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しおりを挟むあっけからんと言ったお兄様の台詞に私は言葉を失った。今、お兄様はなんて言った……?私の聞き間違いじゃなければ『兄妹だから私が例え全裸で立っていても欲情しない』的なことを言った気が……え?本気で?
「えっ……お兄様は私が全裸で立っていてもえっちだと思わないのですか?」
「うん、彩華が全裸で立っていても何とも思わないよ。むしろ血の繋がった実の妹に対してそう思ってしまうのは変態じゃないかな?」
「変態って……いや、だったら血の繋がった実の姉と結婚した上に子供まで作った御祖父様は変態ということになりますが……?」
「ふふふ、お祖父様はかなり変わっていたと聞くからそうだったかもしれないね。でも僕はお祖父様ではないから……例え天地がひっくり返っても彩華をそういう目で見る事は絶対に無いよ」
「ッ」
まさにトドメの一言とはこの事を言うのだろう。お兄様のその一言により、私の頭の中で組み立てていた計画の土台がガラガラと音を立てて勢い良く崩れ去っていき、お兄様は茫然自失とする私の姿に何を勘違いしたのか『でも大丈夫だよ彩華。彩華はそのままでも十分魅力的だから』と慰めにもならない慰めの言葉を私に掛けたのであったーー……
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「万事休す、ですわ……」
暖かな日差しが差し込む華族の令嬢のみが通う事を許された女学院のサロンの一角で私は死にそうな顔で呟いた。あの『兄妹だから欲情はしないよ』と言われた一件以降も私はめげずにお兄様と既成事実を作ろうとし続けた。しかし、結果は惨敗。どんなにアプローチしても暖簾に腕押し……全く手応えが無く、それどころか私のアプローチがしつこすぎたのか最近は私が部屋を尋ねても「ごめんね、今日は忙しいんだ」と言って入室を拒否される始末だ。……完全に詰んでいる……
「ああもうっ、一体どうすれば……!」
「うふふ、お困りかしらぁ?」
「オフアッ!?」
そう机に突っ伏しながら嘆いた時。突然耳元から聞こえてきた甘ったるい声と背中に押し当てられた柔らかい感触に飛び上がるようにして椅子から立ち上がった私が後ろを振り返るとそこには大きな胸が特徴的なおっとりとした雰囲気を放つ令嬢の姿があり、見慣れぬ令嬢の姿に私が惚けた顔をするとその令嬢はニコリと柔らかく微笑んで口を開いた。
「あらあらぁ、驚かせてしまってごめんなさい。私の名前は篠崎志乃。恋に悩める乙女達の恋のキューピッドよ」
(なにこの人)
いきなり現れて恥ずかしげもなく自分の事を恋のキューピッドだと曰う令嬢に私は胡乱気な視線を向けるが、その令嬢……篠崎志乃はそんな私の視線を気にする素振りを見せず、ぷるんと艶やかな唇に指を寄せて言葉を続ける。
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