【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実

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sideシェルエント公爵

 トントン、部屋をノックする音とともに、レイモンドが入ってきた。

 普通は入室の許可が出てからだが、まあ良い。

「お呼びですか父上。何かありましたか?」

「レイモンド、オーシャン侯爵から打診があったのだが、春の夜会をうちでやるのは知っているな。

 それで、お前に、オーシャン侯爵令嬢の社交界デビューのエスコートを頼みたいそうだ。

 お前は、クライブ伯爵令嬢のエスコートをするから無理だと断ったんだか、そこをなんとかと頼まれた。

 グレイならエスコートできると話したんだが、令嬢がお前じゃないとダメらしい。

 お前、オーシャン侯爵令嬢と知り合いか?」

「知りません。私はディア一筋です。

 顔を知らないときから、政略結婚ならディアのみ、ディアの愛らしさを知ってしまったら、もう彼女しかエスコートしません。

 ダンスもディアだけです。当然断ってください。

 あと、どうして私が、夜会に出ると知っているですか?

 当家の夜会なので、出てもおかしくありませんが、私はまだ学生なので、いない前提ですよね」

「ああ、それはレスター子爵夫人がクライブ令嬢とオーシャン令嬢のダンスの先生だからだ。

 お前がクライブ令嬢とダンスの練習をしていると、オーシャン令嬢に話したらしい。

 レスター子爵夫人は、パートナーが決まっているなら、早めに合わせて練習したほうが良いと話しただけだ。

 まあ、お前のダンスがひどかったから、他の令息も、早く練習させないといけないと、思っただけみたいだがな。

 お前がクライブ令嬢を気に入っているのは知っているから、念のために、レスリー子爵夫人の真意を聞いておいた。どうする」

「どうするも何も、私はディアのエスコートしかしません。

 それに、すでにディアのパートナーが私だとわかっていながら頼むのはどういう神経しているですか。

 もし、オーシャン侯爵がクライブ伯爵に圧力をかけて、エスコートを辞退するよう持っていこうとしたら、私は夜会に出ることはないでしょう。

 ディアが他の男性と踊るところを見るなんて、まっぴらごめんですよ」

「なら、早くクライブ令嬢の心をお前に向かせることだな。婚約前提のエスコートと言えば引き下がるだろうから」

 まあ、クライブ令嬢の様子をグレイから聞いているから夜会までに婚約して持っていくのは難しいだろうな、なら婚約前提ならまだ希望がありそうだ。

 私自身、あの兄弟を気に入っているからな。

 令嬢は、うさぎのポポちゃん。令息はリスのムーちゃんにそっくりだ。

 晩餐の時、クライブ令息が気になったのは、昔私が、飼っていたリスのムーちゃんに雰囲気が似てるからだろうな。

 茶色髪と頰いっぱいに食べ物を詰め込む姿が似てるんだ。

 私とレイモンドはよく似ているからなあ、可愛らしい生き物に弱いんだ。

 クライブ伯爵は弟の親友だった男だ。だから、その家族なら信用できる。

 私のローズとも仲良くやってくれるだろう。そもそも、偏屈のレイモンドが結婚したいという相手が一番いいのだ。
クライブ令嬢の気持もあるから、無理強いはしたくない。

「デートとか誘ってみたらどうだ」

「速攻で断られます。だから毎週ダンスの練習で会ってお茶をして、警戒を解こうかと思ってます。

 年末の祭りもグレイとフレディも一緒ですが、行くことになってます。

 とにかく、オーシャン侯爵令嬢はおことわりです。父上が責任持って対処してください」

 ノックの音と共に、愛しのローズが入ってきた。

 親子揃って入室の許可なく入ってくる。レイモンドのそういうところは、ローズに似たのだなあ。

「私も、しっかり断ってきましたわ。

 オーシャン侯爵夫人と令嬢に会ってお願いされましたけど、きっぱり断りました。

 私は、オーシャン侯爵令嬢よりクライブ伯爵令嬢の方が直感的に好きですもの。私の直感は当たるわ。

 オーシャン令嬢では、レイモンドが幸せになれない。レイモンドをアクセサリーみたいに見ているのがまるわかりなのよ。絶対に無理。

 私はレイモンドが幸せになって欲しいの。それに、偏屈なレイモンドがクライブ令嬢が良いというんですもん。

 旦那様もしっかりお断りしてくださいね」

「もちろんだ、ローズ。

 私が君の嫌がる事をしたことはないだろう。いつ帰ってきたんだい?お帰り。さあ、こちらに座って、疲れただろ。

 レイモンド、もう行っても良いぞ」

 オーシャン令嬢の事は、レイモンドに任せて放置しようと思ったが仕方がない。

 オーシャン侯爵に速攻で断ろう。

 ローズに嫌われたくないからな。
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