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三章
2回目
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馬車の渋滞を抜けてようやくたどり付いた会場には、まだまばらにしか人影はなく、お酒を飲みながら雑談を交わす人達がいた。しかし、僕達が会場に入った事に気付いた人達を中心に、会場内にざわめきが広がって行く。そして、そのざわめきに誘われるように、みんなの視線がこちらを向いた。
その人達は、僕達の様子を伺うような視線をしきりに向けているけれど、話すきっかけがないからか、遠巻きで見ているだけで、僕達に話しかけて来ない。
そんな中、輪からはみ出るように、1人の男性がこちらに近付いて来るのが見えた。
「レグリウス公。お初にお目にかかります。私は、ローガン・ウォーカーと申します。私の息子が大変世話になったようで、お礼の言葉もありません。しかし、レグリウス公がこのような時間にお越しになるなど、今までになかった事ですが、何かございましたか?」
「何もない。ただ、父親として、息子の頼みを無下にはしたくなかっただけだ」
笑顔で話し掛けて来た人に対して、父様は表情を変える事なく淡々と対応するが、相手はそれを気にした様子もなかった。
「レグリウス公は、本当にお優しい。ご子息の優秀さもさることながら、ご活躍もかねがね。これを機に、是非とも友好を…」
「是非、私とも!」
「いや!是非、私と!!」
話すきっかけを探っていたからか、話しの途中だと言うのに、我先に父様の周りには人だかりが出来て、姿が見えなくなって行く。
はたから見ると、その光景はまるで餌に群がる獣の群れにも見えた。隙間から見えた最後の父様の顔は、もうすでに疲れきったような顔に見えた。
兄様の方にも、綺麗な令嬢方などが集まりつつあったけれど、兄様の方が背が高いから、引きつるような顔をした兄様の顔が見えた。
「リュカー!こっち」
そんな父様達とは逆の方向から声が聞こえて振り向くと、コンラッドとバルドの他に、コンラッドの屋敷で見かけたお兄さんらしき人が一緒に立っているのが見えた。
僕は、確認するように父様達の方を振り向いた。
父様達の事は少し心配ではあったけれど、逃げ場所が確保されているのなら、無事に逃げ切れと信じて、僕はその場を後にする。
「他の人はいないの?」
そばに駆け寄ってから、他に人がいないのか辺りを見渡しながら訪ねた。
「親父は、警備状況の確認に行ったんだ。母さんも、ご婦人達と控室の方に行ったから、陛下の挨拶が始まるまで戻って来ないと思うぞ」
父様から話しを聞いていた通り、バルトのお父さんは此処にはいないようだった。
「コンラットの方は?」
「私の両親は、挨拶周りなどに行っています。私の家は分家なので、親戚関係の方々などにも、挨拶に回らなければなりませんからね」
コンラッドに聞いたら、さも当然のような顔で答えた後、改まった表情を浮かべてながら言った。
「それよりも、リュカに紹介が遅れてしまいましたが、隣にいるのは私の兄です。必要ないと言ったのですが、両親も譲らなかったので、今回も保護者役として付いて来て貰いました」
「何かあるといけないから、さすがに放っておくわけにはいかないだろ」
コンラッドに困った者を見るような視線を向けた後、こちらへと視線を戻しながら、軽く頭を下げた。
「すみません。ご挨拶が遅れてしまいました。お初…ではないですね…。私はコンラットの兄で、フレディ・スクトールと言います。先日はお見苦しい所をお見せしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
初めて見た時と違って、物腰が柔らかくて、大人しそうな雰囲気に見えた。
「いえ!僕が無理を言ったからなので、気にしないで下さい!」
「そう言って頂けると、心が安らぎます」
僕の言葉に、何処か安心したような笑みを浮かべながら答えた。
「なぁ?話すなら、何か食べながら話さないか?」
「そうですね。移動しましょうか」
今すぐにでも行きたそうなバルドの提案で、僕達は場所を移す事にした。
僕達は、会場に置かれた料理を味わいながら雑談をしたり、食べて美味しかった物をお互いに教えあったりしていた。
「リュカ。あっちに美味そうな肉料理があったから、俺ちょっと行って来るな!」
「貴方を1人に出来るわけないでしょう!?私も行ってきます!リュカ、ちょっとだけ待ってて下さい!」
それだけ言うと、バルド達がいなくなってしまった。初めて会った相手だから、2人がいなくなった途端に話題が途切れる。
相手の方も、僕とどう接して良いものか分からないように、気まずそうにしていた。
「兄様に憧れてるんですか?」
何も話題が見つからなかった僕は、前にコンラットから聞いた共通の話しを振ってみる事にした。
「えーと、それは弟から聞いたのですか?私も、最初は屋敷から出られないコンラットの気晴らしのために聞いていた事だったのですが、色々と聞いて行くうちに私の方がしだいにハマってしまいまして…。それに、私の話しを楽しそうに聞いてくれるコンラッドの姿もまた嬉しかったもので、何ともお恥ずかし限りです…」
