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一章
嫌な授業と好きな授業
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今日は昨日と違って、ためらわずに書庫の扉を開けられた。しかし、兄様はまだ書庫には来ていないようで、姿は見えなかった。もうすぐ、兄様が来るかと書庫で待っていたけれど、お昼になっても兄様は書庫には来なかった。
昼食の時間になっても、食堂に兄様の姿は見えない。
「かあさま…兄様は?」
「何でも、学院に用事があるとかで、出掛けてたみたいね?帰りは夕方になるそうよ?」
母様に聞いてみたら、兄様は外出していて屋敷にいなかった。昨日、質問しすぎたから、怒って僕の事が嫌いになったわけじゃないよね…?その日の夕食は、なるべく騒がないよう大人しくしていた。
次の日、授業のため、屋敷にやって来たフェリコ先生に、昨日の事を僕は相談してみた。
「オルフェ様は、そんな事で怒ったりされないので、大丈夫だと思いますよ?」
「ほんとう!」
フェリコ先生の言葉を聞いて、僕はそっと胸をなでおろす。
「それに、本気で怒っている時は、何かしらの被害が出るので、分かりやすいですよ?」
「え…」
「そういう時は、アルノルド様に似ているなと感じますね」
それは、似ているで済ませて言い問題なのかな?もしかして、僕、相談相手を間違えたかな?そんな事を平然と言えるフェリコ先生も、少し普通じゃないなと僕は感じた…。
「それはそうと、再来週に新年会が迫っているので、今週からそれに合わせた授業をしていきますね。とは言っても、普段から少しずつやっているので、やるのは習った事のおさらいくらいですけどね」
「なにするの?」
「そうですね。ワルツなどのダンスや、貴族の家名などを覚えるための歴史とかですかね」
「えー」
ダンスはいいけど、人の名前や顔を覚えるの苦手なんだよな…。覚えたと思ってもすぐに忘れるし…。屋敷の使用人達だって、皆が同じ服装をしているから、何か特徴がないと覚えらなかったし…。
「リュカ様は、公爵なので、覚える必要のある人は、そんなに多くないので、その日だけでも覚えておいて下さい。ひとまずは、レクス陛下と、レオン殿下だけは、間違えないように、名前にエクスシアが付いたら王族なので注意です!」
「はぁい…」
今週から、憂鬱な授業が続きそうで、どうしてもため息混じりの返事になってしまった。
それから、僕も頑張って2日目の授業までは耐えたけど、3日目になると、さすがにもうやる気が起きない…。
「はぁ…」
「だいぶ堪えてますね…」
机の上に突っ伏していたら、フェリコ先生の声が聞こえた。しかし、起きる気力がわいてこない。
「そろそろこうなると思ったので、今日は、魔力操作の授業にするつもりです」
「やったー!」
フェリコ先生の一言で、一気に元気がわいてくる。
「なら裏庭の方に行きましょうか」
「はい!」
フェリコ先生を引っ張りながら部屋を出ると、一緒に裏庭へと向かった。
「リュカ様は、ほんと魔法を使うのが好きですよね」
「はい!魔法でバーンってするの楽しいです!」
「そういうところ、似てますよね…」
裏庭に出てすぐに、練習所に駆け出していた僕には、何を言っていたのか聞こえていなかった。
練習場に付くと、そこに置いてある的に向かって、それぞれの属性魔法を打つ。たまに外したりするけど、魔法を使う事が楽しいから、それほど気にはならない。
「何時も通り、特に苦手な属性もなく使えていますね」
僕は、特化した属性はないけれど、その分苦手なものもなく魔法が使える。そして、かすり傷を治す程度には、回復魔法だって使うことが出来る。回復魔法が使える人は、そこまでいないため、授業ではやっていなかったから、僕が使えると分かったのは、ただの偶然だった。
前に、リタが失敗をして、カップを割って指を斬ってしまった事があった。リタの怪我が心配で、手を両手で握りながら、怪我が治るようにと願ったら、リタの傷が治っていたのだ。その後、調べてもらったけれど、僕の魔力量では、大きな怪我や病気は治せないけれど、小さな怪我や疲労回復くらいなら出来るそうだ。
