落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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二章

行くために

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次の日、教室に行くと、何処か元気のなさそうなバルドがいた。

「大会、見に行けないかもしれない…。親父が行くけど、行けないって言ってた…」

「どういう事?」

要領を得ない説明で、何が言いたいのかが分からない。

「会場で見てはいるけど、警護任務があるから一緒には無理だって…」

「仕事なら、仕方ないんじゃないですか?それが、行けない事と何か関係あるんですか?」

「だから、俺達だけで行こうと思ったんだ!だけど、付き添いがないと駄目だって言うんだよ!前回みたいに、禁止区域に入られたら困るって!たぶん、入らないのに!」

前回の事で、信用がなくなったんだね…。それに、たぶんって事は、バルドも自信がないんだ…。

「誰か、他に頼める人いないの?」

「聞いたけど、予定があるみたいで駄目だった…」

バルドの落ち込みようを見ていると、さすがに厳しすぎるような気がする。たとえ、前にやらかしたとしても、付き添いがないと、駄目ってのはやり過ぎじゃないかな?

「そんなのは無視して、俺達だけで行けば良いだろう」

「前回の事があるので、勝手な事をするのはどうなんでしょう…。私の両親に、聞いてみましょうか?」

「頼む!」

落ち込むバルドを見るに見兼ねて、コンラッドが助け舟を出した。僕の父様は忙しいそうにしているけれど、優しいから、もしかしたら付き添ってくれるかもしれない。

「僕も、駄目もとで父様に聞いてみようか?」

「頼む!」

「ご一緒出来るなら、是非、私からもお願いしたいです!」

「う、うん…」

当人よりも、コンラッドの方から強くお願いされた。

屋敷に帰った僕は、父様に聞いてみたけれど、僕が期待するような答えではなかった。

「ごめんね。その日は、付き添っては上げられないかな」

「それなら、私が一緒に付いて行くから問題ない」

父様の変わりに、兄様が名乗りを上げてくれた。

「その日、オルフェに、少し頼みたい案件があるんだよ」

「……」

兄様から向けられる冷たい視線を受けて、父様は何処か気まずそうにしながらも、言葉を続けた。

「案件の説明したいから、後で執務室に来て欲しい」

「…分かりました」

「そういう事だから、今回はごめんね。リュカ」

「はい…」

兄様は不満そうだったけど、2人が忙しいのは知っているので、断られた以上は、もう頼めなかった。

「ごめん…。やっぱり、無理だった…」

教室で、昨日の件を報告したけれど、予想してた答えだったからか、そこまでがっかりされなかった。

「2人は、どうだったの?」

「すみません。私の家の無理でした。何故か、その日は予定があるとかで…」

「ネアは?」

「聞いてない」

「聞いて来いよ!」

「付き添いなど、頼める訳がないだろう」

何処か苛立ちながら言うネアの様子に、前、行った時の事を思い出して、それ以上聞けなかった。

「どうするか…」

何も解決策が浮かばないまま、時間だけが過ぎて行く。

「だから、俺達だけで行けば良いだろう」

「私達は良いですよ。怒られるのはバルドだけですからね…」

「あーー!!」

頭を抱えるバルドに、一番簡単な解決策を言ってみる。

「諦める?」

「絶対行く!」

バルドに聞いてみたけれど、予想通りの答えが返って来た。こうなったら、怒られるの覚悟で、ネアの言う通り僕達だけで行くしかないかな?

「どうかしたんですか?」

僕達の話し声を聞いたのか、リオ先生が昨日と同じように声を掛けて来た。僕は、何が会ったのかを全部、リオ先生に説明した。

「それなら、私が付き添いますよ」

「良いんですか!?」

先生の思わぬ発言で、問題が一気に解決しそうで、期待が高まる。

「はい。頼って下さいと言ったのに、あまり役に立てませんでしたからね」

「そんな事ないですよ」

何処か申し訳なさそうにしているけれど、そもそも、頼るような事も特になかったしね。

「でも…商会の金を使って、成績を買ったなんて、不当な手紙が届いた時も、何の力になれませんでした」

「それなら、犯人はもう分かってるって、父様が言ってたから大丈夫です」

「犯人が…分かってる?」

少し驚いたような態度に、僕は疑問に思う。父様は、僕だけじゃなくて、先生の所にも犯人の事を伝えていないのかな?

「はい。今度、何かあったら、相手とちゃんとお話するって言ってました」

「そうなんですか。それなら、安心ですね」

「はい!」

何の問題も無くなった僕達は、早速、待ち合わせの場所や時間を決めることにした。
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