落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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三章

珍しい物

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「隠し通路に興味があるなら、王城にある隠し通路にも案内しようか?」

屋敷に帰って来た僕は、夕食までの時間を父様達とラウンジ過ごしながら、今日の出来事をみんなに話していた。

「いえ、それはちょっと、遠慮します…」

城の隠し通路なんて、僕が知って良い物じゃないし、勝手に案内して良いものなの?。それに、余計な事には関わらない方が良いと、僕はこの1年近くで学んだ。

「それなら、リュカの部屋にも、隠し通路を作ったら良いのではないですか?」

「本当!?あ!やっぱりいらない…」

兄様から思いがけない提案をされて、思わず欲しいと思ってしまったけれど、そんな物使う事もないだろう。そんな意味の無い物に、お金や時間を掛けるのは勿体ない。

「遠慮する事はない」

「そうだよ。遠慮する必要はないよ」

「2人共、そんな事でリュカをからかっては駄目よ」

父様と兄様が、笑顔で僕に勧めてくる事に困っていると、母様が助け舟を出すように2人を止めてくれた。

「からかっていたわけではないよ。それにしても、珍しい物を貰って来たね」

父様は、何処か困ったような顔をしながら、ネアがくれた指輪へと視線を向けた。

「父様。これ、何だか知っているの?」

「それは、魔力を込めたら髪と目の色を変える事が出来る魔導具だよ」

「これがですか?」

これを渡された後、使い方は父様に聞けってネアから言われてたから不思議に思ったけれど、魔導具だとは思わなかった。

「他にも、大きさを変えたり、幻想を纏って姿を変える事も出来る物もあるけれど、そういった物は、市場には出回らないんだ」

「何で出回らないの?」

「所持するには、国から許可が必要な物だから、店では買えないんだよ」

なんとも思わすに貰った物だったけれど、僕が思ってるよりも凄い物だった。

「まあ、持ち主の魔力量によって使用時間が変わるから、魔力がない人間には無用の産物だけどね。リュカの魔力量なら、1時間くらいは持つはずだよ」

1時間でも姿を変えられるなら、それで十分のような気がする。

「父様なら、どれくらい持つんですか?」

「ん?1日使っても問題ないけれど、それがどうかしたかい?」

「いえ、ただ、聞いてみただけです…」

何気なく、父様に聞いてみただけなのに、僕との違いを見せつけられたような気がした…。

「……」

その後も父様達と他愛ない話をして過ごしながら、集まって来た使用人達からも誕生日の贈り物を貰った。

僕は、順番に中身を確認しながら箱を開けて行った。使用人達からは、ハンカチなどの小物類が多かった。

兄様の箱には、指輪が入っていた。何でも、保護魔法が掛かった魔道具で、何かあれば自動で守ってくれるらしい。母様からは、藍色の宝石が付いたブローチで、服に合わせやすいように、目立たないよう作られているのに、しっかりと作り込まれていた。

父様からは、お菓子屋さんの権利書を笑顔で渡されたけれど、それは丁寧に返品しておいた…。

みんなからの贈り物を開けていたら、あっという間に時間が過ぎて、夕方になっていた。お腹も空いて来た事もあって、みんなで移動しようとした時、兄様から呼び止められた。

「リュカ」

「兄様、どうしたの?」

「友人から貰ったその指輪の機能については、あまり人には言わない方が良い」

「どうして?」

「それは珍しい物だと、父上も言っていただろう。そうなれば、それを狙う輩とかも現れる可能性もある。幸い、魔力さえ流さなければただの指輪にしか見えないから、付けている分には問題ないと思うが、それでも用心するに越した事はない」

兄様が真剣な表情をするから、少しだけ怖くなった僕は、先までの気持ちが萎んで行くのを感じた。

「うん…。分かった」

「すまない。誕生日にする話ではなかったな…」

落ち込んだように頭を下げる僕を心配したのか、兄様が申し訳無さそうな顔で謝ってきた。

「僕の事心配してくれたんでしょ?ちゃんと分かってるから、大丈夫だよ」

「そうか…」

兄様は、口角を少し上げると、僕の頭を軽く撫でるように触った。兄様の手で、表情は良く見えなかったけど、少しでも気が晴れたみたいで良かった。

「ネア!」

次の日、教室に行く途中の廊下でネアの後ろ姿を見かけた僕は、大きな声で呼び止めた。

「どうした?」

僕が追いつくのを待っていてくれたネアが、不思議そうな顔をしながら聞いてきた。僕は、ポケットから箱を取り出すと、ネアへと差し出した。

「これ、珍しい物なんだってね。昨日の夜に、父様から聞いたんだ。でも、さすがにそんな物は、貰えないから返すよ」

付けているだけならば分からないと、兄様から言われていたけれど、念のために箱に入れて持って来ていた。

最初は、怪訝そうに箱を見ていたネアだったけれど、箱の中身を知ると、何時もの無愛想な顔に戻っていた。

「ああ、それか。俺は使わないし、必要のない物だから、そのまま貰って構わない」

「でも…」

「気にするな」

気にするなと言われても気にするよ…。箱を差し出したまま懇願するように見ていたら、そんな僕の気持ちに気付いたのか、ネアがため息混じりに言った。

「はぁ…。なら、俺が安心できるまで持っとけ」

「安心?」

「お前、問題ごとに巻き込まれる事が多いだろう。本当なら、身を守る魔導具の方が適切なんだろうが、俺はそういうのは持ってないからな。だから、それ使って逃げるなり、隠れるなりして身を守れ。それで、それがなくても大丈夫だと思ったら返して貰う。それでどうだ?」

「うーん…」

それでも、僕だけが得をしているような気がするんだけど…。僕が煮えきらない態度を取っていると、若干不機嫌そうな顔をしながらネアが言った。

「そもそも、誕生日で贈った物を送り返すのはどうなんだ?それ、気に入らなかったか?それとも、俺からのは嬉しくないって事か?」

「そんな事ないよ!」

「なら、問題ないだろう。遅れるから行くぞ」

「え!?ま、待ってよ!!」

ネアに上手くはぐらかされたような気もしなくもないけど、とりあえず僕は慌ててネアの後を追って教室を目指した。
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