嚢を左手に持ったまま、右手でナイフを構えた。薄い唇を舐める。
「君たちは適当にさがっていなさい」
巨大蜻蛉が一直線に急降下し、目にもとまらぬ速さで斎藤の胴体を掴み上げた。
「さ――斎藤さん!!」
斎藤の身体がわずかに浮かび、それと同時に蜻蛉の大顎がばっくりと開いた。鋸のような二本の牙が食らいつかんと飛び出し――そこに斎藤は、寛人の背嚢を思い切りつっこんだ。
化け物相手にまったく怯まぬ斎藤に、寛人と渥美は仰天した。
斎藤はすかさず反対の手で蜻蛉の眼球にナイフを突き刺し、力任せに引き下ろした。ぶちぶちと角膜が引き裂かれる音が生々しく響く。
片目を失いながらも、蜻蛉は顎の力を緩めることはなかった。万力のように背嚢をみしみしと締めつけながら――翅を大きくはためかせた。
連れて行かれる――渥美がレーザーライフルの銃口を蜻蛉に向けた。寛人は咄嗟に叫んだ。
「よせ! 斎藤さんに中る!」
斎藤はちらと蜻蛉の背中に目を馳せると、その翅の根元をむんずと掴み、ねじるように引きちぎった。翅の付け根から腱や筋肉がずるずると引き出されてゆく。
巨大蜻蛉はぐらりと傾き、斎藤を掴んだまま地面にどうと倒れた。残った三枚の翅が、はたはたと力なく地を叩いている。
寛人と渥美は呆然と立ち竦んだ。あまりのことに、斎藤を助け起こすことすら思い至らなかった。
斎藤は胴回りに蜻蛉をぶら下げたまま、ムクリと半身を起こした。
腕を蜻蛉の頸部にぐるりとまわし、頭をがっちり抱きかかえた。そして眼球からナイフを引き抜き、そのまま首のつけ根に突き刺した。――瞬き一つせず、丁寧な所作で地道に肉を切り裂いてゆくさまは異様だった。
最後は頭を捻って胴から切り離した。ごとんと背嚢ごと頭部が地に落ちる様を、寛人と渥美は信じられない思いで見つめた。
蜻蛉は、頭部を失ってもなお、斎藤の身体をがっちりつかんだままだった。脚先の鎌状の棘が胴体に食い込み、Tシャツが大きく裂け、血で染まっている。
斎藤は全身に荒々しいものを漲らせたまま、目を上げた。蜻蛉との戦いの残余を感じさせる凄惨な眼差しだった。
「君たち、脚を外すのを手伝ってくれないかな。すぐに次のを相手しなければならないから」
「い……一匹一匹相手なんかしなくっても、あんたが柚木の背嚢を渡してくれればことは済むんだよ……」
渥美は掠れた声で言った。その声はひどく上擦っていた。
「発煙筒なんかで一網打尽にしてしまったら台無しになるじゃないか。言ったでしょう。私は命と命をかけあうやり取りがしたくて地上に来ているんです。だから銃だとか一方的なものは使いたくないんだ。ナイフなら公平感があるし、刃を通じて相手の体と繋がるでしょう。――この感覚を大事にしているんですよ、私は」
斎藤の白い首筋がほのかに紅潮していた。――息を切らしているのではない。死と隣り合わせの状況を悦しみ、興奮しているのだ。
寛人は息を呑んだ。蜻蛉は協力し合って狩りをする習性はない。戦うにしても一匹ずつになるだろうが――この十数匹の群れを、ナイフ一本で戦い続けることなんて、できるはずがない。
しかも――寛人は斎藤を見やる。斉藤は、胴に食い込んだ蜻蛉の脚を外していた。脚を一本外すたびに、Tシャツは赤く濡れ広がってゆく。――斎藤はもうすでに、激しく負傷を負っているのだ。
「……あの、またきっとこうゆう機会はありますよ。だから、今回は我慢してもらえませんか」
斎藤は――我慢ねぇ、と低く呟いた。
「私がどれだけ地下都市で我慢してきたかわかるかい? 前回の地上調査参加から三か月――込み上げる欲求を押さえつけるのが、どれだけ大変だったか」
物凄く殺したくなるんだ――と斎藤は言った。
「でも地下都市は人間しか生き物がいないから。ほら、人間に手をかけてはいけないでしょう。……だから地上でこの殺意を癒すしかないんだよ」
「でも僕たちは、あなたみたいに蜻蛉相手に戦うことなんてできない。河野さんたちだって襲われかねません。皆が助かるには、発煙筒を使うしかないんです」
寛人は懇々と訴えた。
斎藤は――うん、と視線を落とす。
「……私の我儘に皆を巻き込んで、申し訳ないと思ってるよ」
「思ってねえだろ、このサイコパスが!」
渥美はそう吐き捨てると、銃口を斎藤に向けた。
「発煙筒をよこせ!!」
斎藤がすっと目を細めた。足元に転がった寛人の背嚢を、食らいついたままの蜻蛉の頭部ごと持ち上げる。
「私の楽しみを邪魔しないでくれるかな?」
斎藤は渥美にナイフを真っ直ぐに突きつけた。
頭上では、徐々に蜻蛉が集まってきていた。まるで順番待ちの整列でもしているかのように等間隔で並び、それぞれがこっちを見ている。
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