その後の授業も、裏庭で散歩をしながら植物についての楽しい授業だった。だから僕は、ある事をすっかり忘れていた。
「明日は、また昨日と同じ授業に戻りますからね」
今から明日が嫌になった…。
昼食の時間になっても、食堂に兄様の姿は見えない。
「かあさま…兄様は?」
「何でも、学院に用事があるとかで、出掛けてたみたいね?帰りは夕方になるそうよ?」
母様に聞いてみたら、兄様は外出していて屋敷にいなかった。昨日、質問しすぎたから、怒って僕の事が嫌いになったわけじゃないよね…?その日の夕食は、なるべく騒がないよう大人しくしていた。
次の日、授業のため、屋敷にやって来たフェリコ先生に、昨日の事を僕は相談してみた。
「オルフェ様は、そんな事で怒ったりされないので、大丈夫だと思いますよ?」
「ほんとう!」
フェリコ先生の言葉を聞いて、僕はそっと胸をなでおろす。
「それに、本気で怒っている時は、何かしらの被害が出るので、分かりやすいですよ?」
「え…」
「そういう時は、アルノルド様に似ているなと感じますね」
それは、似ているで済ませて言い問題なのかな?もしかして、僕、相談相手を間違えたかな?そんな事を平然と言えるフェリコ先生も、少し普通じゃないなと僕は感じた…。
「それはそうと、再来週に新年会が迫っているので、今週からそれに合わせた授業をしていきますね。とは言っても、普段から少しずつやっているので、やるのは習った事のおさらいくらいですけどね」
「なにするの?」
「そうですね。ワルツなどのダンスや、貴族の家名などを覚えるための歴史とかですかね」
「えー」
ダンスはいいけど、人の名前や顔を覚えるの苦手なんだよな…。覚えたと思ってもすぐに忘れるし…。屋敷の使用人達だって、皆が同じ服装をしているから、何か特徴がないと覚えらなかったし…。
「リュカ様は、公爵なので、覚える必要のある人は、そんなに多くないので、その日だけでも覚えておいて下さい。ひとまずは、レクス陛下と、レオン殿下だけは、間違えないように、名前にエクスシアが付いたら王族なので注意です!」
「はぁい…」
今週から、憂鬱な授業が続きそうで、どうしてもため息混じりの返事になってしまった。
それから、僕も頑張って2日目の授業までは耐えたけど、3日目になると、さすがにもうやる気が起きない…。
「はぁ…」
「だいぶ堪えてますね…」
机の上に突っ伏していたら、フェリコ先生の声が聞こえた。しかし、起きる気力がわいてこない。
「そろそろこうなると思ったので、今日は、魔力操作の授業にするつもりです」
「やったー!」
フェリコ先生の一言で、一気に元気がわいてくる。
「なら裏庭の方に行きましょうか」
「はい!」
フェリコ先生を引っ張りながら部屋を出ると、一緒に裏庭へと向かった。
「リュカ様は、ほんと魔法を使うのが好きですよね」
「はい!魔法でバーンってするの楽しいです!」
「そういうところ、似てますよね…」
裏庭に出てすぐに、練習所に駆け出していた僕には、何を言っていたのか聞こえていなかった。
練習場に付くと、そこに置いてある的に向かって、それぞれの属性魔法を打つ。たまに外したりするけど、魔法を使う事が楽しいから、それほど気にはならない。
「何時も通り、特に苦手な属性もなく使えていますね」
僕は、特化した属性はないけれど、その分苦手なものもなく魔法が使える。そして、かすり傷を治す程度には、回復魔法だって使うことが出来る。回復魔法が使える人は、そこまでいないため、授業ではやっていなかったから、僕が使えると分かったのは、ただの偶然だった。
前に、リタが失敗をして、カップを割って指を斬ってしまった事があった。リタの怪我が心配で、手を両手で握りながら、怪我が治るようにと願ったら、リタの傷が治っていたのだ。その後、調べてもらったけれど、僕の魔力量では、大きな怪我や病気は治せないけれど、小さな怪我や疲労回復くらいなら出来るそうだ。
その後の授業も、裏庭で散歩をしながら植物についての楽しい授業だった。だから僕は、ある事をすっかり忘れていた。
「明日は、また昨日と同じ授業に戻りますからね」
今から明日が嫌になった…。
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