落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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三章

我慢

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「誰かと一緒ならばいいけれど、子供だけだと心配だわ」

夕食の席で、母様にパーティーの事について話したら、心配そうな顔をしながら僕に言った。

「オルフェと一緒じゃ駄目なの?」

「兄様も父様達と一緒で忙しいでしょ。だから、みんなと一緒にいたいんだ」

前回の様子を思い出す限り、兄様と一緒にいると人混みに囲まれて自由に回れそうにない。僕としては、兄様に気を使ったつもりだったのだけど、兄様の方から何処か寂しげな気配が漂ってきた。

「エレナ。私達と一緒にいるよりも、子供同士の方がリュカも楽しめると思うよ。それに、会場内にはベルンハルトの部下が大勢いるから、そこまで心配する必要もないしね」

「それは、そうかもしれないけれど…」

母様は、父様の言葉に何処か迷う素振りを見せながらも、最後は諦めたような顔をした。

「はぁ…。分かったわ。でも、会場内からは絶対に出ない事。良いわね?」

「はい!」

心配そうな顔を残しながらも、許可をくれた母様に返事を返した僕は、父様の方を盗み見る。こちらの視線に気付いたのか、父様は悪戯が成功した子供のように、こっそりと僕に笑い返してくれた。

母様は、父様には僕の事を甘やかさないように言いつつも、僕に対して過保護な部分があるため、反対されるかもしれないと思った。だから、先に協力を頼んでいて正解だった。

僕は、学院から帰って来た後、僕の一番の協力者に協力して貰うため、玄関ホールで帰りを待っていた。目当ての人物は、何時もの時間通りに帰って来た。

「父様、おかえりなさい!!」

着ていたコートを使用人に渡している父様の元へと駆け寄れば、父様は何処か楽しげな表情を浮かべながら言った。

「私に、何か頼みたい事でもあるのかな?」

「どうして分かったの!?」

「リュカは、分かりやすいからね」

言い当てられた事に驚ろきながら聞いたら、父様は微笑ましい物を見たような顔で笑った。

「僕って、そんなに分かりやすい?」

「リュカは、顔に出やすいからね。でも、私はそんな所もリュカのいい所だと思っているよ」

僕の頭を撫でながら言う父様の言葉に気を取り直した僕は、屋敷の廊下を歩きながら、父様を待っていた理由を説明した。

「少し心配ではあるけれど、私もリュカの提案が通るように協力するよ」

「やった!」

無事に父様との約束を取り付けられた僕は、その場で飛び跳ねるようにして喜んだ。そんな僕に、父様は何かを確認するかのように聞いた。

「リュカは、パーティーが楽しいかい?」

「はい!服は窮屈で嫌いだけど、お菓子だけをいっぱい食べても怒られないので楽しいです!」

父様の質問に、僕は満面の笑みを浮かべながら答えた。

「そうだね。屋敷でそんな事をすれば、エレナ達に怒られてしまうね」

「笑い事じゃないです…」

父様は笑いながら言うけれど、母様だけじゃなくてドミニクからも怒られる僕としては、少しも笑えない。

「すまない。だが、パーティーを楽しいと感じれるなら、それに越した事はないと思ったんだ」

「父様は、パーティーは好きじゃないの?」

さっきまでの顔と違って、目尻をさげながら言った父様を不思議に思って僕は聞いた。

「そうだね。得意では…。いや、正直に言えば、嫌いだね」

「どうして?」

あまり嫌いだと言わない父様が、はっきり嫌いだと言った父様が気になって聞いてみた。

「パーティーは、縁を結ぶために出席している者も多いんだ。けれど、私と縁を結びたい者はいても、私が縁を結びたい者などいなかった。だから、人が集まる場所は嫌いなんだよ」

「父様は、嫌いなのにパーティーに行くの?」

「そうだね。昔の私は、義務や打算だけで参加していたから、好きに行動する事が出来たが、今は逆の立場になってしまったからね。それに、縁を結び、維持する事の大変さを知ってからは、何があったとしても少しは我慢するようにしているんだよ」

「父様は、何を我慢しているの?」

父様は冗談めかしに言ったけれど、何となく何時もと違う感じがした。僕も、何か父様の役にたてないかと思って、父様に聞いた。

「私と親しい事は利益になるが、同時に不利益でもあるんだ。だから、もう迷惑がかからないよう、あまり親しい所を見せないように気を付けるようにしている。それは、相手方も分かっているとはいえ、時おり心苦しくなる時があるよ」

小さく笑うように言った後、父様は何時もの笑顔を見せながら僕に言った。

「今は私の事よりも、新年祭を楽しむためにエレナから許可を貰わないといけないね」

父様の事は気にはなったけれど、今は父様の言う通り、僕は間近な問題から片付ける事にした。けれど、僕の言葉で少し拗ねた兄様の対応の方が大変だった…。
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