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しおりを挟む「あはは、大丈夫かい彩華?」
「全っ然、大丈夫じゃありませんわ……」
「フフッ、そっか。確かに今日はたくさん歩いたからね、疲れるのも無理ないね」
「全くですわ。お兄様ったらワタクシのことをあっちこっち連れ回すんですから……」
「ふふふ、ごめんごめん。彩華と一緒に買い物をするのが楽しくてついつい……」
「もう子供みたいなことを言って……予定が合えばいつでも二人で出掛けられますでしょ?」
「……そうでもないよ」
「え?」
「いや、なんでもない。ああ、それよりもう大分日が傾いてきたね。そろそろ屋敷に帰ろうと思うんだけど……彩華。他に行きたい場所はあるかい?」
「え?他に行きたい場所、ですか?いえ、特に行きたい場所はありませんが…………いえ、そうですわね……あそこにある庶民の甘味処のみたらしミルクティーなる飲み物が気になりますわね」
「みたらしミルクティー?ああ、あのお団子が入った飲み物のことだね。うん、じゃあ一緒に……って、ふふふ。その様子だと無理そうだね。じゃあ僕が買ってくるから彩華はここでちょっと待っていて」
「ありがとうございますわ、お兄様。」
疲労困憊の私の姿に苦笑いしたお兄様はそう言って私をベンチを残して飲み物を買いに行く。……私がその背中をほくそ笑みながら見つめていることも知らず――
そして数分後ーー
「戻ったよ彩華ーー……って、あれ彩華?」
可愛い妹の為に飲み物を買いに行き、戻ってきた兄の目には先程までは妹が座っていた、今はもう誰もいないベンチが映っていたのであった。
・
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「はあっはあ……ふう、ここまで走ってくれば大丈夫ね。全く、お兄様ったら全然隙を見せないんだから……お陰で営業時間ギリギリじゃない。まあ、でもちょうど近くで助かったわ。これなら何とかギリギリ営業時間内には着けそうね」
お兄様を置いて大通りのベンチから抜け出してきた私は篠崎志乃から渡されたメモを片手に人通りの少ない路地を歩いていた。勿論、何も言わず騙す様な形で抜け出してきたのはお兄様に悪いとは思っているが、こうでもしないとおそらく抜け出せなかっただろう。
(ごめんなさい、お兄様。なるはやで帰るから許してね)
そう心の中でお兄様に謝りながら歩くこと数分。周りの建物に溶け込むように佇む一軒の古びた店が見えてきた。
「桃華堂……うん、間違いない。確かにメモに書かれた店だわ」
その古びた店に掲げられた看板に書かれた店名とメモに書かれた店の名前が同じことを確認した私は目的の店に着いたのだと理解する。
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