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第四章 国立女性保護施設
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退社後、渥美が乗客用自動走行車で向かったのは、国立女性保護施設――通称「センター」と呼ばれている建物であった。
急激に減少している日本人女性を収容し、保護するための施設である。このような施設は地下都市に十五箇所あり、女性の生殖能力ごとに収容場所が決まっていた。
渥美の訪れた中央第一センターは、心身ともに健康かつ社会的にも問題のない十八歳から五十歳までの女児の出産経験のある経産婦、そしてその親族の女性だけが集められた施設であった。
完全自動運転の車は手入れの行き届いた並木道を音もなく走り、背の高い門扉の前でとまった。渥美がそこで降りると、車は自動で来院者用駐車場に向かう。
延々と左右に伸びる白亜の塀を、渥美は見上げた。
周りは感圧コードセンサが張り巡らされており、デイナイト防犯カメラが隙なく設置されている。
高さも五階建ビルに匹敵するくらい高い。高層建築物が規制されている地下都市で、この中央第一センターの存在感は際立っていた。
渥美は尻ポケットから来院許可カードを抜きだすと、門の手前にあるボックスのスロットに通した。門が重々しく開き、広々とした人工芝の向こうにベルヴェデーレ宮殿を模した建物本体が姿を現した。
いつ見ても悪趣味だ――渥美は口の端を歪める。
綺麗に敷かれた石畳を踏みしめて建物に入ると、十八世紀のバロック様式の外装から一変して、内装はつるりとシンプルな近代的な病院施設となっていた。
渥美は来院者審査室で目深にかぶった帽子を脱いだ。
所持品をすべて預け、金属探知機のゲートを通過する。検査着に着替え、感染症検査、滅菌を経て、ようやくエントランスホールにたどり着いた。
広いホールに人影はなかった。渥美はまっすぐエレベーターに乗り込んだ。
『何階でしょうか』
「二十四階」
電子音声に答えるやいなや、重力も気圧の変化も感じないエレベーターは、瞬く間に渥美を階上に連れていった。
急激に減少している日本人女性を収容し、保護するための施設である。このような施設は地下都市に十五箇所あり、女性の生殖能力ごとに収容場所が決まっていた。
渥美の訪れた中央第一センターは、心身ともに健康かつ社会的にも問題のない十八歳から五十歳までの女児の出産経験のある経産婦、そしてその親族の女性だけが集められた施設であった。
完全自動運転の車は手入れの行き届いた並木道を音もなく走り、背の高い門扉の前でとまった。渥美がそこで降りると、車は自動で来院者用駐車場に向かう。
延々と左右に伸びる白亜の塀を、渥美は見上げた。
周りは感圧コードセンサが張り巡らされており、デイナイト防犯カメラが隙なく設置されている。
高さも五階建ビルに匹敵するくらい高い。高層建築物が規制されている地下都市で、この中央第一センターの存在感は際立っていた。
渥美は尻ポケットから来院許可カードを抜きだすと、門の手前にあるボックスのスロットに通した。門が重々しく開き、広々とした人工芝の向こうにベルヴェデーレ宮殿を模した建物本体が姿を現した。
いつ見ても悪趣味だ――渥美は口の端を歪める。
綺麗に敷かれた石畳を踏みしめて建物に入ると、十八世紀のバロック様式の外装から一変して、内装はつるりとシンプルな近代的な病院施設となっていた。
渥美は来院者審査室で目深にかぶった帽子を脱いだ。
所持品をすべて預け、金属探知機のゲートを通過する。検査着に着替え、感染症検査、滅菌を経て、ようやくエントランスホールにたどり着いた。
広いホールに人影はなかった。渥美はまっすぐエレベーターに乗り込んだ。
『何階でしょうか』
「二十四階」
電子音声に答えるやいなや、重力も気圧の変化も感じないエレベーターは、瞬く間に渥美を階上に連れていった。
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