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しおりを挟む何故か神妙な面持ちをしている近衛隊長に戸惑いながらアンネロッタが鷹を渡すと、鷹を受け取った近衛隊長は鷹の胸に耳を当てて、ハッと息を呑み、そろりと耳を離して……衝撃的な一言を言い放った。
「王妃様。この鷹……死んでいます」
「えっ」
アンネロッタは近衛隊長の言葉に固まった。そのアンネロッタの様子に近衛隊長は気まずそうな顔をして「この鷹からは心臓の音が聞こえないのです…」と視線を逸らしながら鷹が生きてないことを重ねて告げる。アンネロッタは「まさか、そんな筈は……」と呟きながら、信じ難い気持ちで近衛隊長が抱えた鷹の胸に手を当てるが、確かに近衛隊長の言う通り、鷹の心臓は動いてなかった。それどころか昨晩触った時はポカポカと熱いくらい暖かった体は今は氷の様に冷え切っており、鷹が死んでいる事を如実に伝えてくる。
「そ、そんな……どうして……?さっきまであんなに元気だったのに……」
まだ助けて貰ったお礼も言ってないのに突然逝ってしまった鷹の死を到底受け入れられなくて左右に首を振るアンネロッタの痛ましい姿に部屋にいる誰もが気まずそうに口を噤み、部屋に重い沈黙が流れた時。その沈黙を破る様に突如部屋の扉が勢い良く開かれて、
「アンネロッターーッ!!!無事かーーッ!!!」
と、剣を片手に持ったシルバレッドが寝間着姿のまま息を切らせながら部屋に駆け込んで来た。
「へ、陛下……!?」
予期していなかった人物の登場にアンネロッタ含め部屋にいる誰もが驚くが、シルバレッドは驚く周囲を無視して一目散にアンネロッタに駆け寄るとぎゅっ!と強くアンネロッタの体を抱き締めて叫んだ。
「すまなかった!すまなかったアンネロッタ!!僕が毛並みなんか整えたりせずもっと早くここに来ていればお前があんな恐ろしい目に合わなかったのに……うっ、うう……!本当にすまなかった……!アンネロッタ……っ!」
ポロポロと涙を流しながら懺悔の言葉を口にするシルバレッドにアンネロッタは呆気に取られる。まるであの男に殺されそうになった場面を見ていたかの様な口振りもそうだが、毛並みという聞き慣れない単語に心の底で引っ掛かっていた何かがガッチリと嵌り、アンネロッタは無意識に呟いていた。
「……まさか、私を助けてくれたのはシルバレッド様だった……?」
「う、うぅ……グズッ……ああ、そうだ。確かにあの鷹に乗り移りお前を助けたのは僕ーー……あっ。」
しまったという顔をして口を紡いだシルバレッドの姿にやはりそうなのだと確信したアンネロッタはシルバレッドに詰め寄る。
「や、やっぱりそうなのですね!?でも、一番最初に聞いた時どうしてシルバレッド様だと名乗ってくれなかったのです!?いやそもそも鷹に乗り移っていたとはどういう事なんでしょうか!?あっ、もしかしてシルバレッド様ならこの鷹を生き返らせられることがーー……」
「お、おい。待て待て。ちゃんと答えるから一旦落ち着け」
矢継ぎ早に質問をぶつけてくるアンネロッタに制止の声を掛けて、シルバレッドは部屋にいる近衛隊長に視線を送ると無言の指示を受け取った近衛隊長は部屋にいた騎士と侍女達を引き連れて部屋を出て行く。
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