63 / 242
二章
厄介な相手
しおりを挟む
「学院は、どうだった?仲良くなれそうな子はいたかな?」
夕食の席で、父様から学院での様子などに付いて聞かれた。
「うん…。ネアって言う赤髪の子からは…よろしくって…言われたよ」
「赤髪…?」
「うん。最初、教室が分からなくて迷子になってたんだけど、途中で会った鷹が案内してくれてね。それを追いかけてたら、その子にぶつかって知り合ったの…」
「鷹…ねぇ…。アル。この後、話しがあるんだけど、いいかしら?」
「はい……」
父様が、何処かばつが悪そうにしているけれど、何か余計な事言ったかな?それにしても、明日もネアに会うかと思うと、2日目で学院に行くのが嫌になるんだけど…。
次の日は、昨日と違って、道に迷う事もなく、教室へと着く事が出来た。僕が、教室の扉を開けると、ネアが既に来ており、誰かと話しているのが見えた。
「おぅ!おはよう!お前の友達、話し分かるな!!」
だから…ネアは友達じゃない…。視線が合った途端に、話しかけられながら、昨日の記憶を思い出す。
「えっと…グラディエスであってる?」
たしか、自己紹介の時にそう言っていた気がする。
「バルドで良いって!俺もお前の事、リュカって呼ぶから!それに、これから同じクラスなんだし、仲良くしようぜ!」
何だか、ネアと同じようなタイプが、また増えたんだけど…。
グラディエス家の名前は、フェリコ先生の授業でも、たまに聞いていた。騎士になる者が多く、歴史の教科書にも乗っている人がいるから、自己紹介の時にも印象に残っていた。
短く刈り上げられた黒髪に、燃えるような赤い眼をしていた。浮かべる笑顔からは、人懐っこそうな印象を受けるせいか、僕との間に体格に差があっても、威圧感を感じなかった。
「よ、よろしく…」
「バルドとは、よろしくしない方が良いですよ」
突然聞こえて来た声に振り向けば、スクトールが教室に入ってくる所だった。
「コンラッド!おはよう!」
「レグリウス公爵。昨日も言いましたが、付き合う相手は考えた方が良いですよ。だから、バルドとも関わらない方が良いです」
バルドが挨拶をして来ても、普通に無視して、僕に話しかけて来た。でも、お互いに名前呼びしてるって事は、親しい間柄なのかな?
「コンラッド酷くねぇ!?それが、幼馴染に言うセリフか!?」
「貴方を、幼馴染と認めた覚えはないですね。そもそも、毎回、私の家に無断で侵入して来ているだけでしょう」
「だって、俺が行かなきゃ来ないだろ?」
「会いたくないから行かないんですよ…。はぁ…貴方と家が隣なのが、本当に嫌です…」
昨日のきつそうな様子とは違って、何だか今日は、苦労人みたいに見える。
「お前ら、幼馴染なのか?」
僕も、疑問に思っていた事を、ネアが先に訪ねた。
「違います!コイツが3歳の時に、私の家に無断で侵入して以来、ずっと勝手に侵入して来るだけです!」
「あの時は、家にいるのに飽きて、庭で遊んでたら、抜け道見つけて入ってたんだよな~。あの後、さすがに親父から鉄拳制裁食らったけど、今ではいい思い出だよな!」
「それは、貴方だけです…。せめて、来るなら門の方から来て下さい…」
「え?門から入るより、抜け道の方が近いだろ」
「分かるでしょう…。こういうのに関わると、苦労しかしないという事が…。だから、付き合う者は考えた方が良いと言ったんです…」
何処か、疲れ切ったように言う様子には、何とも言えない説得力があった…。
「コンラッドは、見た目きつそうだけど、優しい所あるんだぜ。だから、昨日の件は気にするなよ。コンラッドは、リュカの父親や兄貴に憧れて頑張って勉強してたんだよ。それで、お前が入学するって聞いてさらに頑張ってたのに、その相手に情けをかけられたのかと思って、勝手に怒ってただけだから」
「バルド!!」
「え?事実だろ?誤解だったから謝りたいって、昨日言ってただろ?」
「貴方には、デリカシーが無いんですか!?」
「え?何それ?」
ハルドの言葉に、コンラッドは最初、顔を赤めて怒っていたけれど、最後の言葉で、脱力したように力なく項垂れていた。
「はぁ…。貴方に言った私が馬鹿でした…。レグリウス公爵。昨日は、学院にも確認をして、私の勘違いだったと知りました。本当に、無礼な物言いをすみませんでした。それと、ネア。あなたを嘘つき呼ばわりしてすみません」
スクトールは、僕達2人に、頭を下げて謝罪してくれた。
「別に良いよ。それより、公爵呼びは何だか落ち着かないから、名前で呼んで欲しいな。僕も、コンラッドって呼んでいい?」
「はい。構いません。私も、リュカと呼ばさせて貰います」
「なら、俺もそう呼ぶ事にする。それと、俺は別に最初から気にしてなかったから、謝罪は必要ない」
「お前心広いな!」
「だろ」
「お互い、厄介な相手に目を付けられて、苦労しますね…」
横で意気投合している2人を見ながら、僕達はお互いにため息を付くのだった…。
夕食の席で、父様から学院での様子などに付いて聞かれた。
「うん…。ネアって言う赤髪の子からは…よろしくって…言われたよ」
「赤髪…?」
「うん。最初、教室が分からなくて迷子になってたんだけど、途中で会った鷹が案内してくれてね。それを追いかけてたら、その子にぶつかって知り合ったの…」
「鷹…ねぇ…。アル。この後、話しがあるんだけど、いいかしら?」
「はい……」
