上 下
45 / 227
一章

末路(アルノルド視点)

しおりを挟む
愚か者を始末し終えた私は、魔力の放出を止めた。すると、それを見計らったように、カルロが私の肩に止まった。

「カルロ、よくやった」

愚か者の元まで案内した功績を讃えながら、体を無でれると誇らしげに胸を張る。私は、その様子を見ながら、今回の事を考えていた。

まさか…こんな事が起きるとはな……。

私は、エレナが寝たのを確認してから1人宿を出て、湖へと向かっていた。リュカが、雪で遊びたいと言ったので、何とか雪で遊ばせてやりたいと思っていたのだ。しかし、さすがの私も、天候を操る事は出来ない。

だから、私なりに、どうすれば雪を降らせる事が出来るかと考え、この町、ラクスまでやって来た。湖に付けば、周囲は薄い霧に包まれており、空も厚い雲が覆っていた。

私は、湖を火魔法で熱しながら、その空気を風魔法で上空へと送る。そして、周辺をを氷魔法で冷やせば、霜が出来始めており、湖から離れた位置に宿を取っておいて正解だったと感じる。

複数の魔法を一度に使うのは、さすがに集中力を必要とするが、出来ない事はない。日付が変わる頃までは、状況を見ながら、そのまま魔法を継続するつもりだ。

しかし、この方法で、雪が降るかはまだ分からない。だから、上手くいかなかった時は、湖を全て凍らせるつもりでいる。リュカは、氷の上をすべるのも楽しいと言っていたからな。

しばらくしても、雪が降る気配はなく、周囲だけが冷えて凍っていく。周辺の宿には、後で何か詫びを持って行かなければならないか?と考えている時に、町中に響く龍の咆哮が聞こえた。

この町に龍がいるとしたら、オルフェの召喚獣しか考えられない。つまり、宿で何かが起こったという事だ。

私は、急いで皆が泊まっている宿へと戻った。宿へと戻ると、宿の前に複数の焼け焦げた死体とイグニスだけがいた。現場の状況を見て、だいだいの事を把握する。イグニスだけが此処にいるという事は、オルフェは先に行ったのだろう。

「…おい、お前」

「は、はい!!私でしょうか!?」

「今すぐ、湖近くにあるラグジェに行って、レグリウスの名で宿を手配してこい…」

「れ、レグリウス!?た、直ちに行って入ります!!」

男が走って行くの確認して、イグニスのもとへと向かう。

「……案内しろ」

イグニスに、案内を命じながら、周囲へと魔法を放出する。周囲に残っている死体を、凍らせて砕いて消してのち、イグニスに乗り後を追いかけた。

あのまま残しておくと、2人が目にしていまう可能性があった。少しでも可能性があるのならば、そのまま放置していくのは、些か不味い。なので、片付ける必要があった。

しばらくすると、遠目にだが、森の木々の間にアクアの姿が見えた。私は、真上まで来ると、イグニスから飛び降り、風魔法で衝撃を和らげながら着地する。

皆の姿が見えた時は、私も安堵した。しかし、聞こえて来た声から、大元は逃げ出したようだ…。ならば、私に譲って貰おう…。

オルフェに、宿の事など、後の事を託すし終わると、森の中へと入って行った。私は、残りの者を探すため、魔法陣でカルロを呼び出すと司令を下す。

「カルロ…愚か者を探せ…」

カルロは気配に敏感だ。多少離れていても、ある程度は感知する事が出来る。それに今は、私の魔力で大部分の魔物は逃げ出したので、愚か者を探すのもそれほど苦ではないだろう。

私が、カルロが反応する方へと歩みを進めれば、雪が振り始めた。

「今さらか…さて、私と遊びたい様だからな…。何をして遊ぼうか…?」

私の魔力で氷付いた地面を見て、リュカが言っていた遊びを思い出した。

「氷の上をすべって遊ぶだったか…?」

氷の上に乗ってもそれほどすべらない。何がダメなのか考え、氷との間に水の膜を作り、風魔法で追い風を作る。すると、想像したよりも、速く移動する事が出来た。

「では、鬼ごっこを始めようか…」

少し離れた木陰に、男が1人座っているのが見えた。探していた標的を見つけて、ほくそ笑んでいると、カルロは私から離れた位置にある木へと飛んで行った。

「離れていてくれた方が、好都合か…」

私は、男の方へと歩を進めた。

途中、不快な気配を感じた時は、男を蹴り飛ばしていた。殴っても良かったのだが、これから皆の元に戻った時に、服が汚れているのは困るので、汚れ難い足にしておいた。

愚か者を処分し終わった私は、街へと視線を向ける。

「さて、後1人…愚か者残っているな…」

私は、残りの愚か者を捕まえるために、カルロと共に町へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

異世界転生~目指せ!内乱を防いで、みんな幸せ♪

紅子
ファンタジー
いつの間にかこの国の王子に転生していた俺。物語の世界にいるなんて、想定外だ。このままでは、この国は近い未来に内乱の末、乗っ取られてしまう。俺、まだ4歳。誰がこんな途方もない話を信じてくれるだろうか?既に物語と差異が発生しちゃってるし。俺自身もバグり始めてる。 4歳から始まる俺の奮闘記?物語に逆らって、みんな幸せを目指してみよう♪ 毎日00:00に更新します。 完結済み R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

この度神様を辞めて、地上に降りました。執着系武神様と無双旅をします!

yun.
ファンタジー
人間から、天使になり100年。 それから神に昇格して早5000年。 そろそろ、飽きました! 後任は育てたので、私は地上へ降ります! そう宣言し、転生したのはエルフ。 最長1000年生きれるでしょう。 神様として頑張ってきた5000年ほど自由に生きたかったのですが、仕方ありませんね。 私は地上で、美味しいものを食べて、いろんなところを旅して、いろんな景色を見てきます! と意気揚々と降り立ったのだが、武神は追いかけてくるし、人助けしまくっていたら、神と呼ばれるし。 それでも、今日も楽しいです! 2022.7.4 タイトル変更しました。 旧 拝啓 この度神様やめました。

異世界転移の……説明なし!

サイカ
ファンタジー
 神木冬華(かみきとうか)28才OL。動物大好き、ネコ大好き。 仕事帰りいつもの道を歩いているといつの間にか周りが真っ暗闇。 しばらくすると突然視界が開け辺りを見渡すとそこはお城の屋根の上!? 無慈悲にも頭からまっ逆さまに落ちていく。 落ちていく途中で王子っぽいイケメンと目が合ったけれど落ちていく。そして………… 聞いたことのない国の名前に見たこともない草花。そして魔獣化してしまう動物達。 ここは異世界かな? 異世界だと思うけれど……どうやってここにきたのかわからない。 召喚されたわけでもないみたいだし、神様にも会っていない。元の世界で私がどうなっているのかもわからない。 私も異世界モノは好きでいろいろ読んできたから多少の知識はあると思い目立たないように慎重に行動していたつもりなのに……王族やら騎士団長やら関わらない方がよさそうな人達とばかりそうとは知らずに知り合ってしまう。 ピンチになったら大剣の勇者が現れ…………ない! 教会に行って祈ると神様と話せたり…………しない! 森で一緒になった相棒の三毛猫さんと共に、何の説明もなく異世界での生活を始めることになったお話。 ※小説家になろうでも投稿しています。

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。 ところが、闇属性だからと強制転移されてしまう。 頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険が始まる。 強力な魔物や冒険者と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指す。

処理中です...