落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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三章

バルトの屋敷

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泊まる約束をした日、僕は、何時もより狭い馬車に揺られながら、バルドの屋敷に向かった。

「お邪魔します」

バルドの屋敷に付くと、メイドさん達が出迎えに来てくれた。僕は、馬車の荷物を運んで貰えるように頼んで、他のメイドさんと一緒に玄関をくぐった。すると、上の方からバルドの声が聞こえた。

「リュカ!こっちだ!」

呼ばれて上を向くと、2階のバルコニー部分から手を振るバルドの姿が見えた。僕は、両脇にあった階段を使って上に上がると、バルドがいる場所へ向かった。

「これ、大きいね」

バルドがいる場所に着くと、真っ先に目に付いた物を見上げながら言った。

「ああ、爺ちゃんが狩猟の大会で、優勝した時の鹿らしいぞ。何でも、鹿は、力の象徴としても使われているけれど、魔除けにもなるんだってさ。だから、玄関に飾ってるらしいぞ」

バルドの話しを聞きながら、一緒に上を見上げる。首の部分だけだから、全体の大きさは分からないけれど、角の部分だけで、僕の身長くらいあるように見える。

僕の屋敷には、こういった物が置かれていないので、物珍しく見える。

「バルドのお父さんが、取った物とかもあるの?」

「見世物になるつもりも、こういう浮ついたものにも出る気はないって言ってたから、たぶんないんじゃないか?でも、剣術大会には、1度出た事あるって言ってたな」

「1度だけなの?」

騎士団長をやっているなら、何度か出ていてもおかしくはないと思ったのに?

「何でも、練習相手にもなら奴らしかいなかったんだってさ。だから、大会に出るより、授業の模擬戦の方が、有意義だったって言ってた」

「ふーん」

まあ、学院生を相手にするより、教師を相手にしてた方が、修練にはなりそうではある。

「それより、此処にいると捕まりそうだから、そろそろ部屋に行こうぜ。コンラットはもう来て、部屋で待ってるから、後はネアだけだな」

バルドと部屋に向かいながらも、周りに飾られている物を見ていた。僕の屋敷も、飾りは置いているけれど、バルドの屋敷は、鎧など見慣れない物が飾られていて興味が行く。

バルドに、色々聞きながら、廊下を歩いていると、ワインレッドの綺麗ドレスを来た女性が、こちらに歩いて来るのが見えた。

「ゲッ!は、母上!」

「バルド、その反応は何かしら?私が来たら、何か不都合でもあるの?」

「何もないです!」

姿勢を正して返事をするバルドの言葉で、兄様達が話していた相手と知って、僕も姿勢を正しながら相手を見つめる。

外見は30代くらいの年齢で、身長は女性としては高く、170cmくらいあった。緋色の目に、長い金髪をバラの銀細工で止めていた。バルドに向いていた視線が僕の方へ移ると、自然と身が引き締まる感じがした。

「その髪の色を見ると、レグリウス家の方かしら?」

「え!えっと、リュカ・レグリウスです!お招きありがとうございます!す、素敵なドレスですね。とても、お似合いです」

僕は、兄様の助言通り、着ているドレス褒める。赤色が好きなため、それを身に着けていたら、それを褒めるように言われていた。

「ありがとう。息子から、色々と話しを聞いているわ。フフッ、アレに似ていないようで、少し安心したわ。ゆっくりして行ってね」

僕の言葉に優美に微笑むと、僕達の横を通り過ぎて去って行った。想像していた人と違って、母様の言う通り優しそうに見えた。

「気を付けろよ。あれは、後で試す気だぞ」

「試すって?」

不思議そう聞くと、うんざりしたように言った。

「最初に姿を見せて、その後の変化に気付けるか試すんだよ。それに気付かないと、変化に気付けないようでは駄目だって、注意されるんだよ…」

兄様から聞いてはいたけれど、本当だったんだ…。

「何で、そんなに厳しいの?」

「何でも、贈り物のドレスと違うドレスをわざとパーティに着て行って、贈った相手に似合うか聞いたらしいんだ。なのに、ドレスが違う事にも気付かずに、似合っているの一言しかなかったんだってさ。だから、そんな男にならないようにって言ってた。全く、誰だよそいつ!」

「……」

犯人に心当たりがあるような気がしたけれど、たぶん僕の気の所為だと思う…。だから、僕は、少し不機嫌そうなバルドに、何も言わない事にした。

「まあ、親父は、観察力を付けるのは良い事だって言ってたから、もう修行だと思うようにしてるけどな」

「普段は、使えなさそうだね」

「そんな事ない!学院を探検した時だって、本棚の異変に気付いただろ!」

あの時の観察力は、ここからだったんだね…。話題が変わった事にも安堵しながら、思った事を言った。

「屋敷だと、母上呼び何だね」

「言葉使いにも気を付けないと、怒られんるだよ!」

僕の言葉に、バルドは少し顔を赤らめていた。

「ネア、遅いな…。ここからなら、馬車が通ったらすぐに分かるんだけどな…」

部屋に付くと、バルドは窓から外の様子をしきりに確認していた。

「席を外している間も、馬車が通った音はしなかったですよ」

部屋で本を読んでいたコンラッドが、バルドに返事を返しながら視線を外へと向ける。そのせいか、僕の視線も、自然と外に向きながらネアが来るのを待った。

「此処が、息子の部屋よ。続きは、夕食の席ででも話しましょう。遠慮せず、ゆっくりして行ってね」

そんな僕達の耳に、誰かの話声が聞こえた。その後、部屋をノックする音がして視線を向けると、待っていたネアが部屋に入って来るのが見えた。

「邪魔している」

「何時の間に来たんだ!?馬車の姿は見かけなかったぞ!?」

「馬車なんか使うか。歩いて来たに、決まっているだろう」

「此処まで、どうやって来たんだよ!」

「夫人から案内して貰った」

「大丈夫だったのか!?」

バルドが、心配したように、ネアに駆け寄る。

「何がだ?」

「母さんに捕まって、無事だったか」

バルドの言葉に、ネアは不思議そうな顔をしていた。

「何もなかったが?」

「そんなわけないだろ!!捕まると長いんだからな」

「ああ、そういうのには慣れている。商会にいるなら、客を褒めるのは必須スキルだと、無駄に叩き込まれたからな……」

ネアの家は、商会をしているんだったけ、それなら納得だな。うんざりしたような顔を浮かべるネアを見ていると、再び部屋をノックする音が聞こえた。

「失礼致します。お荷物は、どちらに置けば宜しいでしょうか?」

「荷物?」

バルドが不思議そうに聞いてる間に、使用人達が荷物を部屋へと運び入れる。

「何だ!この荷物!?」

「僕の荷物…お土産…」

驚くバルドに、少し気不味くなりながら言った。

「これ全部!?」

「父様と母様が持って行きなさいって…」

みんなは、部屋に運ばれて来る荷物を唖然とした顔で見ていた。
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