父様が、何処かばつが悪そうにしているけれど、何か余計な事言ったかな?それにしても、明日もネアに会うかと思うと、2日目で学院に行くのが嫌になるんだけど…。
次の日は、昨日と違って、道に迷う事もなく、教室へと着く事が出来た。僕が、教室の扉を開けると、ネアが既に来ており、誰かと話しているのが見えた。
「おぅ!おはよう!お前の友達、話し分かるな!!」
だから…ネアは友達じゃない…。視線が合った途端に、話しかけられながら、昨日の記憶を思い出す。
「えっと…グラディエスであってる?」
たしか、自己紹介の時にそう言っていた気がする。
「バルドで良いって!俺もお前の事、リュカって呼ぶから!それに、これから同じクラスなんだし、仲良くしようぜ!」
何だか、ネアと同じようなタイプが、また増えたんだけど…。
グラディエス家の名前は、フェリコ先生の授業でも、たまに聞いていた。騎士になる者が多く、歴史の教科書にも乗っている人がいるから、自己紹介の時にも印象に残っていた。
短く刈り上げられた黒髪に、燃えるような赤い眼をしていた。浮かべる笑顔からは、人懐っこそうな印象を受けるせいか、僕との間に体格に差があっても、威圧感を感じなかった。
「よ、よろしく…」
「バルドとは、よろしくしない方が良いですよ」
突然聞こえて来た声に振り向けば、スクトールが教室に入ってくる所だった。
「コンラッド!おはよう!」
「レグリウス公爵。昨日も言いましたが、付き合う相手は考えた方が良いですよ。だから、バルドとも関わらない方が良いです」
バルドが挨拶をして来ても、普通に無視して、僕に話しかけて来た。でも、お互いに名前呼びしてるって事は、親しい間柄なのかな?
「コンラッド酷くねぇ!?それが、幼馴染に言うセリフか!?」
「貴方を、幼馴染と認めた覚えはないですね。そもそも、毎回、私の家に無断で侵入して来ているだけでしょう」
「だって、俺が行かなきゃ来ないだろ?」
「会いたくないから行かないんですよ…。はぁ…貴方と家が隣なのが、本当に嫌です…」
昨日のきつそうな様子とは違って、何だか今日は、苦労人みたいに見える。
「お前ら、幼馴染なのか?」
僕も、疑問に思っていた事を、ネアが先に訪ねた。
「違います!コイツが3歳の時に、私の家に無断で侵入して以来、ずっと勝手に侵入して来るだけです!」
「あの時は、家にいるのに飽きて、庭で遊んでたら、抜け道見つけて入ってたんだよな~。あの後、さすがに親父から鉄拳制裁食らったけど、今ではいい思い出だよな!」
「それは、貴方だけです…。せめて、来るなら門の方から来て下さい…」
「え?門から入るより、抜け道の方が近いだろ」
「分かるでしょう…。こういうのに関わると、苦労しかしないという事が…。だから、付き合う者は考えた方が良いと言ったんです…」
何処か、疲れ切ったように言う様子には、何とも言えない説得力があった…。
「コンラッドは、見た目きつそうだけど、優しい所あるんだぜ。だから、昨日の件は気にするなよ。コンラッドは、リュカの父親や兄貴に憧れて頑張って勉強してたんだよ。それで、お前が入学するって聞いてさらに頑張ってたのに、その相手に情けをかけられたのかと思って、勝手に怒ってただけだから」
「バルド!!」
「え?事実だろ?誤解だったから謝りたいって、昨日言ってただろ?」
「貴方には、デリカシーが無いんですか!?」
「え?何それ?」
ハルドの言葉に、コンラッドは最初、顔を赤めて怒っていたけれど、最後の言葉で、脱力したように力なく項垂れていた。
「はぁ…。貴方に言った私が馬鹿でした…。レグリウス公爵。昨日は、学院にも確認をして、私の勘違いだったと知りました。本当に、無礼な物言いをすみませんでした。それと、ネア。あなたを嘘つき呼ばわりしてすみません」
スクトールは、僕達2人に、頭を下げて謝罪してくれた。
「別に良いよ。それより、公爵呼びは何だか落ち着かないから、名前で呼んで欲しいな。僕も、コンラッドって呼んでいい?」
「はい。構いません。私も、リュカと呼ばさせて貰います」
「なら、俺もそう呼ぶ事にする。それと、俺は別に最初から気にしてなかったから、謝罪は必要ない」
「お前心広いな!」
「だろ」
「お互い、厄介な相手に目を付けられて、苦労しますね…」
横で意気投合している2人を見ながら、僕達はお互いにため息を付くのだった…。
10
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

なんか黄金とかいう馬鹿みたいなスキルを得たのでダラダラ欲望のままに金稼いで人生を楽しもうと思う
ちょす氏
ファンタジー
今の時代においてもっとも平凡な大学生の一人の俺。
卒業を間近に控え、周りの学生たちは冒険者としてのキャリアを選ぶ中、俺の夢はただひとつ、「悠々自適な生活」を送ること。
金も欲しいし、時間も欲しい。
程々に働いて程々に寝る……そんな生活だ。
しかし、それも容易ではなかった。100年前の事件によって。
そのせいで現代の世界は冒険者が主役の時代となっていた。
ある日、半ば興味本位で冒険者登録をしてみた俺は、予想外のスキル「黄金」を手に入れる。
「はぁ?」
俺が望んだのは平和な日常を送るためだが!?
悠々自適な生活とは程遠い、忙しない日々を送ることになる。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる