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sideグレイ

 馬車が出発したので、思わず僕は父上と母上にどうだったか尋ねた。

「とっても美味しかったわ。飾りつけもキレイで、もっと食べたかったわ」

「うん、凄く美味しかった。伯爵が食べないなら、それも欲しいと言いたいのを、グッと我慢したよ。

 でもお土産のケーキも貰ったし、満足したよ。

 屋敷に帰ったら、キッチリ4等分しよう。

 レイモンドにはケーキを別で食べたのを秘密にしよう。

 食べたのを知られたら、このケーキ、全部食べられてしまう」

「父上も母上もケーキの感想を聞いたのではありません。

 クライブ伯爵家の雰囲気と令嬢を見るために、訪問したのです」
 
 確かにケーキは美味しかったが、本来の目的を忘れてもらっては困る。

 母上は兄上をパートナーにと言っていたので、どう感じたか聞いておきたい。

「母上はパートナーの話をされてましたが、令嬢から何か感じるものがありましか?

 今後の為に詳しく教えて下さい」

「ええ、そうですね、フルーツケーキがあまりにも美味しくて、レイモンドがパートナーになれば、頻繁に食べれるかもと思いました。

 レイモンドも喜ぶかなって、ダメだったかしら」

「いいと思うよ。実に素晴らしい考えだよローズ。流石は私のローズだね」

  二人で見つめあい、微笑みあっている。この二人は、もうこのままにしておこう。

 僕は、お菓子ではなく令嬢の事を聞きたい。しかし、この二人はどうやら、ケーキしか見てなかったんだろう。

 僕は、しっかり令嬢を観察してたが、確証は得られなかった。

 ただ、伯爵夫妻とフレディは緊張していたが、令嬢はポーカフェイスが上手いのか、始終平常心にみえた。

 ただ、父上達が、ケーキを何回もお代わりをして美味しいと、言ったときは、嬉しそうな顔をしていた。

 だから、ケーキのレシピは令嬢が考えているのではと思ったが、父上達の食いっぷりに、クライブ伯爵家族に、カマをかける話が出来なかったのだ。

 結局、買物などないので、屋敷にそのまま帰った。

 ケーキが傷むと言う言葉が、心配なのか、すぐにティータイムになった。

 父上が言った通りの4等分に切り分けて皿に盛り付けてある。

 母上が言うように、クライブ伯爵家の盛り付けは素晴らしかった。

 センスの良さと、より美味しくみせる効果がある。

 兄上は、初めの一口を食べた瞬間に、すごい勢いで食べてしまった。

「このお菓子は、フレディが持ってきてくれたシュークリームと同じクリームが使ってある。

 このお菓子をどうしたのですか?」

「買物をしてたら、フレディにあったから、晩餐のお礼に貰ったのだ」

 父上、しれっと真実を混ぜながら本当の事を言わない話術、だが、父上と兄上は同じ性質をもつ仲間、騙される事はないみたいだ。

「お礼に貰ったは良しとしましょう。

 しかし、食べるペースが父上のペースではないですね。

 普段、初めて食べる美味しいものは、取られる前にあっという間に食べます。

 私が初めて今日食べたのですから当然父上も初めてのはずです。 

 それなのに、味を知っているかのように、味わって食べてますよね。

 これ以外に、どこで食べたのですか?」

 何故、父上無言なのですか?面倒くさいと思い、無言で通そうとしてますね。

 父上がダメなら母上ですよね、でも母上も違う方向を向いて兄上と目線を合わせようとしません。

 最後は当然、僕ですよね。仕方がない。

「兄上、実は3人で買物にでたのですが、行く方向がフレディの家の方だったのです。

 フレディに課題の事が聞きたくて、僕が寄りたいと言って行きました。

 僕だけ降りて聞くつもりが、伯爵夫妻がみえたので、父上達も挨拶をと言うことになり、一緒にお茶をしました。

 その時に、このフルーツケーキが出まして、兄上がおっしゃる通りケーキを食べるのは僕達は二度目です」 

「じゃあ、この4等分されたケーキは、本来、私が食べる分ではないか?」

「兄上、それは違うと思いますが、お菓子好きの兄上としては残念に思う気持ちもわかります。

 少し、手をつけてしまいましたが、良かったら僕の分もどうぞ」

 兄上にそう言うと、それは嬉しそうな顔でケーキを食べ始めた。

 美味しいケーキだが、クライブ伯爵家で、沢山食べてきたので、お腹が一杯なのだ。

 父上と母上は、あんなにお代わりしたのに、すでに食べ終わっていた。

 僕が兄上に説明をしてる間に、急いで食べたのがまるわかりだった。よほど急いで食べたのか、口の端にクリームがついてますよ。

 今回思ったことは、クライブ伯爵家の事は、父上や母上に相談してはいけないということがわかった。
 
 相談したら、お菓子食べたさについてくる可能性があるからだ。

 やはり、兄上の親だけはある。お菓子につられてパートナーとは、少し頭が痛くなった一日だった。
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