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三章

後始末(アルノルド視点)

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今まで煩く騒いでいたのに、私が発した言葉を聞いた瞬間、何故か意識を失ってしまった。

「炭になったも折れなかった心を折るとは、流石です」

「私は、対した事を言っていない。私が何かしたかのように言うな」

学院から呼び出した部下を、睨みつけるように見ても、どこ吹く風で平然としている。

何か合った時のため、学院で教師をさせていた。今回も、リュカが学院にいない事を、すぐに報告して来たからこそ、迅速に対応する事が出来たのだが。

「親子揃って、壊すが本当に得意ですね。ああ、掃除もお得意でしたね」

「……」

「掃除が得意なら、残さず消して頂いたようが楽でした。あの場にいた、学院関係者を誤魔化すのは、骨が折れました」

「嫌味か…」

「嫌味に聞こえるなら、そうだと思いますが?」

コイツは、優秀で公正だが、口が悪い。私に対しては、礼を見せるが、他の者に屈する事がない。だが、貴族の特権を振りかざすだけの子供には、ちょうどいい。

「口は、相変わらず治らないな」

「手本が、目の前にありますので。それで、これはどうやって処分する予定ですか?」

「処分はしない」

「それは、珍しい」

白々しい声と態度で言って来る所も、相変わらず癪に触る。

「リュカが、心配している。だから、生存確認を求められても、見せられる状態で止めるつもりだ」

「なら、ここから制裁を加えるのは、止めておいた方が宜しいかと」

「私に、何もするなと言いたいのか?」

「壊れていて困るのは、そっちです」

「「……」」

しばらく、睨み合っていたが、先に折れたのは私だった。

「はぁ…。分かった…」

非常に不満だったが、衛兵に連れ出されるのを、大人しく見送らなければならなかった。

「本当に、アレの記憶にないのですか?」

「オルフェの時に、目障りな虫としては、認識していたが、その前はない。それより、今回は、助かった。礼を言う」

「いえ、午後になるまで気付かず、申し訳ありません」

「他の教諭には、報告義務もないのだから、仕方がないだろう」

私も、学院を抜け出すとは思っていなかった。だから、この者の授業がある日だっただけでも幸運だった。

「学院での、リュカの様子はどうだ?」

「誰かに似て、問題を起こすのが好きなようで、友人たちと楽しそうにしています。しかし、こちらが手を尽くしても、成績に改善はみられない。自分の無能さを晒しているようで、ため息の日々ですよ」

「リュカは、覚えるのが苦手だからな」

屋敷でも、苦慮している姿を見かける事がある。

「何かと、迷惑を掛けるかもしれないが、よろしく頼む」

「畏まりました」

頭を下げた部下に身送られながら、その日は、家族が待つ屋敷へと帰った。

「報告内容は以上だ」

次の日、仕事中だったのと、色々と隠蔽工作もした事もあって、レクスには顛末書として最初から報告を上げる必要があった。

「これに付き合わされた、スクトール伯には、同情するな…」

「何故だ?」

「地位も、役職も上の人間達に、周りを取り囲まれるなど、哀れと言うしかないだろう…」

だが、戦闘力が低い人間を真ん中にするのは、守る観点を考えても定石だ。私の場合に置き換えて考えてもみたが、王族に囲まれたとしても、何も感じる所はない。

「私は、何とも思わない」

「お前はな…」

私の言葉に、諦めたような顔をしていた。だが、息子達の安全が掛かっているのだから、危険がないように、完璧な警護体制で挑む必要があった。

私達が魔力感知を行い、ベルンハルト達に気配を探って貰った。それでも、念には念を入れて召喚獣達に、空と匂い、熱感知で周りを探らせた。だから、スクトール伯の協力は必要だった

「そもそも、街のゴロツキを相手にするのに、宰相と騎士団長、第一部隊隊長に、次期宰相候補って何の冗談だ?」

私の顔を見ながら、呆れたように言ってくる。

「戦力は多い方が、何が起こっても万全を期す事が出来る」

「戦力過多だ!何処と戦争する気だ!?」

「さすがに、街中ではしない」

「外でもするな!」

何をそんなに怒っているのか理解できない、何も問題も起きず、治安も良くなったのだから、文句を言われる筋合いはない。

「そもそも、お前、何時の間にベルンハルトと仲良くなったんだ?」

「私は、最初から何も思っていない。向こうが、昔の事を未だに根に持っているだけだ」

「アイツは、頭が硬いからな…。私に対しても、未だに当たりが厳しい時がある…」

確かに、罠にはめたが、最後は全て丸く収まった事に、何の不満があると言うんだ。

「それなら、お前からの頼みを聞くとは思わないんだが?」

レクスが、不思議そうに訊ねてきた。私は、その時の事を思い出して、表情が曇る。

「ラザリアに…頼んだ…」

「え!?アル…。良く頼めたね…」

「それが確実だった…」

レクスが、驚きを隠せない顔で言うが、私とて、会いたくなどなかった。

「貸し一つだと言われた…」

「それは…高く付いたね…。身内も関わっているのに、相変わらず抜け目がない…」

私がいるだけで、問題ないと判断したんだろう。そもそも、あの計画には、彼女も関わっていたというのに…。

ため息を付きたいのを我慢しつつ、もう一つの方も、今のうちに片付けておく事にした。

「お前の妹は、今、どうしている?」

「さあ、王都に帰って来ていれば、私の所にも連絡は来るだろうが、手紙も寄越さずに、自由気ままに行動しているから、私も把握していないんだよ」

レクスからは、あっさりとした答えが返って来た。どうせ、心配するだけ無駄だと思っているのだろう。

「お前の息子にそっくりだ」

「本当に、妹に似ているから、困ったものだよ…」

困ったように私を見るが、自分の子供なのだから、自分で何とかしろ。

「連絡が来たら、私にも、知らせてくれ」

「それはかまわないが…どうかしたのか?」

少し、警戒心を滲ませた声で訪ねてくる。

「何もない。少し、頼み事があってな。何時、連絡が取れるか分からないから、頼める時に頼んで起きたいだけだ」

しばらく、こちらを伺うように見て来たが、1度目を閉じると、何時もの表情に戻っていた。

「そうか、分かった。知らせが来たら、アルにも知らせるようにするよ。それで、昨日、私に放り投げた案件なんだが…」

用事が全て終わったは私は、早々に部屋を後にした。
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