上 下
92 / 227
二章

学期末

しおりを挟む
「バルド。リータス先生に八つ当たりする前に、学期末に赤点を1つでも取ったら、補習があるので長期休みは遊べませんよ?ちゃんと勉強はしているんですか?」

「え…?そんなの…あったっけ…?」

「えっ…。僕でも覚えてるよ…。やってないの…?」

「……」

ポカンと口を開けている様子を見る限り、全くやってないんだろうな…。

その後、バルドの声にならない悲鳴が、教室に響き渡った…。

「父様?ちょっと聞いてもいい?」

夕食後、少し聞きたい事があった僕は、部屋に戻ろうとしていた父様を呼び止めた。

「ん?何かあったかな?」

「前に、友達が不正をしたって、置き手紙があって騒ぎになった事があったでしょ?それの犯人って、誰だが分かったのかなって?」

教室では、あんな事言ったけど、屋敷に帰って来てから冷静に考えてみたけど、さすがにそれはないかな?と思い直した。でも、犯人が誰なのかは気になる。それなら、何か情報を持っているかもしれない父様に、聞いてみる事にしたのだ。

「分かっているよ?それが、どうかしたのかな?」

「えー!!だ、誰が犯人だったの!?」

父様は、何でもないような顔をして言うけど、分かったなら僕にも教えてよ!

「んー…。それはちょっと、教えられないかな…。でも、昨日も忠告をして来たから、心配はしなくても大丈夫だよ。あれで理解できないようなら、ちゃんともするから、ね?」

結局、最後まで、父様からは誰が犯人か教えて貰えなかったけど、すでに犯人が分かって、対処もしているなら、もう大丈夫かと気にしない事にした。

次の日、教室に行くと、昨日とは違った意味で、バルドの様子がおかしかった。

「えっと…。今日のバルドは、どうしたの?」

「補習を受けたくないから、必死に勉強しているんです。なので、そっとしておいてあげて下さい…」

確かに、教科書を開いているけど、勉強していると言うより、教科書とにらめっこをしているようにしか見えない。

「それとね、昨日、父様に確認したんだけど、手紙の犯人は、もう分かってるんだって」

「誰だったんですか?」

「それは、教えて貰えなかったけど、ちゃんと忠告もしたし、もしもの時は、その人とお話しするって言ってたよ」

「そうですか。それなら、安心ですね。それにしても、さすがはアルノルド様ですね。あの紙1枚で、犯人を見つけてしまうのですから」

「そうだね。でも、ネアも、これで安心でしょ?」

「そうだな…」

当事者のネアは、何故かそこまで嬉しそうではなかった。それにしても、僕達が話していた間も、バルドの勉強が進んでいる様子はなく。本当に、試験大丈夫何だろうか…。

試験日が近付くにつれて、バルドを心配している余裕はなく、僕も必死になって勉強をしていた。

試験当日、最後の答案用紙を返し終わった後は、やり切った感で僕は脱力していた。赤点だけは取らないように頑張っていたから、たぶん赤点はないと思う。

自分の席からバルドは、どうだったのかと思って見て見たら、燃え尽きた人みたいになっていた。

いよいよ長期休みに入る頃、試験の結果が返って来た。

バルドは、返って来た試験結果の紙を見て、呆然としていた。手に持っていた紙を、コンラッドが抜き取って紙に目を通すと、同情したような視線を向けた。

「バルドにしては、頑張ったと思います…」

僕も、横から覗き込むようにして見れば、苦手科目の点数が、少し足りていなかった。

「リュカは!?」

僕の方を振り返りながら、仲間を探すような視線を向けてくるけれど、その期待には答えられそうにない。

「僕は、ギリギリセーフ!」

「ネアやコンラッドは!?」

「私が、赤点なんて取る訳がないでしょう…」

「俺もない」

「俺だけかよ!」

入学試験で、主席や次席を取るような2人が、赤点なんか取る訳もなく、バルド1人だけ補習が確定した…。

「長期休みに、行きたい所とかはないかな?」

嘆くバルドを宥めながて屋敷に帰ると、夕食の席で父様から長期休みの事に付いて聞かれた。だけど、バルドの事を思うと、何だか少し悪いような気もする…。

「行きたい場所はあるけど…。友達が補習する事になったのに、遊びに行っていいのかな…」

「リュカが、赤点を取った訳じゃないのに、何を気にする必要があるのかな?」

「それは…そうなんだけど…」

不思議そうにしている父様に、僕は何と説明すればいいのか分からない。

「リュカ。逆に考えればいいんじゃないかしら?」

「逆に?」

「行けないから、変わりにお土産を買って来ると考えれば、少しは友達に対する罪悪感も減るんじゃないかしら?」

僕は、母様の言葉に感動した。そう思えば、僕も遊びに行く事が出来る!

「はい!そうします!!」

バルドに、この事を伝えたら、ずるい!でも、お土産はよろしく!と言われた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

この度神様を辞めて、地上に降りました。執着系武神様と無双旅をします!

yun.
ファンタジー
人間から、天使になり100年。 それから神に昇格して早5000年。 そろそろ、飽きました! 後任は育てたので、私は地上へ降ります! そう宣言し、転生したのはエルフ。 最長1000年生きれるでしょう。 神様として頑張ってきた5000年ほど自由に生きたかったのですが、仕方ありませんね。 私は地上で、美味しいものを食べて、いろんなところを旅して、いろんな景色を見てきます! と意気揚々と降り立ったのだが、武神は追いかけてくるし、人助けしまくっていたら、神と呼ばれるし。 それでも、今日も楽しいです! 2022.7.4 タイトル変更しました。 旧 拝啓 この度神様やめました。

異世界転生~目指せ!内乱を防いで、みんな幸せ♪

紅子
ファンタジー
いつの間にかこの国の王子に転生していた俺。物語の世界にいるなんて、想定外だ。このままでは、この国は近い未来に内乱の末、乗っ取られてしまう。俺、まだ4歳。誰がこんな途方もない話を信じてくれるだろうか?既に物語と差異が発生しちゃってるし。俺自身もバグり始めてる。 4歳から始まる俺の奮闘記?物語に逆らって、みんな幸せを目指してみよう♪ 毎日00:00に更新します。 完結済み R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。 ところが、闇属性だからと強制転移されてしまう。 頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険が始まる。 強力な魔物や冒険者と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指す。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...