落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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二章

お兄さん

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「始まる前に、兄貴の所寄っても良いか?」

大会初日、会場前に集合した僕達は、バルドの提案で控室へと向かった。

「ねぇ?バルドのお兄さんって、どんな人なの?」

「ん?俺の兄貴は、頼りになるぞ!」

「一言で言うなら、バルドの兄です」

ごめん。その説明だと全く分かんない。

「兄貴とは、昔から色んな事して遊んで貰ったんだ!その度に、怒られたんだけど、何時も兄貴が庇ってくれたんだぞ!」

「昔から、変わらなかったんですね…」

もう少し詳しく聞こうと思っているうちに、選手の控室がある場所まで来ていた。近くにいた職員に、どの控室にいるのをリオ先生が尋ねてくれて、案内して貰った。

「どの人?」

控室には5人の人がいて、会った事がない僕は、誰がそうなのか分からない。

「いた!兄貴!!」

バルドの声に気付いた1人が、こちらを振り向いて、笑顔を見せた。

「遅かったな!新しい友達って、その2人か?」

「うん!2人共、俺の兄貴だ!」

「兄のクリス・グラディエスだ!よろしくな!」

カールがかった金髪の髪に、深緑色の目をしていて、黙って立っていたら儚げな美少年に見える。性格はともかく、想像していた姿とは全く違っていた。

「似てないね?」

お互い挨拶を交わした後、思った事が口に出た。

「俺は、祖父に似たらしいな。髪は母さんと一緒なんだぜ」

髪をつまみながらおどけたように言う様は、見た目とのギャプがあって違和感を感じる。

「私がいない方が、気兼ねなく話せると思うので、少し席を外しますね」

「分かりました」

先生がいなくなったのを確認すると、楽しそうな顔をしながら、僕の方を振り向いた。

「弟から、色々聞いてるぞ!夜に、学院の森に忍び込もうとするとか、なかなかやるな!」

僕は別に、忍び込もうとはしていないし、褒められても何も嬉しくない…。

「その後、かなり怒られたけどな…」

「ハハッ!怒られてなんぼだろ!人生、楽しんだもん勝ちだ!」

「おお!なんか、格好いい!」

「怒らる事は、しない方がいいんじゃないかな…?」

巻き込まれるのは遠慮したくて、控えめに止めてみたけど駄目だった。

「何言ってるだ!やべぇ事をやってる時が、1番楽しいだろ!」

「確かに!」

「ねぇ…。バルドの兄でしょう…」

確かにバルドの兄だった。それに、2人の会話を聞いていると、付き添いがないと駄目な理由が、何となく分かるような気がする。

「来るとは聞いてたけど、まさか、教師と来るとはな!」

「親父が一緒に来れば、何も問題なかったのに…」

「そう言うなって、今回は親父にも事情があるから、悪く思うなよって、兄貴が言ってたぞ」

「事情って何だよ」

「さあ?兄貴からは、そこまでは聞いてないからな。俺に言うと、公然の秘密になるから言えないって言われた」

まるで他人事のように笑って話す様子に、貴族として、それで大丈夫何だろうか…。

「それより、弟の友達が来てるなら、恥ずかしい所を見せないようにしないとな!」

「兄貴なら大丈夫だって!」

「難しいと思うぞ」

「ネア!」

応援に来ているのに、逆の事言ってどうするの!

「まあ、別に間違ってないしな。兄貴みたいに、もう少し体格があれば違ったんだろうけどな」

僕達よりも大きいけれど、他の参加者と比べると、少し小柄には見える。小柄だと、やっぱり不利になったりするのだろうか?

「お兄さんも、出た事あるの?」

「おぅ!兄貴は、初参加で優勝したんだぜ!それからも、毎年優勝して、今は騎士団で隊長もやってるんだぞ!」

「凄いんだね!」

「おぅ!俺の憧れなんだ!さすがに、親父や兄貴みたいには無理だけど、俺なりに出来る所まではやってみたいからな!」

失礼な発言を受けても屈託なく笑う様子に、兄様とは違った意味で、凄いなと思った。

その後もしばらく色々な話をしていると、リオ先生が迎えに来た。

「そろそろ、客席の方に行きませんか?」

控室を後にした僕達は、先生の後に付いて行きながら、会場の客席へと向かった。だけど、まだ予選とあってか、そこまで人はいなかった。

「席は決まってるの?」
 
「決まっていないので、好きな所で見ていいらしいですよ」

「そうなのか?なら、1番前!」

前の方に走って行ったバルドは、空いている席を見つけて僕達を待っていてくれた。

前に来た時は、席も決まっていたし、距離が遠かったから気付かなかったけど、会場は思ったよりも広かった。席に座って少しすると、試合が始まったようだったけれど、僕はほとんど見ていなかった。

「リュカ?試合、見ないのか?」

試合中、違う方向を見ているせいか、バルドが不思議そうに聴いてきた。

「ごめん…。僕、苦手…」

「そういえば、そんな事言ってたな。怪我するのが、駄目何だっけ?」

「怪我したら痛そうなのもそうなんだけど、ハラハラして落ち着かないから…」

「そこが楽しいと思うけど、人それぞれだしな」

「でも、ちゃんと応援はするから!」
    
「そこは、頼むな!」

僕は、お兄さんの順番が来るまで、試合の様子をみんなから教えて貰いながら過ごした。
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