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一章
自立に向けて
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「リュカ!大丈夫かい!?」
「リュカ!大丈夫!?」
扉を開けて部屋の中に入ってきた両親は、僕と目があった途端にすごく慌てて駆け寄ってきた。
僕は最初、両親がいったい何をそんなに心配しているのか、まったく分からなかった。
しかし、今の僕の状況を思い出して納得した。ベットで寝ていると思っていた息子が、床に座り込んでいるのを見れば、心配にもなるだろう。それが、過保護な両親となればなおさらだ。
いつの間にかそばに来ていた父様に、抱き上げられ、気がつけばそのままベットまで運ばれていた。素早い動きなのにも関わらず、それをいっさい感じさせない父様の身のこなしが凄い。
ベットに横になっている僕の手を、母様が握りながら不安そうな声で聞いてきた。
「リュカ…。私達の事…分かる……?」
なんでそんな質問を、僕にしてくるのかが分からない。母様と父様を見ても、不安そうに僕を見つめ返してくるだけで何もしゃべらない。
どうしたらいいのか分からず、部屋の中へと視線を彷徨わせる。すると、扉の方に誰か立っているのが見えた。両親の影に隠れていて、どうやら部屋に入って来た事に気が付かなかったようだ。
扉の横に、ひっそりとドミニクが立っていた。今、あらためてドミニクを見ると、黒髪黒目が、何処か日本人を思い出すのか、懐かしさのようなものを感じる。まあ、顔の作りは日本人離れしているようだけど……。
そのまま視線を横にずれせば、リタの姿が見えた。不安そうにこちらを見ている顔を見て、部屋を出ていく前の出来事を思い出した。
そういえば、リタに、あなたは誰?と言ってしまったんだった。あの時は、前世の記憶の方が強かったので分からなかったが、なんとも不味い事を言ってしまった…。ここで、前世の記憶の話なんてしたら、さらに大変な事になる予感しかない……。
「も、もちろんです!僕の母様と父様に、何時も一緒にいてくれるリタ。そして、執事のドミニクです」
なんとか誤魔化さなければと、焦って少し変な声になってしまったけれど、両親や、後ろに控えていた二人の少し安堵した顔をみる分には、誤魔化すことには成功したようだ。
きっと両親は、リタから僕の様子や発言を聞いたのだろう…。自分の子供がいきなり自分の事を俺と言い出したり、身近にいる人を忘れてしまったとしたら心配するのは当たり前だ……。
「リュカ?やっぱり何処か具合が悪いの!?」
「そ、そんな事ないよ!」
僕を心配してくれる両親を、誤魔化そうとしている僕としては、心が痛い……。でも、これ以上心配かけないために、なんとしても誤魔化さなければ!
「本当に大丈夫?」
「本当に大丈夫です!!」
なんとか両親に安心して欲しくて、笑いながら体を動かせば、ようやく両親も少しほっとした笑顔を見せてくれた。
僕も、その笑顔を見てそっと胸をなでおろした。
「リュカ。それでも念の為、しばらくの間はゆっくり休もう。フェリコには、私の方から伝えておくから」
安堵していた時、父様からの予期せぬ言葉を聞いて、僕は慌てて止める。
「いいえ!僕は大丈夫です!!」
だだでさえ、自分の常識のなさなどを実感して、早急に常識だけでも身に着けなければと思っている僕としては、休んでいる暇なんてない。
「無理は…しなくていいんだよ……」
「そうよ…休んだっていいのよ……」
「いいえ!父上!母上!僕は、ちゃんと勉強して自立します!!」
両親に、何時までも甘えたままでは、兄様との関係修復もままならない。まずは、少しでも自立できるように、両親の呼び方から変えていき、自立心を養って行くことから始めよう。
「ど、どうしたの!?いきなり母上だなんて……何時もは母様と…呼んでくれるでしょう……?」
「そうだよ…いったい…どうしたんだい?」
いきなり呼び方を変えたせいか、両親が僕の事をまた不安そうに見てくる。不安にさせるつもりはなかったので、慌てて理由を説明する。
「も、もうすぐ学院にも通うし、何時までも子供みたいに甘えてはいられないので…呼び方を変えて少しは大人になろうと…思って……」
両親に説明するにつれて、だんだんと自分の行動が、かえって子供みたいな行動に思えて、だんだんと言葉尻が小さくなっていく……。
「リュカはまだ子供何だから、無理して大人にならなくていいんだよ。それに、父上と呼ばれるより、父様と呼ばれたほうが嬉しいから、これからも、私の父様と呼んでくれないかい?」
「そうよ。無理に変えようとしなくていいのよ。それに、私も、母様と呼ばれる方が好きよ」
「はい…。父様…母様…」
両親から寂しげな顔で言われたら、無理に呼び方を変えるなんて事は出来なかった。
「それか、昔みたいに、パパ呼びでもいいけどね?」
「それはいいわね!リュカ!ママって呼んでみて!!」
父様が、何処かからかうように、笑いながら言った言葉を、母様は名案とばかりに賛成した。
両親が期待の籠もった目で、僕のことを見つめれ来たが、今の僕の精神年齢でパパ、ママ呼びはさすがに無理だ…。
