20 / 227
一章
僕は普通
しおりを挟む
朝の日差しで目が覚めて、窓の外を見れば、今日は雲一つない快晴だった。だけど、僕の心は何処か晴れないまま、どんよりと雲が覆っているようだった。
「リュカ様。失礼致します」
ノックの音が聞こえた後に、リカが僕の部屋へと入ってきた。
「リュカ様、おはようございます。もう…お目覚めだったのですね…」
朝は何時も、リカに起こしてもらうまで寝ている事が多いせいか、何処か心配そうな顔をしてこちらを見ていた。
「おはようリカ!なんか今日は、目が覚めちゃって!」
僕は、これ以上皆に心配をかけたくなくて、何でもない振りをして挨拶を返した。けれど、リカの顔をみれば、それが上手くいっていない事は分かった。その後、何時もみたいに服を着るのを、リカに手伝って貰いながら、両親達が待つ食堂へと向かった。
昨日の夕食での事もあったせいか、なんとも食堂に入り辛い…。だけど、ここで引き返して、朝食を抜いたとなれば、更に皆に心配をかける事になる…。僕は、深呼吸をしてから、食堂の扉を開けて中に入った。
「父様、母様おはようございます!」
「おはようリュカ。昨日は、眠れたかい?」
「おはよう。今日もいい天気ね」
食堂には、父様と母様が何時ものように座って、僕が来るのを待っていた。だけど、何時も先に来ている兄様の姿が、食堂の中にはなかった。
朝と夕は、決まって家族全員で食事をとっている。たまに、父様や兄様が用事などでいない時はあったが、それは夕食の時だけであり、朝食の席にいないなんて事は今までになかった。それに、兄様は時間に正確なので、時間より遅く来るなんて事もなかった。
「兄様は?」
自分の席に座り、空席になっている隣の席を見ながら、両親に尋ねる。
「オルフェは、まだ来ていないよ。予定の時間までもう少しあるから、待っていたけど…オルフェしては珍しいな…」
「そうね…何処か具合が悪くなっているのかもしれないから、私、部屋まで行ってオルフェの様子を見てくるわ」
「エレナ、頼んでもいいかい?私は、ここで待っているから」
母様に声を掛ける前、父様が僕の方を少し見たような気がした。兄様よりも、僕が優先されている事に、少し罪悪感を感じる。母様が席を立って様子を見に行こうとした時、食堂の扉が開いて兄様が入って来るのが見えた。
「おはようございます…」
「何時もより遅かったね?何処か具合でも悪いのかい?」
父様は、心配しそうに兄様の様子を伺いながら声をかける。
「いえ…。……昨日、少し遅くまで本を読んでいたので遅くなりました……」
「具合が悪くないなら良かったわ。今、様子を見に行こうか話していた所なの」
「……ご心配をおかけしました」
兄様が、席に付いたのを確認した使用人達が、朝食の準備を始めた。
「それにしても、オルフェが寝坊するなんて子供時以来かな?」
「そうね。子供の時以来ね」
「………」
自分の事が話題になっているのに、兄様は気にする様子もなく、朝食が運ばれて来るのを見ていた。それにしても、兄様も寝坊した事あるんだ。
「そういえば、一度、部屋を半壊させた事もあったね」
「は、半壊!?」
突然聞こえてきた不穏な言葉に、視線をそちらに移せば、父様が楽しそうに笑っていた。
「そ、そうね。あの時は、さすがに私も驚いたわ……」
母様!驚いたで済ませていいの?そもそも何をすれば部屋が半壊するの!?その時、兄様にいったい何があったの!?
「あの頃は、オルフェもやんちゃだったな~。リュカも、やんちゃしたければしてもいいよ?」
「え、遠慮します」
父様からかけられた言葉に、少し引き気味に返事を返す。
「そうかい?周りに人がいなければ、屋敷内なら何処を壊しても大丈夫だから」
「しませんよ!!」
僕を、破壊魔みたいに言わないで欲しい!むしろ、部屋を半壊させて、やんちゃの一言で終わる父様の感覚が凄いです。僕は、普通の人間なので、そのレベルを求められても無理です!
