落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

文字の大きさ
上 下
3 / 247
一章

召喚の儀とは?

しおりを挟む
僕が5歳になる少し前の夏頃に、家庭教師であるフェリコ先生から、召喚の儀と呼ばれているものについての授業を受けた。

「リュカ様。今日は、大切な召喚の儀に付いてご説明しますので、最後までちゃんと聞いていて下さいね?」

「しょうかんの…ぎ?」

「はい。召喚の儀とは、我が国の人間だけが出来る特別な儀式の事です。魔力を持った5歳の子供は、教会で召喚の儀を行う事になります。そして、自分に波長のあった者を異世界から召喚し、パートナーとして契約を結ぶ事になります。リュカ様も魔力を持っていますので、5歳になった時に行う事になりますよ」

「それは、みんながするの?」

「いいえ。先ほども言いましたが、魔力を持った人だけです。貴族には、魔力持ちしかいないので、貴族は全員行いますが、平民は魔力を持って生まれてきた者だけが行います。そして、召喚の儀が必ず成功するとは限りません」

「しないの?」

「はい。貴族では、失敗した方がいるとは聞いた事はありませんが、平民の中には、時折、何も出て来ない者のいます。今の所、その原因がなんなのかは、未だに分かっておりません。研究者の中には、魔力が低いせいではないかと言う方もいますが、何故我が国の人間だけが行えるのかなどを含めて、召喚の儀そのものが、よく分かっていないのです」

「ふ~ん」

フェリコ先生の説明を聞いても、途中から難しくて理解出来なかったから、どうしても素っ気ない返事になってしまう。そんな僕の気持ちが伝わったのか、フェリコ先生は、何処か苦笑したような顔で僕を見ていた。

「言葉だけでは、興味がわき難いようなので、私のパートナーを見せした方が良さそうですね。おいでアルバ」

フェリコ先生がそう言うと、僕達の間の足元付近の床に、淡い光を放つ魔法陣のような物が現れた。魔法陣から出る淡い光は、徐々に集まりだし、一つの形になっていく。僕はそれを、驚きと興奮を交えながら見つめていた。

光が消えた後には、魔法陣の代わりに真っ白い梟がそこにいた。

「すごい!すごいすごい!!」

僕は興奮のまま、その場で飛び上がりながら、同じ事ばかりを口走っていた。でも、現れた白い梟は、目の前で騒いでいるそんな僕を気にする事もなく、大きく羽を広げ飛び立つと、フェリコ先生の肩にそっと止まった。

「リュカ様、この子が、私のパートナーのアルバです」

肩に止まったアルバを、フェリコ先生が優しく撫でると、アルバはそれに甘えるようにして身を擦り寄せ、フェリコ先生に大人しく撫でられていた。

フェリコ先生達の姿は、お互いを信頼し合っていると言うのが、見ているだけでも分かった。だから僕も、自分だけのパートナーが欲しいと鮮明に思った。

「フェリコせんせい!ぼくにも、アルバみたいなパートナーはできますか!!」

「はい。リュカ様のところにも、きっといい子か来てくれますよ。リュカ様、アルバの胸にある、印が見えますか?」

フェリコ先生に言われてアルバの胸を見れば、そこには紋章のような物が描かれているのが見えた。

「これは契約紋と言って、契約を結んだ召喚獣に刻まれる印です。なので、これは召喚者と召喚獣を繋ぐ印のようなものです。それに、一目で召喚獣だと分かる目印しにもなっているんですよ」

「それよりどうやってよぶの!?」

よく分からない話しよりも、召喚獣を呼ぶ方法を教えて欲しくて、急かすように質問すれば、フェリコ先生は少し笑いながらも、僕の質問に答えてくれた。

「教会にある魔法陣に魔力を流すと、召喚獣は卵の状態で現れます。そして、自分の魔力を与え羽化させる事によって、その召喚獣はこちらをパートナーと認識してくるようになります。昔は卵ではなく、成獣の状態で呼び出していたそうですが、その方法では上手くいかなかったため、この方法になったそうです」

「ねぇ!?フェリコせんせい!かあさまやとうさまも、しょうかんもってるの?ぼくみたことないよ?」

「リュカ様。召喚獣ですよ。それと、お2人の召喚獣は、基本はお屋敷の庭などに暮らしていますので、あまり見かけないのかもしれませんね。私のアルバも、普段は家で寝ていていたり、たまに外に出かけたりと自由に過ごしていますよ」

「にいさまのも?」

「オルフェ様は…少し特殊ですね」

「?」

「オルフェ様の召喚獣は龍なのですが、大きくなり過ぎて屋敷には入れないんです。庭で過ごしていた時もありましたが、庭を荒らしてしまったたため、今は王都近くの山の中で過ごしているのです」

「りゅう!?みたい!!」

龍なんて、絵本の中でしか見た事がない。それに、龍なんて格好いい生き物を、どうしても間近で見てみたくなった。

「さすがに此処では無理ですが、王都の外に出かけられた際などに、オルフェ様に頼めば、リュカ様なら直ぐにでも見せて貰えると思いますよ。私も前に見た事があります。オルフェ様の召喚獣は紅龍と青龍で、2匹共、とても綺麗でした」

「にたい!?」

龍がいるだけでも凄いのに、兄様は2体も従えているらしい。僕がその事に驚いていると、何故か、フェリコ先生は少し目尻を下げた。

「卵が2つ現れるなんて事は過去にもなかったため、当時はとても騒ぎになりました。そして、卵から産まれたのが2匹の龍だったために、オルフェ様の意思とは別に、知らない人はいないと言うほど有名になりました」

どうやら僕の兄様は、凄い人ではなく、とても凄い人だったという事を、この時初めて知った。

でも、フェリコは直ぐに見せてくれるって言ったけど、僕から兄様に頼むのは無理そうだから、機会があれば、父様から頼んでもらって見せて貰おう……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...