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しおりを挟む「ミシェラ王女殿下……?」
何も言わずに椅子から立ち上がったミシェラをロベルグは不思議そうな目で見上げるが、ミシェラはそんなロベルグを王族らしい不遜な態度で見下しながらほんのりと赤く色づいた薄い唇を開く。
「……ロベルグ、お前は卑怯ね。本当の自分を見せるのが怖いからってワタクシにこんな二択を迫ったんでしょう?ふん、全く……このワタクシを誰だと思っているの? ワタクシはミシェラ・フォン・アルタルス……この国の次期女王よ!! ありのままのお前を受け入れる余裕くらいあるに決まっているじゃないの!」
フン!と鼻を鳴らし、どうだと言わんばかりに言い切ったミシェラにロベルグは呆気に取られる。が、それも数秒の間の事ですぐにロベルグは「クッ、ククク…」と噛み殺し切れない笑い声を溢したかと思うと「アーハハハッ!」と大声を上げて笑い出した。急に笑い出したロベルグにミシェラは内心ビビるが、ロベルグの笑いは止まらず、今まで溜め込んでいた分を吐き出す様に笑い続け、そして……一頻り笑ったロベルグは目尻に溜まった涙を指で拭いながら憑きものが取れた様なサッパリとした顔で言った。
「ああ……やはりミシェラ王女殿下には叶いませんね。しかし、本当にいいんですか?貴方が思っている以上に『本当のロベルグ』は過激な性格ですよ?」
「ふん、次期女王を舐めないで貰いたいわね。お前の一人や二人受け入れられなくて次期女王が務められるものですか」
フフンと不敵に笑み、ロベルグの懸念を一笑に付すミシェラにロベルグは「ふっ」と柔らかく微笑む。その初めて見る……作り笑いではないロベルグの笑顔に理由もなく頬が熱くなり、ミシェラは困惑したが、ロベルグはミシェラの困惑を見透かした様にそっとミシェラの指に己の指を絡ませると挑戦的な微笑みを浮かべながら笑った。
「フフフッ……ミシェラ王女殿下にここまで言われて本当の自分を見せない訳には行きませんね。では、ミシェラ王女殿下……いや、ミシェラ。明日から覚悟してくれ。君が嫌だと言うほど君を愛し抜いて見せるよ」
チュッとリップ音を立てて、指先に唇を押し当てるロベルグにまたミシェラの頬がまた熱くなるが、素直じゃないミシェラは、
「……ふ、ふーん。ロベルグにしては面白い事を言うじゃないの。一体どうやってワタクシを愛し抜くのか今から楽しみね。ま、まあ……せいぜい頑張るがいいわ」
と、ツンツンした台詞を吐き捨て、ロベルグの手を振り解き、医務室から出て行く。が……その横顔はどこか嬉しそうなものであったと、後々ミシェラはロベルグから直接語られて恥ずかしい思いをする事になるのだが……この時、ミシェラはまだその事を知る由も無かった。
【END】
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