その後、渋る両親を説得して、前と同じ呼び方でなんとか納得してもらった……。
僕の一人立ちへの道のりは、かなり遠そうだ……。
「リュカ!大丈夫!?」
扉を開けて部屋の中に入ってきた両親は、僕と目があった途端にすごく慌てて駆け寄ってきた。
僕は最初、両親がいったい何をそんなに心配しているのか、まったく分からなかった。
しかし、今の僕の状況を思い出して納得した。ベットで寝ていると思っていた息子が、床に座り込んでいるのを見れば、心配にもなるだろう。それが、過保護な両親となればなおさらだ。
いつの間にかそばに来ていた父様に、抱き上げられ、気がつけばそのままベットまで運ばれていた。素早い動きなのにも関わらず、それをいっさい感じさせない父様の身のこなしが凄い。
ベットに横になっている僕の手を、母様が握りながら不安そうな声で聞いてきた。
「リュカ…。私達の事…分かる……?」
なんでそんな質問を、僕にしてくるのかが分からない。母様と父様を見ても、不安そうに僕を見つめ返してくるだけで何もしゃべらない。
どうしたらいいのか分からず、部屋の中へと視線を彷徨わせる。すると、扉の方に誰か立っているのが見えた。両親の影に隠れていて、どうやら部屋に入って来た事に気が付かなかったようだ。
扉の横に、ひっそりとドミニクが立っていた。今、あらためてドミニクを見ると、黒髪黒目が、何処か日本人を思い出すのか、懐かしさのようなものを感じる。まあ、顔の作りは日本人離れしているようだけど……。
そのまま視線を横にずれせば、リタの姿が見えた。不安そうにこちらを見ている顔を見て、部屋を出ていく前の出来事を思い出した。
そういえば、リタに、あなたは誰?と言ってしまったんだった。あの時は、前世の記憶の方が強かったので分からなかったが、なんとも不味い事を言ってしまった…。ここで、前世の記憶の話なんてしたら、さらに大変な事になる予感しかない……。
「も、もちろんです!僕の母様と父様に、何時も一緒にいてくれるリタ。そして、執事のドミニクです」
なんとか誤魔化さなければと、焦って少し変な声になってしまったけれど、両親や、後ろに控えていた二人の少し安堵した顔をみる分には、誤魔化すことには成功したようだ。
きっと両親は、リタから僕の様子や発言を聞いたのだろう…。自分の子供がいきなり自分の事を俺と言い出したり、身近にいる人を忘れてしまったとしたら心配するのは当たり前だ……。
「リュカ?やっぱり何処か具合が悪いの!?」
「そ、そんな事ないよ!」
僕を心配してくれる両親を、誤魔化そうとしている僕としては、心が痛い……。でも、これ以上心配かけないために、なんとしても誤魔化さなければ!
「本当に大丈夫?」
「本当に大丈夫です!!」
なんとか両親に安心して欲しくて、笑いながら体を動かせば、ようやく両親も少しほっとした笑顔を見せてくれた。
僕も、その笑顔を見てそっと胸をなでおろした。
「リュカ。それでも念の為、しばらくの間はゆっくり休もう。フェリコには、私の方から伝えておくから」
安堵していた時、父様からの予期せぬ言葉を聞いて、僕は慌てて止める。
「いいえ!僕は大丈夫です!!」
だだでさえ、自分の常識のなさなどを実感して、早急に常識だけでも身に着けなければと思っている僕としては、休んでいる暇なんてない。
「無理は…しなくていいんだよ……」
「そうよ…休んだっていいのよ……」
「いいえ!父上!母上!僕は、ちゃんと勉強して自立します!!」
両親に、何時までも甘えたままでは、兄様との関係修復もままならない。まずは、少しでも自立できるように、両親の呼び方から変えていき、自立心を養って行くことから始めよう。
「ど、どうしたの!?いきなり母上だなんて……何時もは母様と…呼んでくれるでしょう……?」
「そうだよ…いったい…どうしたんだい?」
いきなり呼び方を変えたせいか、両親が僕の事をまた不安そうに見てくる。不安にさせるつもりはなかったので、慌てて理由を説明する。
「も、もうすぐ学院にも通うし、何時までも子供みたいに甘えてはいられないので…呼び方を変えて少しは大人になろうと…思って……」
両親に説明するにつれて、だんだんと自分の行動が、かえって子供みたいな行動に思えて、だんだんと言葉尻が小さくなっていく……。
「リュカはまだ子供何だから、無理して大人にならなくていいんだよ。それに、父上と呼ばれるより、父様と呼ばれたほうが嬉しいから、これからも、私の父様と呼んでくれないかい?」
「そうよ。無理に変えようとしなくていいのよ。それに、私も、母様と呼ばれる方が好きよ」
「はい…。父様…母様…」
両親から寂しげな顔で言われたら、無理に呼び方を変えるなんて事は出来なかった。
「それか、昔みたいに、パパ呼びでもいいけどね?」
「それはいいわね!リュカ!ママって呼んでみて!!」
父様が、何処かからかうように、笑いながら言った言葉を、母様は名案とばかりに賛成した。
両親が期待の籠もった目で、僕のことを見つめれ来たが、今の僕の精神年齢でパパ、ママ呼びはさすがに無理だ…。
その後、渋る両親を説得して、前と同じ呼び方でなんとか納得してもらった……。
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