え、やらないの?という父様の顔無視して兄様を見ても、顔色も表情も何一つ変える事無く、運ばれて来た朝食を食べていた。その様子を見ていると、何だか今まで僕が悩んでいた事がすごくちっぽけに感じて、悩んでいるのがだんだん馬鹿馬鹿しくなってきた。そもそも、僕は普通の人間なんだから、父様達と比べる事が間違っていた。
何処か吹っ切れたような思いで、僕も運ばれて来ていた朝食を食べていたら、食後のデザートが運ばれて来た。しかも、僕が好きなチョコ味!ドミニクの方に視線を向ければ、小さく頷いているのが見えた。どうやら、お菓子禁止令が解除されたようだ!なんで、予定よりも速くなったかは分からないけど、お菓子が食べれるなら理由は関係ない。
周りに心配をかけた事など忘れ、お菓子が食べれるなら、たまに悩むのも悪くないかなと、お菓子に舌鼓をうつ。途中、兄様から見られているような視線を感じる事があったけど、視線を向けて見てもこちらを見ている様子はなく、不思議に思いながら僕は食堂を後にした。
「リュカ様。失礼致します」
ノックの音が聞こえた後に、リカが僕の部屋へと入ってきた。
「リュカ様、おはようございます。もう…お目覚めだったのですね…」
朝は何時も、リカに起こしてもらうまで寝ている事が多いせいか、何処か心配そうな顔をしてこちらを見ていた。
「おはようリカ!なんか今日は、目が覚めちゃって!」
僕は、これ以上皆に心配をかけたくなくて、何でもない振りをして挨拶を返した。けれど、リカの顔をみれば、それが上手くいっていない事は分かった。その後、何時もみたいに服を着るのを、リカに手伝って貰いながら、両親達が待つ食堂へと向かった。
昨日の夕食での事もあったせいか、なんとも食堂に入り辛い…。だけど、ここで引き返して、朝食を抜いたとなれば、更に皆に心配をかける事になる…。僕は、深呼吸をしてから、食堂の扉を開けて中に入った。
「父様、母様おはようございます!」
「おはようリュカ。昨日は、眠れたかい?」
「おはよう。今日もいい天気ね」
食堂には、父様と母様が何時ものように座って、僕が来るのを待っていた。だけど、何時も先に来ている兄様の姿が、食堂の中にはなかった。
朝と夕は、決まって家族全員で食事をとっている。たまに、父様や兄様が用事などでいない時はあったが、それは夕食の時だけであり、朝食の席にいないなんて事は今までになかった。それに、兄様は時間に正確なので、時間より遅く来るなんて事もなかった。
「兄様は?」
自分の席に座り、空席になっている隣の席を見ながら、両親に尋ねる。
「オルフェは、まだ来ていないよ。予定の時間までもう少しあるから、待っていたけど…オルフェしては珍しいな…」
「そうね…何処か具合が悪くなっているのかもしれないから、私、部屋まで行ってオルフェの様子を見てくるわ」
「エレナ、頼んでもいいかい?私は、ここで待っているから」
母様に声を掛ける前、父様が僕の方を少し見たような気がした。兄様よりも、僕が優先されている事に、少し罪悪感を感じる。母様が席を立って様子を見に行こうとした時、食堂の扉が開いて兄様が入って来るのが見えた。
「おはようございます…」
「何時もより遅かったね?何処か具合でも悪いのかい?」
父様は、心配しそうに兄様の様子を伺いながら声をかける。
「いえ…。……昨日、少し遅くまで本を読んでいたので遅くなりました……」
「具合が悪くないなら良かったわ。今、様子を見に行こうか話していた所なの」
「……ご心配をおかけしました」
兄様が、席に付いたのを確認した使用人達が、朝食の準備を始めた。
「それにしても、オルフェが寝坊するなんて子供時以来かな?」
「そうね。子供の時以来ね」
「………」
自分の事が話題になっているのに、兄様は気にする様子もなく、朝食が運ばれて来るのを見ていた。それにしても、兄様も寝坊した事あるんだ。
「そういえば、一度、部屋を半壊させた事もあったね」
「は、半壊!?」
突然聞こえてきた不穏な言葉に、視線をそちらに移せば、父様が楽しそうに笑っていた。
「そ、そうね。あの時は、さすがに私も驚いたわ……」
母様!驚いたで済ませていいの?そもそも何をすれば部屋が半壊するの!?その時、兄様にいったい何があったの!?
