【完結】婚約破棄をしたら悪役令息の性格が180度変わりました

小野

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「!!?」
 
 
 初めて見る……いや、180度違うロベルグの姿にミシェラは声も出せないほど驚愕し、唖然とするが、傍にいるユーリはいつもの感情を全て削ぎ落とした顔とは違うロベルグのキラキラとした爽やかな笑顔に「ヒイィイイ!!」とまるで悍ましい物を見たかの様な悲鳴を上げて、腰を抜かし、後退る。本音を言うのならばミシェラも今すぐ悲鳴を上げて、こちらに駆けてくるロベルグから逃げたかったが、次期女王としてのプライドが敵前逃亡を許さず、引き攣りそうになる表情筋を無理矢理押さえて、駆け寄ってきたロベルグをぎこちない微笑みで迎えた。


「ロ、ロベルグ……ご、機嫌よう……」
 
「おはようございます、王女殿下!……あっ、ユーリ君も一緒にいたんだね!ユーリ君もおはよう!今日も清々しい朝だね!」
 
 
 見た目のみならず口調まで爽やかになっているロベルグにミシェラは「ヒッ」と短い悲鳴を上げて後退りするが、ドン引きしているミシェラに気付いてないロベルグは腰を抜かしているユーリに近付き、ハシッとユーリの手を握ると眉尻を下げて本当に申し訳なさそうな顔をして口を開いた。


「……ユーリ君、今まで君を『気に食わない男爵令息』というだけで虐めてしまってすまなかったね。謝って済まされる事ではないけど、本当にすまなかった。どうか許して欲しい……」

「えっ、アッ、いや、貧困街の連中の虐めに比べたらあんなの全然虐めの内に入らないと言うか……」

「本当かい!?あんな……制服をわざと汚したり、教科書を破ったり、階段から突き落とそうとしたり……酷い事をしたのに……許してくれるというのかい……!?」

「は、はい……それは別に気にしてないので……」

「ちょ、ちょっと!?そんな事までしていたの!?」


 ミシェラが知らない余罪を自白したロベルグはユーリの言葉に「君はなんて優しい男なんだ!ユーリ君!!」と感極まった様に叫び、グスンと鼻を鳴らして涙ぐむ。自分の母親が死んだ時でさえ泣かなかったあのロベルグが涙ぐんでいる事にミシェラは驚きが隠せなかったが、これだけはどうしても聞いておかなければならないと思い、ユーリの手を握り涙ぐむロベルグに向かって怪訝そうな顔で尋ねた。


「……ロベルグ。これは一体何の真似かしら?こんな、お前らしくない……下手な演技をして……」

「あははは、演技じゃありません。……と、言いたいところだけど……ははは、急に変わったから信じて貰えないのも無理はないか。でも、王女殿下どうか僕を信じて欲しい。昨日の王女殿下のお言葉で僕は生まれ変わったのだと……」

「生まれ変わった……ですって?」


 一体この男は何を言っているんだとミシェラは思った。少なくともこの十年間、ずっと無愛想で感情の起伏が殆ど無かった男が一晩でこんな爽やかな好青年に生まれ変わるなんて頭を打ったか、気が狂ったか……それこそ演技でもない限りありえない。そう思ったミシェラはロベルグの言葉に怪訝そうな顔を更に顰めて冷ややかにロベルグを嘲笑った。
 
 
「はっ、人間が一晩で変わるわけないじゃないの。嘘をつくならもっとマシな嘘をつきなさい」
 
「……そうだよね。十年間もあんな……婚約者として相応しくない態度ばかり取っていた僕を信じられないのも分かる。でも、王女殿下。貴女が信じてくれるまで僕は頑張るよ」
 
「ふ、ふんっ!そんな口から出任せを信じられるものですか!ワタクシは絶対にお前の戯言になんか惑わされたりしないわよ!!さっ、ユーリ!こんな男を放ってさっさと行きましょう!」
 
「え?あ、はい」
 
 
 フンッ!とロベルグから顔を背け、肩を怒らせてズンズンと歩き出したミシェラにユーリは何か言いたそうな顔をしていたが、やがて諦めた様に大人しくミシェラの後を追い、学舎の中に入って行ったのだった。



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