122 / 248
三章
珍しい物
しおりを挟む
「隠し通路に興味があるなら、王城にある隠し通路にも案内しようか?」
屋敷に帰って来た僕は、夕食までの時間を父様達とラウンジ過ごしながら、今日の出来事をみんなに話していた。
「いえ、それはちょっと、遠慮します…」
城の隠し通路なんて、僕が知って良い物じゃないし、勝手に案内して良いものなの?。それに、余計な事には関わらない方が良いと、僕はこの1年近くで学んだ。
「それなら、リュカの部屋にも、隠し通路を作ったら良いのではないですか?」
「本当!?あ!やっぱりいらない…」
兄様から思いがけない提案をされて、思わず欲しいと思ってしまったけれど、そんな物使う事もないだろう。そんな意味の無い物に、お金や時間を掛けるのは勿体ない。
「遠慮する事はない」
「そうだよ。遠慮する必要はないよ」
「2人共、そんな事でリュカをからかっては駄目よ」
父様と兄様が、笑顔で僕に勧めてくる事に困っていると、母様が助け舟を出すように2人を止めてくれた。
「からかっていたわけではないよ。それにしても、珍しい物を貰って来たね」
父様は、何処か困ったような顔をしながら、ネアがくれた指輪へと視線を向けた。
「父様。これ、何だか知っているの?」
「それは、魔力を込めたら髪と目の色を変える事が出来る魔導具だよ」
「これがですか?」
これを渡された後、使い方は父様に聞けってネアから言われてたから不思議に思ったけれど、魔導具だとは思わなかった。
「他にも、大きさを変えたり、幻想を纏って姿を変える事も出来る物もあるけれど、そういった物は、市場には出回らないんだ」
「何で出回らないの?」
「所持するには、国から許可が必要な物だから、店では買えないんだよ」
なんとも思わすに貰った物だったけれど、僕が思ってるよりも凄い物だった。
「まあ、持ち主の魔力量によって使用時間が変わるから、魔力がない人間には無用の産物だけどね。リュカの魔力量なら、1時間くらいは持つはずだよ」
1時間でも姿を変えられるなら、それで十分のような気がする。
「父様なら、どれくらい持つんですか?」
「ん?1日使っても問題ないけれど、それがどうかしたかい?」
「いえ、ただ、聞いてみただけです…」
何気なく、父様に聞いてみただけなのに、僕との違いを見せつけられたような気がした…。
「……」
その後も父様達と他愛ない話をして過ごしながら、集まって来た使用人達からも誕生日の贈り物を貰った。
僕は、順番に中身を確認しながら箱を開けて行った。使用人達からは、ハンカチなどの小物類が多かった。
兄様の箱には、指輪が入っていた。何でも、保護魔法が掛かった魔道具で、何かあれば自動で守ってくれるらしい。母様からは、藍色の宝石が付いたブローチで、服に合わせやすいように、目立たないよう作られているのに、しっかりと作り込まれていた。
父様からは、お菓子屋さんの権利書を笑顔で渡されたけれど、それは丁寧に返品しておいた…。
みんなからの贈り物を開けていたら、あっという間に時間が過ぎて、夕方になっていた。お腹も空いて来た事もあって、みんなで移動しようとした時、兄様から呼び止められた。
「リュカ」
「兄様、どうしたの?」
「友人から貰ったその指輪の機能については、あまり人には言わない方が良い」
「どうして?」
「それは珍しい物だと、父上も言っていただろう。そうなれば、それを狙う輩とかも現れる可能性もある。幸い、魔力さえ流さなければただの指輪にしか見えないから、付けている分には問題ないと思うが、それでも用心するに越した事はない」
兄様が真剣な表情をするから、少しだけ怖くなった僕は、先までの気持ちが萎んで行くのを感じた。
「うん…。分かった」
「すまない。誕生日にする話ではなかったな…」
落ち込んだように頭を下げる僕を心配したのか、兄様が申し訳無さそうな顔で謝ってきた。
「僕の事心配してくれたんでしょ?ちゃんと分かってるから、大丈夫だよ」
「そうか…」
兄様は、口角を少し上げると、僕の頭を軽く撫でるように触った。兄様の手で、表情は良く見えなかったけど、少しでも気が晴れたみたいで良かった。