「あの頃は、オルフェもやんちゃだったな~。リュカも、やんちゃしたければしてもいいよ?」
「え、遠慮します」
父様からかけられた言葉に、少し引き気味に返事を返す。
「そうかい?周りに人がいなければ、屋敷内なら何処を壊しても大丈夫だから」
「しませんよ!!」
僕を、破壊魔みたいに言わないで欲しい!むしろ、部屋を半壊させて、やんちゃの一言で終わる父様の感覚が凄いです。僕は、普通の人間なので、そのレベルを求められても無理です!
え、やらないの?という父様の顔無視して兄様を見ても、顔色も表情も何一つ変える事無く、運ばれて来た朝食を食べていた。その様子を見ていると、何だか今まで僕が悩んでいた事がすごくちっぽけに感じて、悩んでいるのがだんだん馬鹿馬鹿しくなってきた。そもそも、僕は普通の人間なんだから、父様達と比べる事が間違っていた。
何処か吹っ切れたような思いで、僕も運ばれて来ていた朝食を食べていたら、食後のデザートが運ばれて来た。しかも、僕が好きなチョコ味!ドミニクの方に視線を向ければ、小さく頷いているのが見えた。どうやら、お菓子禁止令が解除されたようだ!なんで、予定よりも速くなったかは分からないけど、お菓子が食べれるなら理由は関係ない。
周りに心配をかけた事など忘れ、お菓子が食べれるなら、たまに悩むのも悪くないかなと、お菓子に舌鼓をうつ。途中、兄様から見られているような視線を感じる事があったけど、視線を向けて見てもこちらを見ている様子はなく、不思議に思いながら僕は食堂を後にした。
20
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑
つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。
とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。
そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。
魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。
もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。
召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。
しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。
一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
この度神様を辞めて、地上に降りました。執着系武神様と無双旅をします!
yun.
ファンタジー
人間から、天使になり100年。
それから神に昇格して早5000年。
そろそろ、飽きました!
後任は育てたので、私は地上へ降ります!
そう宣言し、転生したのはエルフ。
最長1000年生きれるでしょう。
神様として頑張ってきた5000年ほど自由に生きたかったのですが、仕方ありませんね。
私は地上で、美味しいものを食べて、いろんなところを旅して、いろんな景色を見てきます!
と意気揚々と降り立ったのだが、武神は追いかけてくるし、人助けしまくっていたら、神と呼ばれるし。
それでも、今日も楽しいです!
2022.7.4 タイトル変更しました。
旧 拝啓 この度神様やめました。
異世界転生~目指せ!内乱を防いで、みんな幸せ♪
紅子
ファンタジー
いつの間にかこの国の王子に転生していた俺。物語の世界にいるなんて、想定外だ。このままでは、この国は近い未来に内乱の末、乗っ取られてしまう。俺、まだ4歳。誰がこんな途方もない話を信じてくれるだろうか?既に物語と差異が発生しちゃってるし。俺自身もバグり始めてる。
4歳から始まる俺の奮闘記?物語に逆らって、みんな幸せを目指してみよう♪
毎日00:00に更新します。
完結済み
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
闇属性転移者の冒険録
三日月新
ファンタジー
異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。
ところが、闇属性だからと強制転移されてしまう。
頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険が始まる。
強力な魔物や冒険者と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指す。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる