上 下
51 / 230
二章

寄り道

しおりを挟む
王都の門まで来ると、馬車が門の前で止まった。外を見ると、何か話をしているのが見えたので、事情でも話しているのだろうか?

しばらく、馬車の中で待っていると、父様が僕達の馬車までやって来た。

「少しだけ寄りたい場所があるんだけど、いいかな?疲れているなら、先に屋敷にまで送らせるけど?」

「少しだけならいいよ。何処に行くの?」

「冒険者ギルドまでね…」

「なら行く!」

冒険者ギルドに、まだ行った事なかったから、喜んで父様に付いて行った。

冒険者ギルドには、多くの人達が出入りしていた。出入りしている人の中には、荒くれみたいな姿をした人もいたけど、だいたいは身だしなみを整えた人ばかりで、中には女性の姿なども見えた。

外観は思っていたよりも、綺麗な外観をしていた。入口には、剣が交差した看板が掲げてあり、何だか、いかにも冒険者ギルドといった見た目だった。

屋根とかは遠目でも見ていたが、中に入るのは初めてなので、ワクワクしながら馬車の中で待っていたが、その期待は直ぐに裏切られた。

「直ぐに終わらせて戻って来るから、ここで待っていて貰えるかな?」

「え…中に入れないの…?」

「ごめんね…。中には、怖い人もいて危ないから、冒険者ギルドは、もう少し大きくなったら行こうね」

父様はそう言って、1人冒険者ギルドへと入っていた。父様の側にいれば、大丈夫そうなのに……。それにしても、父様は何をしに此処にいたんだろう?

「兄様、父様が何で此処に来たか分かりますか?」

若干の不満を感じつつ、疑問に思った事を兄様に聞いてみた。

「だいたいはな…。おそらくだが、依頼不履行に付いてだろうな…」

「不履行?」

「頼んでいた事が、実行出来ていない事だ。毎回、何処かに出掛ける際は、魔物と一緒に盗賊の討伐依頼も出しているんだ。だから、ラクス周囲に盗賊がいるという事は、冒険者ギルドが仕事をしていなかった事になる」

「そうなんだ。でも、実行出来ていないと、どうなるの?」

「普通なら、依頼金の返却がされるが…無理だろうな…」

「何で?」

「それだけ、大金を払っているという事だ。まあ、冒険者ギルドの失態だから、私達には関係はないがな」

「ふ~ん」

それからしばらくして、冒険者達が脇に避けるようにして道が出来ると、中から父様が出てくるのが見えた。

「おかえりなさい!用事終わったの?」

「ああ、伝える必要がある事は、言ってきたから、後は、ギルドマスターがどう行動するかで、対応を決めようかな…」

父様の目が、何だか冷え切っているように見えて、少し怖い…。

「それよりも、屋敷に戻ろうか。私の用事で待たせてしまったが、ここではゆっくり休めないし、お腹も空いただろう?」

父様が、自分の乗っていた馬車に向かおうとした時、冒険者ギルドから1人男性が飛び出して来た。

「お待ち下さい!!」

飛び出して来た男性は、50過ぎの外見で顎に少し髭を生やしていた。がたいが良くて、服の上からでもしっかりと筋肉が付いているのが遠目からでも分かる。その男性が、青い顔をしながらこちらへと走って来た。

「何のようだ…」

「一言、ご家族の方々にも謝罪をさせて頂きたく思い、お時間を頂けないでしょうか!」

「…いいだろう」

その男は、僕達の馬車の前で身を正すと、頭を下げて謝罪して来た。

「私は、この冒険者ギルドのマスターをしているべナルトと言う。この度は、こちらの不手際で多大なるご迷惑をお掛けして、大変申し訳なかった!!」

べナルトと名乗った男性は、そう言って、僕達に深く頭を下げて来たが、僕としては、自分よりも年配の人から、ここまで頭を下げて謝られた事がない。しかも、馬車からも降りないで、馬車に乗ったままな僕は大丈夫なの!?

「え!あの、その、ひとまずは大丈夫だったので、頭を上げて下さい!!」

「そんなわけには行きません!この度は本当に申し訳ない!!」

頭を上げてくれるように頼んでも、相手は頑なに頭を上げようとはしなかった。僕は、いったいどうしたらいいの!?

「…リュカが困っている。頭を上げろ」

兄様が、声を掛けるとゆっくりだが、男性の頭が上がった。

「オルフェ様にも、ご迷惑をお掛けして、申し訳ない!」

「二度目はない…」

再度、兄様に向かって頭を下げるが、兄様には全く動じる気配はない。

「それより、顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」

あまりにも、相手の顔色が悪く、体調も悪そうだったから、僕は心配して声をかけた。

「どうか、そのままでいてくれ……」

そうしたら、何処か感動したような目で、こちらを見てくるので、意味がわからず戸惑ってしまう。

「何時まで、お前の謝罪に付き合えばいい…家族を休ませるために、屋敷へと戻りたいのだが…」

「し、失礼しました!!」

今度は、父様に勢いよく謝り出した。見た目は強そうなのに、随分と腰の低い人何だな。そんな人でも、冒険者のマスターになれるなら、僕だって頑張れば周りを守れるくらい強くなれるかな!?

「父様!父様!」

「?どうかしたかな?」

「僕、強くなって父様や兄様を守れるようになる!!」

馬車から身を出すようにそう告げれば、父様は少し驚いたような顔をした後、笑いながら言った。

「なら、私はもっと強くなろうかな?」

それを聞いていた男の顔色が、青から白に変わったけど、僕何か不味い事言ったかな?

その後も、父様に睨まれながら、母様の方にも謝罪をしていて、体調が悪いのに大変だなと、他人事のように見ていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生勇者は連まない。

sorasoudou
ファンタジー
連まないは、ツルまないと読みます。 「世界を救う見返りにハーレムを要求してるような性根が腐った奴は、ここを放ってどこに行ったんですか。って聞いてるんだが?」 異世界の神々によって創造された『勇者の器』 空っぽの体に転生し宿ったのは、記憶喪失の人違いの魂。 望めば何でも切れる神剣に、容姿端麗の朽ちない体。 極めつけは魅了の眼差し。 神々の加護も人嫌いには呪いでしかない。 絶対に仲間は要らない勝手に魔王倒させて下さいな勇者、一人旅希望です。 注意:紹介文の通り、比較的まじめに異世界を旅してます。 全年齢対象として書いていますが、戦闘場面などが含まれます。 こちらの作品はカクヨムで同時更新しています。 マンガ版を制作中です。表紙やキャラ絵は登場人物にて紹介しています。 更新はのんびりですが、よろしくお願いいたします。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水
ファンタジー
 クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。  神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。  洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。  彼は喜んだ。  この世界で魔法を扱える事に。  同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。  理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。  その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。  ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。  ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。 「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」  今日も魔法を使います。 ※作者嬉し泣きの情報 3/21 11:00 ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング) 有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。 3/21 HOT男性向けランキングで2位に入れました。 TOP10入り!! 4/7 お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。 応援ありがとうございます。 皆様のおかげです。 これからも上がる様に頑張ります。 ※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz 〜第15回ファンタジー大賞〜 67位でした!! 皆様のおかげですこう言った結果になりました。 5万Ptも貰えたことに感謝します! 改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

処理中です...