落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

文字の大きさ
上 下
11 / 242
一章

自立に向けて

しおりを挟む
「リュカ!大丈夫かい!?」

「リュカ!大丈夫!?」

扉を開けて部屋の中に入ってきた両親は、僕と目があった途端にすごく慌てて駆け寄ってきた。

僕は最初、両親がいったい何をそんなに心配しているのか、まったく分からなかった。

しかし、今の僕の状況を思い出して納得した。ベットで寝ていると思っていた息子が、床に座り込んでいるのを見れば、心配にもなるだろう。それが、過保護な両親となればなおさらだ。

いつの間にかそばに来ていた父様に、抱き上げられ、気がつけばそのままベットまで運ばれていた。素早い動きなのにも関わらず、それをいっさい感じさせない父様の身のこなしが凄い。

ベットに横になっている僕の手を、母様が握りながら不安そうな声で聞いてきた。

「リュカ…。私達の事…分かる……?」

なんでそんな質問を、僕にしてくるのかが分からない。母様と父様を見ても、不安そうに僕を見つめ返してくるだけで何もしゃべらない。

どうしたらいいのか分からず、部屋の中へと視線を彷徨わせる。すると、扉の方に誰か立っているのが見えた。両親の影に隠れていて、どうやら部屋に入って来た事に気が付かなかったようだ。

扉の横に、ひっそりとドミニクが立っていた。今、あらためてドミニクを見ると、黒髪黒目が、何処か日本人を思い出すのか、懐かしさのようなものを感じる。まあ、顔の作りは日本人離れしているようだけど……。

そのまま視線を横にずれせば、リタの姿が見えた。不安そうにこちらを見ている顔を見て、部屋を出ていく前の出来事を思い出した。

そういえば、リタに、あなたは誰?と言ってしまったんだった。あの時は、前世の記憶の方が強かったので分からなかったが、なんとも不味い事を言ってしまった…。ここで、前世の記憶の話なんてしたら、さらに大変な事になる予感しかない……。

「も、もちろんです!僕の母様と父様に、何時も一緒にいてくれるリタ。そして、執事のドミニクです」

なんとか誤魔化さなければと、焦って少し変な声になってしまったけれど、両親や、後ろに控えていた二人の少し安堵した顔をみる分には、誤魔化すことには成功したようだ。

きっと両親は、リタから僕の様子や発言を聞いたのだろう…。自分の子供がいきなり自分の事を俺と言い出したり、身近にいる人を忘れてしまったとしたら心配するのは当たり前だ……。

「リュカ?やっぱり何処か具合が悪いの!?」

「そ、そんな事ないよ!」

僕を心配してくれる両親を、誤魔化そうとしている僕としては、心が痛い……。でも、これ以上心配かけないために、なんとしても誤魔化さなければ!

「本当に大丈夫?」

「本当に大丈夫です!!」

なんとか両親に安心して欲しくて、笑いながら体を動かせば、ようやく両親も少しほっとした笑顔を見せてくれた。

僕も、その笑顔を見てそっと胸をなでおろした。


「リュカ。それでも念の為、しばらくの間はゆっくり休もう。フェリコには、私の方から伝えておくから」

安堵していた時、父様からの予期せぬ言葉を聞いて、僕は慌てて止める。

「いいえ!僕は大丈夫です!!」

だだでさえ、自分の常識のなさなどを実感して、早急に常識だけでも身に着けなければと思っている僕としては、休んでいる暇なんてない。

「無理は…しなくていいんだよ……」

「そうよ…休んだっていいのよ……」 

「いいえ!父上!母上!僕は、ちゃんと勉強して自立します!!」

両親に、何時までも甘えたままでは、兄様との関係修復もままならない。まずは、少しでも自立できるように、両親の呼び方から変えていき、自立心を養って行くことから始めよう。

「ど、どうしたの!?いきなり母上だなんて……何時もは母様と…呼んでくれるでしょう……?」

「そうだよ…いったい…どうしたんだい?」

いきなり呼び方を変えたせいか、両親が僕の事をまた不安そうに見てくる。不安にさせるつもりはなかったので、慌てて理由を説明する。

「も、もうすぐ学院にも通うし、何時までも子供みたいに甘えてはいられないので…呼び方を変えて少しは大人になろうと…思って……」

両親に説明するにつれて、だんだんと自分の行動が、かえって子供みたいな行動に思えて、だんだんと言葉尻が小さくなっていく……。

「リュカはまだ子供何だから、無理して大人にならなくていいんだよ。それに、父上と呼ばれるより、父様と呼ばれたほうが嬉しいから、これからも、私の父様と呼んでくれないかい?」

「そうよ。無理に変えようとしなくていいのよ。それに、私も、母様と呼ばれる方が好きよ」

「はい…。父様…母様…」

両親から寂しげな顔で言われたら、無理に呼び方を変えるなんて事は出来なかった。

「それか、昔みたいに、パパ呼びでもいいけどね?」

「それはいいわね!リュカ!ママって呼んでみて!!」

父様が、何処かからかうように、笑いながら言った言葉を、母様は名案とばかりに賛成した。

両親が期待の籠もった目で、僕のことを見つめれ来たが、今の僕の精神年齢でパパ、ママ呼びはさすがに無理だ…。

その後、渋る両親を説得して、前と同じ呼び方でなんとか納得してもらった……。

僕の一人立ちへの道のりは、かなり遠そうだ……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

なんか黄金とかいう馬鹿みたいなスキルを得たのでダラダラ欲望のままに金稼いで人生を楽しもうと思う

ちょす氏
ファンタジー
 今の時代においてもっとも平凡な大学生の一人の俺。 卒業を間近に控え、周りの学生たちは冒険者としてのキャリアを選ぶ中、俺の夢はただひとつ、「悠々自適な生活」を送ること。 金も欲しいし、時間も欲しい。 程々に働いて程々に寝る……そんな生活だ。 しかし、それも容易ではなかった。100年前の事件によって。 そのせいで現代の世界は冒険者が主役の時代となっていた。 ある日、半ば興味本位で冒険者登録をしてみた俺は、予想外のスキル「黄金」を手に入れる。 「はぁ?」 俺が望んだのは平和な日常を送るためだが!? 悠々自適な生活とは程遠い、忙しない日々を送ることになる。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...