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sideフレディ

 学院の新学期が始まった。グレイとの生活は思ったより快適に過ごせた。
 最初の一週間は、胃が痛くて仕方がなかったが、初日の王子殿下やレイモンド先輩のときの緊張よりかは、ましではないかと思ったら、気さくに対応が出来るようになった。
 流石に、殿下は僕達の部屋には来ないが、レイモンド先輩は、暇さえあれば部屋を訪ねてくる感じだ。
 会う回数が増えて、緊張もしなくなってきた。

 レイモンド先輩は、イブのお菓子が大好きで、クッキー缶をだすと、それは嬉しそうな顔をする。
 姉様が甘いものは人の心を和ませるとよく言っていたのを思い出す。 
 本当は、この美味しいお菓子を作ったのは姉様ですと自慢したいけど、身分がある人は厨房に入らずと言われているから、姉様が作ったことを隠さないといけないんだ。
 レイモンド先輩は、僕の名前が書いてある缶がすごく気になるらしく、よくあの缶にはどんなクッキーが入っているんだろかと聞いてくる。
 人参が嫌いな僕の為に人参を練り込んだクッキー、人参嫌いがバレると恥ずかしくて、いつも言葉を濁していた。
 授業が終わり、グレイがいない部屋でくつろいでいた時に、レイモンド先輩が来たのだ。
 いつもならグレイがいるので、何か失敗してもフォローしてくれるから大丈夫だと安心していた。
 僕だけならレイモンド先輩も帰るだろうと、グレイの不在を告げたのだが、レイモンド先輩はグレイは関係ないと言う。

「良かったら、お茶とクッキーでも。あ、夕食前だから、お茶だけにしましょうか?」

「気を使わせてしまって、済まない。できたら、クッキーも食べたい。
 今日の昼のメニューは野菜が多いから、お腹が空いているんだ。
 野菜嫌いな生徒もいるんだから、全員同じメニューではなく、選べるのがいいんだが、なかなか難しい」

「レイモンド先輩、野菜が嫌いなんですか?
 実は僕も人参が嫌いで……あ、そうだ、先輩いつも僕の名前が書いてある缶気にしてたじゃないですか、良かったら食べますか?
 人参嫌いな僕の為に、人参を練りこんだクッキーなんですよ。
 ちょっと人参の味がするけど、食べやすく美味しいんですよ」

「人参を練り混んだクッキー、ぜひ食べてみたい」 

 レイモンド先輩も野菜嫌いと聞いて、安心して人参クッキーが出せる。
 僕には美味しく感じたけど、レイモンド先輩はどうかな。
 レイモンド先輩をみると、次から次に食べている。
 
 人参の味がするけど美味しいよね。

「レイモンド先輩、美味しいですか?良かったです。
 人参の味が結構しますけど、あまり気にならないんですよ。僕の体を考えて作ってくれたんです」

「すごい、野菜が全部嫌いな私でも食べれる。他に、野菜クッキーはないのだろうか?」

「僕が人参だけは苦手で、後は食べれるので、野菜クッキーはこの味だけです。
 えっと、出来るかどうかはわかりませんが、今度帰ったときに野菜クッキーの他の味が出来ないか聞いてみます。
 やはり先輩も、野菜嫌いを克服したいですよね。僕もこの人参クッキーを食べてからは、少し人参が食べられるようになったんです。
 だから、野菜クッキーから少しずつ克服するのもいいかもしれませんね」

「フレディ、ありがとう。ぜひ、頼みたい。この人参クッキーはイブで売り出さないのか? 野菜嫌いな子息がいる貴族は買うと思うのだか」

「うん、どうでしょう。もともと、イブを初めたのも、去年領地が不作で、税の立替を伯爵家でしまして、恥ずかしながら、うちはそこまで裕福な領地ではないので、僕の学院の学費をあてるしかなかったんです。
 学費を稼ぐために、お菓子を販売をし、学費が払えたので、そこまで新作にこだわらないかもしれません。
 でも、新作を楽しみにされているなら、イブでは販売しなくても、あるかもしれないので、今度持ってきますね。
 やはり、店に出すなら沢山作らないといけないんですが、量産が難しいお菓子も沢山あるみたいです。
 だから、レイモンド先輩がそこまで好きなら、今度持ってきます」

 レイモンド先輩の顔がみるみる輝いて行くのは、僕の見間違いなのだろうか。
 例えが悪いかもしれないけど、大型犬が尻尾を振って、喜んでいる感じだ。

 最初は、すっごく緊張したけど、こうやってお菓子を一緒に食べていると、お兄様みたいな感じで不思議だなあ。
やはり姉様の言う通り、甘いものは人を和ませるんですね。
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