「ネア!」
次の日、教室に行く途中の廊下でネアの後ろ姿を見かけた僕は、大きな声で呼び止めた。
「どうした?」
僕が追いつくのを待っていてくれたネアが、不思議そうな顔をしながら聞いてきた。僕は、ポケットから箱を取り出すと、ネアへと差し出した。
「これ、珍しい物なんだってね。昨日の夜に、父様から聞いたんだ。でも、さすがにそんな物は、貰えないから返すよ」
付けているだけならば分からないと、兄様から言われていたけれど、念のために箱に入れて持って来ていた。
最初は、怪訝そうに箱を見ていたネアだったけれど、箱の中身を知ると、何時もの無愛想な顔に戻っていた。
「ああ、それか。俺は使わないし、必要のない物だから、そのまま貰って構わない」
「でも…」
「気にするな」
気にするなと言われても気にするよ…。箱を差し出したまま懇願するように見ていたら、そんな僕の気持ちに気付いたのか、ネアがため息混じりに言った。
「はぁ…。なら、俺が安心できるまで持っとけ」
「安心?」
「お前、問題ごとに巻き込まれる事が多いだろう。本当なら、身を守る魔導具の方が適切なんだろうが、俺はそういうのは持ってないからな。だから、それ使って逃げるなり、隠れるなりして身を守れ。それで、それがなくても大丈夫だと思ったら返して貰う。それでどうだ?」
「うーん…」
それでも、僕だけが得をしているような気がするんだけど…。僕が煮えきらない態度を取っていると、若干不機嫌そうな顔をしながらネアが言った。
「そもそも、誕生日で贈った物を送り返すのはどうなんだ?それ、気に入らなかったか?それとも、俺からのは嬉しくないって事か?」
「そんな事ないよ!」
「なら、問題ないだろう。遅れるから行くぞ」
「え!?ま、待ってよ!!」
ネアに上手くはぐらかされたような気もしなくもないけど、とりあえず僕は慌ててネアの後を追って教室を目指した。
屋敷に帰って来た僕は、夕食までの時間を父様達とラウンジ過ごしながら、今日の出来事をみんなに話していた。
「いえ、それはちょっと、遠慮します…」
城の隠し通路なんて、僕が知って良い物じゃないし、勝手に案内して良いものなの?。それに、余計な事には関わらない方が良いと、僕はこの1年近くで学んだ。
「それなら、リュカの部屋にも、隠し通路を作ったら良いのではないですか?」
「本当!?あ!やっぱりいらない…」
兄様から思いがけない提案をされて、思わず欲しいと思ってしまったけれど、そんな物使う事もないだろう。そんな意味の無い物に、お金や時間を掛けるのは勿体ない。
「遠慮する事はない」
「そうだよ。遠慮する必要はないよ」
「2人共、そんな事でリュカをからかっては駄目よ」
父様と兄様が、笑顔で僕に勧めてくる事に困っていると、母様が助け舟を出すように2人を止めてくれた。
「からかっていたわけではないよ。それにしても、珍しい物を貰って来たね」
父様は、何処か困ったような顔をしながら、ネアがくれた指輪へと視線を向けた。
「父様。これ、何だか知っているの?」
「それは、魔力を込めたら髪と目の色を変える事が出来る魔導具だよ」
「これがですか?」
これを渡された後、使い方は父様に聞けってネアから言われてたから不思議に思ったけれど、魔導具だとは思わなかった。
「他にも、大きさを変えたり、幻想を纏って姿を変える事も出来る物もあるけれど、そういった物は、市場には出回らないんだ」
「何で出回らないの?」
「所持するには、国から許可が必要な物だから、店では買えないんだよ」
なんとも思わすに貰った物だったけれど、僕が思ってるよりも凄い物だった。
「まあ、持ち主の魔力量によって使用時間が変わるから、魔力がない人間には無用の産物だけどね。リュカの魔力量なら、1時間くらいは持つはずだよ」
1時間でも姿を変えられるなら、それで十分のような気がする。
「父様なら、どれくらい持つんですか?」
「ん?1日使っても問題ないけれど、それがどうかしたかい?」
「いえ、ただ、聞いてみただけです…」
