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しおりを挟むしかし、公爵は二人を追いかける素振りを見せないどころか、のそのそと立ち上がり、部屋に据え置かれていたソファに座るとおもむろに懐から本を取り出して読み始める。そのあまりに余裕たっぷりな態度に痺れを切らせた使用人の一人が公爵に向かって叫んだ。
「旦那様!!奥様を追いかけなくてよろしいんですか!?」
「フン、なぜ私があんなアバズレ女を追いかけなくてはいけないんだ」
「いやいや、そんなこと言っている場合ですか!?このままだと本当に奥様が子爵家に連れて帰られてしまいますよ!?」
「ハッ、だったらなんだと言うんだ。あんな女いなくなって清々するわ」
「ああ!?た、大変!もう馬車に乗り込んでいるわ!」
「旦那様!」
「いいから早く奥様を追いかけて下さい!」
「旦那様!!」
「…………」
使用人達は必死に公爵に妻を追い掛けるように呼びかけるが、公爵は使用人達の言葉をガン無視して、手元の本に視線を下す。そして、そうこうしている間に無常にも妻を乗せた子爵家の馬車は馬のいななきと共に走り出してしまった。使用人達は窓越しに土煙を上げ、すごいスピードで走り去っていく馬車に声にならない声を上げるが、結局公爵が妻を乗せた馬車を追い掛けることはなかったのだった。
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