発展途上 ー3rd Place.ー

七部(ななべ)

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第一話 君の名も。

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『君の名前って何だっけ?』










内倉優一は小学校の卒業式が終わった小学校6年生。4月から中学一年生。今は春休みの期間。この季節になると人々は新しいことに挑む。例に漏れず僕も勉学とは疎遠だったので親に言われてこの春から塾に通うことになった。春季講習とかやらで。
僕はこのことについて猛反対。
塾に行くこと自体には賛成なんだけど、僕が反対してる理由は、『友達』にいある。そもそも僕の通う塾には知ってる人が誰もいない。だから嫌なんだ。まあ、無理矢理行く羽目になったんですけどね。そしてその日が今日、って訳。
3月27日月曜日。なんの変哲のない1週間の幕開けになる予定だったけど、地獄の1週間の幕開けになった。
朝ごはんを食べてちょっとしたらもう15時。塾が16時から19時までの3時間ある。実にクソだ。
この1時間、肌は赤くても心が蒼白。周りから誰コイツ?ってなるだけだ。
15時半。僕は家を出て自転車を漕いだ。一漕ぎ一漕ぎ本当は動きたくないけど脳のなんたら神経とやらが勝手に動かしてる。信号だけが救い。いつもなら目の前で赤になったらついてないと思うけど今日はついてると思える。感情が逆転してる日。
案の定、信号に捕まるのも二つだけ。
目の前には山城セミナーの文字。すぐ塾に着いたということになる。塾に入ると『こんにちは!』っていう受付の人の声でお出迎え。ちっちゃい声で『こんにちは』と返した。そんな声聞こえてるはずもなく、すぐさま僕は受付の人の案内によって僕が受ける教室に入った。
1番後ろの隅っこにちょこんと座る。周りには陽キャ男子2人と陽キャ女子2人の複合グループで出来上がってる。
気まずいというのは基本、一対一の関係で発動する、この場合は一対複数、リンチという関係の出来上がり。
男子たちが僕という薄い存在に気づいたらしい、すぐそっぽ向いて…というわけではなく、僕に話しかけてきた。
「君さ、今日から来たの?」
「うん。」
「へー。そーなんだ。」
そう言ってまた陽キャたちは陽キャたちと会話してた。こそこそ聞こえるけどコイツらは僕と同じ春江第五中に行くらしい。尚更気まずい関係の出来上がりじゃないか。
僕は下を見てるだけだった。
何か思ってもないのに前を見た僕。すると、陽キャ女子1人と目が合った気がした。いや、確実に目があったんだ。
それはくっきりしたようで淡いような、言葉で表せなかったほどに可愛い瞳、顔であった。
ほんの1秒にも満たない時間だけ、目が合ったが、その一瞬に一瞬とは思えない体験が詰め込まれてた。
だけど僕はこのあんまりにも可愛かったあの女の子の名前すら知らない。ただひとつだけ言うなら、あの子と僕は同じ中学校に行くと言うことだけ。
こんなトッピングかけられて、もっともっと複雑な関係の出来上がり。窓の外見るともう辺りは暗かった。だけど北極星は眩しい程に綺麗に視えたんだ。
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