何気なく、父様に聞いてみただけなのに、僕との違いを見せつけられたような気がした…。
「……」
その後も父様達と他愛ない話をして過ごしながら、集まって来た使用人達からも誕生日の贈り物を貰った。
僕は、順番に中身を確認しながら箱を開けて行った。使用人達からは、ハンカチなどの小物類が多かった。
兄様の箱には、指輪が入っていた。何でも、保護魔法が掛かった魔道具で、何かあれば自動で守ってくれるらしい。母様からは、藍色の宝石が付いたブローチで、服に合わせやすいように、目立たないよう作られているのに、しっかりと作り込まれていた。
父様からは、お菓子屋さんの権利書を笑顔で渡されたけれど、それは丁寧に返品しておいた…。
みんなからの贈り物を開けていたら、あっという間に時間が過ぎて、夕方になっていた。お腹も空いて来た事もあって、みんなで移動しようとした時、兄様から呼び止められた。
「リュカ」
「兄様、どうしたの?」
「友人から貰ったその指輪の機能については、あまり人には言わない方が良い」
「どうして?」
「それは珍しい物だと、父上も言っていただろう。そうなれば、それを狙う輩とかも現れる可能性もある。幸い、魔力さえ流さなければただの指輪にしか見えないから、付けている分には問題ないと思うが、それでも用心するに越した事はない」
兄様が真剣な表情をするから、少しだけ怖くなった僕は、先までの気持ちが萎んで行くのを感じた。
「うん…。分かった」
「すまない。誕生日にする話ではなかったな…」
落ち込んだように頭を下げる僕を心配したのか、兄様が申し訳無さそうな顔で謝ってきた。
「僕の事心配してくれたんでしょ?ちゃんと分かってるから、大丈夫だよ」
「そうか…」
兄様は、口角を少し上げると、僕の頭を軽く撫でるように触った。兄様の手で、表情は良く見えなかったけど、少しでも気が晴れたみたいで良かった。
「ネア!」
次の日、教室に行く途中の廊下でネアの後ろ姿を見かけた僕は、大きな声で呼び止めた。
「どうした?」
僕が追いつくのを待っていてくれたネアが、不思議そうな顔をしながら聞いてきた。僕は、ポケットから箱を取り出すと、ネアへと差し出した。
「これ、珍しい物なんだってね。昨日の夜に、父様から聞いたんだ。でも、さすがにそんな物は、貰えないから返すよ」
付けているだけならば分からないと、兄様から言われていたけれど、念のために箱に入れて持って来ていた。
最初は、怪訝そうに箱を見ていたネアだったけれど、箱の中身を知ると、何時もの無愛想な顔に戻っていた。
「ああ、それか。俺は使わないし、必要のない物だから、そのまま貰って構わない」
「でも…」
「気にするな」
気にするなと言われても気にするよ…。箱を差し出したまま懇願するように見ていたら、そんな僕の気持ちに気付いたのか、ネアがため息混じりに言った。
「はぁ…。なら、俺が安心できるまで持っとけ」
「安心?」
「お前、問題ごとに巻き込まれる事が多いだろう。本当なら、身を守る魔導具の方が適切なんだろうが、俺はそういうのは持ってないからな。だから、それ使って逃げるなり、隠れるなりして身を守れ。それで、それがなくても大丈夫だと思ったら返して貰う。それでどうだ?」
「うーん…」
それでも、僕だけが得をしているような気がするんだけど…。僕が煮えきらない態度を取っていると、若干不機嫌そうな顔をしながらネアが言った。
「そもそも、誕生日で贈った物を送り返すのはどうなんだ?それ、気に入らなかったか?それとも、俺からのは嬉しくないって事か?」
「そんな事ないよ!」
「なら、問題ないだろう。遅れるから行くぞ」
「え!?ま、待ってよ!!」
ネアに上手くはぐらかされたような気もしなくもないけど、とりあえず僕は慌ててネアの後を追って教室を目指した。
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。


劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる