落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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二章

番外編 ギャラリー(レオン視点)

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「なるべく、アルの息子とは仲良くするようにしてくれると助かる。喧嘩でもしようなら、どんな報復をしてくるか、予想が出来ない」

オルフェと会った後、父上から部屋に呼ばれてそう言われた。だけど、父上に言われなくても、仲良くするつもりだった。でも、オルフェの好きな事が分からない俺は、まずは自分の好きな事に誘って見る事にした。

俺は、オルフェの屋敷を尋ねて行った。屋敷の使用人に、何処にいるのか訪ねたら、書庫にいると言われた。案内されて向かえば、オルフェは1人、椅子に座って本を読んでいた。

「オルフェ!模擬戦しないか!?」

「何故だ?」

「オルフェと、仲良くなりたいからだ!」

「私は、仲良くする気はない」

本に視線を戻され、俺の誘いはあっさりと断られてしまった。今まで、誘いを断られた事がなかった俺は、どうやって誘ったらいいか分からない。だから、父上達のやり取りを参考にしてみる事にした。

「模擬戦に付き合ってくれたら、有給休暇を出す!」

「はぁ?」

その時のオルフェの呆れたような顔は、今でも忘れずに覚えている。あの頃は、有給休暇を出すと言えば、頼み事は聞いて貰えるものだと思っていた。だから、その後も父上達の会話を参考に誘っていたら、呆れたようにしながら、最後は模擬戦に付き合ってくれた。

後日、父上にその事を話したら、何とも複雑そうな顔をしていた。

今まで騎士団の訓練に混じって稽古を付けて貰う事はあっても、同年代の奴とはやった事はなかった。だけど、同年代に負ける気はなかったし、負けるとは思っていなかった。でも、オルフェには届かず負けてしまった。

負けたのが悔しくて、他の同年代の奴と模擬戦の稽古をしてみたが、手を抜いて勝ちを譲っているのが何となく分かって、勝っても何も楽しくはなかった。

真剣に勝負してくれるオルフェに勝ちたくて、何度も模擬戦に誘った。でも、オルフェに弟が生まれてからは、魔力制御の修練で忙しいと断られるようになった。

オルフェの言葉に嘘はなかったけど、そんな事をする必要もない技量を持っているのに何で?という疑問が残った。もしかして俺は、避けられているんだろうか…?仲良くなりたくて始めた事だったのに、返ってオルフェに避けられるようになった。

それからは、稽古以外の口実を見つけては、オルフェを誘ったけれど、初めて会った日から感じる壁は、そのままだった。その日も、勉強を教えて貰う事を口実に、オルフェの屋敷を訪ねていた。

「オルフェ!宿題手伝って!!」

「自分でやれ」

「そこを何とか!!」

「はぁ…。なら、保管庫に置いてある教本を持って来るなら、手伝ってやる」

「分かった!」

部屋を飛び出してから、保管庫の場所を知らない事に気が付いた。近くにいた使用人に尋ねれば、変わりに持って来ると言われたが、俺はそれを断り、保管庫を目指した。

「ここか?」

目の前に見えた大きな扉を開けてみると、そこには、多数の肖像画が飾られていた。

「此処は、ギャラリーか?それにしても、今と全く変わってないな」

俺は、ギャラリーに飾られた、オルフェの肖像画を眺めながら、出会った時の事を思い出していた。段々と幼くなって行くオルフェの絵を順番に眺めながら、あまりの変わらなさに笑っていた。そうしたら、一枚の絵が目に入った。

「遅かったな?使用人に、頼まなかったのか?」

俺が部屋に戻ると、不思議そうにオルフェから訪ねられた。

「いや。別な物見てたら、遅くなった」

「別な物?」

怪しむような目で俺の事を見て来るけれど、今の俺は全く気にならなかった。

「ギャラリーにあった、うさぎの人形を抱っこして…グハッ!」

「忘れろ!今すぐに忘れろ!!」

笑いながら言ったのが駄目だったのか、顔を赤く染めたオルフェから、おもいっきり殴られた。

その後、父上からは、俺がギャラリーの絵が撤去される理由を作ったという事で、オルフェの父親が、仕事放棄したと怒られた。すぐに謝りに行けと言わて、俺はもちろん謝りに行った。

「絵を見て笑ったのは、馬鹿にしたわけじゃなくて、意外な一面が知れて嬉しかったというか、身近に感じたというか…と、とにかく、不快にさせたなら悪かった!」

「殴った私を…責めないのか…?」

下げた頭を上げると、伏し目がちにしながら、オルフェがこちらを見ていた。

「?誤解を招くような事をしたのは俺だから、殴られても仕方ないだろ?」

「お前は…」

俺の方を見ながら何かを言いかけて、言葉を止めた。眉間にシワを寄せた後、呆れたような顔をしながら、こちらへと視線を向けた。

「はぁ…。わ、私も、急に殴ったのは、悪かった…」

途中、気不味そうに視線を逸らしながらも、オルフェが俺に謝ってきた。

「許してくれるのか!?それなら、ギャラリーの絵も、戻してくれるよな!?」

「それとこれとは、話が別だ」

さっきまでの、気不味そうな様子は消え失せ、何時ものオルフェに戻っていた。

「それだと、俺が怒られる!!」

「知るか」

その後、父上から再度叱られたが、オルフェとの間にあった壁は無くなっていた。それからは、テスト勉強や稽古なども、俺に付き合ってくれるようになった。

たまに飛んでくる手はかなり痛いが、俺にこんな態度取って来るのは、オルフェだけだ。だからこそ、オルフェの前では、ただのレオン・エクスシアでいられる。

でも、もう少し殴るのを手加減してくれてもいいんだぞ?処理が終わっていない書類を片手に、そっと心の中で告げるのだった。
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