そう言って、照れくさそうに笑う姿を見ても、悪い人ではなさそうだった。
「少し、お時間よろしいでしょうか?」
僕がそんな事を思っている時、後ろから誰かに声を掛けられた。
その人達は、僕達の様子を伺うような視線をしきりに向けているけれど、話すきっかけがないからか、遠巻きで見ているだけで、僕達に話しかけて来ない。
そんな中、輪からはみ出るように、1人の男性がこちらに近付いて来るのが見えた。
「レグリウス公。お初にお目にかかります。私は、ローガン・ウォーカーと申します。私の息子が大変世話になったようで、お礼の言葉もありません。しかし、レグリウス公がこのような時間にお越しになるなど、今までになかった事ですが、何かございましたか?」
「何もない。ただ、父親として、息子の頼みを無下にはしたくなかっただけだ」
笑顔で話し掛けて来た人に対して、父様は表情を変える事なく淡々と対応するが、相手はそれを気にした様子もなかった。
「レグリウス公は、本当にお優しい。ご子息の優秀さもさることながら、ご活躍もかねがね。これを機に、是非とも友好を…」
「是非、私とも!」
「いや!是非、私と!!」
話すきっかけを探っていたからか、話しの途中だと言うのに、我先に父様の周りには人だかりが出来て、姿が見えなくなって行く。
はたから見ると、その光景はまるで餌に群がる獣の群れにも見えた。隙間から見えた最後の父様の顔は、もうすでに疲れきったような顔に見えた。
兄様の方にも、綺麗な令嬢方などが集まりつつあったけれど、兄様の方が背が高いから、引きつるような顔をした兄様の顔が見えた。
「リュカー!こっち」
そんな父様達とは逆の方向から声が聞こえて振り向くと、コンラッドとバルドの他に、コンラッドの屋敷で見かけたお兄さんらしき人が一緒に立っているのが見えた。
僕は、確認するように父様達の方を振り向いた。
父様達の事は少し心配ではあったけれど、逃げ場所が確保されているのなら、無事に逃げ切れと信じて、僕はその場を後にする。
「他の人はいないの?」
そばに駆け寄ってから、他に人がいないのか辺りを見渡しながら訪ねた。
「親父は、警備状況の確認に行ったんだ。母さんも、ご婦人達と控室の方に行ったから、陛下の挨拶が始まるまで戻って来ないと思うぞ」
父様から話しを聞いていた通り、バルトのお父さんは此処にはいないようだった。
「コンラットの方は?」
「私の両親は、挨拶周りなどに行っています。私の家は分家なので、親戚関係の方々などにも、挨拶に回らなければなりませんからね」
コンラッドに聞いたら、さも当然のような顔で答えた後、改まった表情を浮かべてながら言った。
「それよりも、リュカに紹介が遅れてしまいましたが、隣にいるのは私の兄です。必要ないと言ったのですが、両親も譲らなかったので、今回も保護者役として付いて来て貰いました」
「何かあるといけないから、さすがに放っておくわけにはいかないだろ」
コンラッドに困った者を見るような視線を向けた後、こちらへと視線を戻しながら、軽く頭を下げた。
「すみません。ご挨拶が遅れてしまいました。お初…ではないですね…。私はコンラットの兄で、フレディ・スクトールと言います。先日はお見苦しい所をお見せしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
初めて見た時と違って、物腰が柔らかくて、大人しそうな雰囲気に見えた。
「いえ!僕が無理を言ったからなので、気にしないで下さい!」
「そう言って頂けると、心が安らぎます」
僕の言葉に、何処か安心したような笑みを浮かべながら答えた。
「なぁ?話すなら、何か食べながら話さないか?」
「そうですね。移動しましょうか」
今すぐにでも行きたそうなバルドの提案で、僕達は場所を移す事にした。
僕達は、会場に置かれた料理を味わいながら雑談をしたり、食べて美味しかった物をお互いに教えあったりしていた。
「リュカ。あっちに美味そうな肉料理があったから、俺ちょっと行って来るな!」
「貴方を1人に出来るわけないでしょう!?私も行ってきます!リュカ、ちょっとだけ待ってて下さい!」
それだけ言うと、バルド達がいなくなってしまった。初めて会った相手だから、2人がいなくなった途端に話題が途切れる。
相手の方も、僕とどう接して良いものか分からないように、気まずそうにしていた。
「兄様に憧れてるんですか?」
何も話題が見つからなかった僕は、前にコンラットから聞いた共通の話しを振ってみる事にした。
「えーと、それは弟から聞いたのですか?私も、最初は屋敷から出られないコンラットの気晴らしのために聞いていた事だったのですが、色々と聞いて行くうちに私の方がしだいにハマってしまいまして…。それに、私の話しを楽しそうに聞いてくれるコンラッドの姿もまた嬉しかったもので、何ともお恥ずかし限りです…」
そう言って、照れくさそうに笑う姿を見ても、悪い人ではなさそうだった。
「少し、お時間よろしいでしょうか?」
僕がそんな事を思っている時、後ろから誰かに声を掛けられた。
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