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題名のない3年間。
第十九話 二十一番目の染色体
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柚愛「いつにする、遊園地いくの?」22:22
「うーん。9日に境第二の受験あるから、10日の土曜でいい?」22:24
「どこにする?」22:24
柚愛「おっけー。場所はね、ちょっと遠いけど名古屋にあるバブーンパークでもいい?」22:24
「ずっとこーたろーと行きたかったんだよね!」22:24
「オッケー。んでさ、榎本と伊丹さんも誘うんだっけ?」22:24
柚愛「もちろん。あたし咲ちゃん今から誘うね!」22:24
「うん。榎本誘っとくわ。」22:25
「榎本行けるって!」22:37
柚愛「咲ちゃんも行けるそう!」22:39
「おけ、時間とか明日でいい?勉強しないと。」22:39
柚愛「おっけー。頑張ってっ!」22:40
3月1日のできごと。他のみんなは受験が終わり、卒業という悲しみの式典から目を背けているが、僕は未だ受験に背けることができていない。それも8日も。卒業式が19日に控えてあるものだから、僕は10日ほどしか悲しみの式典への心の準備ができないのである。
今まで以上に鉢巻を締め直して勉強、いや違う受験勉強をしている。相手は境第二のみ。合格率は75%以上と高いが、近年倍率を上げており、去年の倍率は3.03倍と2年前より30%も上昇している人気急上昇校だ。
でも大丈夫。今の僕には何もないのである。所謂ところの透明人間である。一度失敗を経験すると人間はいい意味で開き直り、緊張というものを忘れてしまうようになるものだ。その一例に僕も漏れていない。明保野中央という圧から抜け出した僕にはもう目の前にある境第二に猪突猛進する以外に他はない、絶対に。
3月9日。
ー流れる季節の真ん中で、ふと長さを感じる。せわしくすぎる日々の中に私とあなたで夢を描く。3月の風に想いを乗せて、桜のつぼみは春へと続くー
何かどこか誇らしい顔つきへ会場へ向かう。僕の後続には僕と同じような顔つきをした人が1人いた。気が合いそうだ。誰だか分かりそうにないから、一緒に入学できたものならせーので答え合わせをしたいね。
席に着く。寒さなんて感じていない。校舎の外の桜を見る。もう咲きそうな桜のつぼみ達。その答えを知るのは合否が分かってから。
数学のテスト用紙が配られる。
『始め!』
境第二の数学はトリッキーである。なにより過去5年間の過去問がそれを証拠づけている。大問が3つしかなく、そのどれもが文章が長く、全てを読み終えてからではないと計算に進むことができない。それを加味しても50分。家では47分で時終わる。が3分でしか見直しができないのである。
大問1、2はなんなくでき、大問3に入る。
(図形の問題!?え、ここ5年間で図形なんて一度も出てきてないのに)
あわやの出来事で混乱する。えーっと、点QとSが1秒に2cmで、Rが2秒に1回停止する?駄目だ、どうしよう。
天井を一度見上げる。すると、ある会話ぽとんっと降ってきた。
(境第二さ、調べたんだけど、ここ8年も同じような傾向の問題ばっかだよ。でも最近人気上がってるでしょ?どうにか振り落とそうとしてくると思うの。だからワンチャン図形問題とかでるかもよ。気をつけて。)
柚愛との会話だった。本当に当たったのだ、ゆあの助言が。何気ない通話越しの電話だったけど、聞き流す事なんてしなかった。
『終わり!ペンを置いて下さい。解答用紙を回収します。』
出だしの数学を上出来で終わらせたのだ。初めてこの受験で芯から嬉しいと思えた気がした。
私立の受験なので、残りの国語、英語を終わらせて、午前中のまま最後の受験が終わった。
境第二中学校がある名古屋は、大都会でビル群やお洒落な店がたくさんある。高校生活はここで過ごすのか、悪くはないなと思う。
電車を降りて、自転車で最寄り駅から家まで帰る途中のこと。
「あ、柚愛じゃん!」
柚愛「あ、こーたろー!どうだった?境第二?」
「なんとかできたわ。とうか数学、図形でた。」
柚愛「ほんと!?予想的中じゃん、私のおかげ?」
「うん。おかげ、ありがとう。」
柚愛「www、いいのいいの。明日楽しみだね、じゃあね!」
「うん、じゃあね!」
なんだか嬉しくなった。柚愛への想いが届いてなかったあの頃に戻った気がした。モジモジしてた日々の連続。楽しみだね!と自分への想いが相手から届いた時に、キュンと心にくるものがある。これが恋だった。でも今は恋はしてない。恋は。今は愛してるんだ。恋は小さなことで壊れるから、脆いものだけど、愛は心が真ん中にあるから、支え合って生きていくから。
3月10日。卒業シーズンは色々なことが最後の⚪︎⚪︎になる。今日は最後のデートになるかもしれない、遊園地デートがある。
7時駅集合の5時起床。辺りは真っ暗、街灯の灯りは出力最大。
髪の毛を整えて、朝ごはんはそんなに要らない、歯磨きは念入りに。
6時半の空。ぼんやり太陽が東から登ってくる、まだ今日は始まったばっかりだ。
「行ってきます!」
と告げ、家を出る。いつもの待ち合わせ場所で柚愛がいる。
柚愛「こーたろー!おはよう。」
「おはよう、柚愛。」
柚愛「なんか名前呼んでもらったの久しぶりかも。」
「そう?」
手を繋いで、足取りは重くて、気分は上々で。ぶち上げたい日。
駅に着く。まだ、榎本と伊丹さんはいない。
柚愛「ねえ、寒いね。」
「うん、そうだね。」
手をちょっと強く握る。そうすると、そちらも強く握り返される。
柚愛「www、そーゆーことじゃないw」
「どういうこと?じゃあw」
柚愛が背後に回ると、いきなり抱きついてくる。
「www、ちょっとぉw」
榎本「やっほー!ごめん、ちょっと遅れた。って…」
伊丹「きゃぁぁぁ!柚愛ちゃんと社くん、ハグしてるじゃん!!」
「ち、違う、これはさぁ!」
こんなことで笑える日もあと両手で数えるほどしかない。ひと刹那を噛み締めてる。
ICカードをかざし、改札からホームに出ると、まるで僕らを出迎えてくれたかのように電車が来た。
「人多いね。あと10何駅もあるんでしょ?」
柚愛「そうだよ。確か1時間半以上はかかるんだって。」
「まあいっか。こんな時間も楽しいもんね。」
電車は名古屋に近づくにつれどんどん都会になっていく。境第二に向かう時と同じように。都会の風景はどこか冷たいイメージがあるが、そこで過ごす3年間はさぞ楽しいことなんだろう。
柚愛「ついたー!みんな、チケット出して!」
遊園地の中に入る。
「最初何する?」
榎本「とりま人気のジェットコースターでよくね?」
伊丹「ほんとに!?私怖いから無理かも。」
柚愛「榎本くんに守ってもらいなよ、こーたろーはわたしが守るから。」
「どうゆうことだよ!確かにジェットコースター怖いけど、」
柚愛「ほんとこの人絶叫系苦手なんだよ咲ちゃん。」
伊丹「そうなんだー。あれ、柚愛ちゃん顔赤いよ??」
柚愛「そんなことないっ!」
朝だから人気のジェットコースターも待ち時間は15分しかない。15分、900秒という時間は短いものですぐ僕らの番になる。
柚愛「こーたろー!しっかり私に捕まって!」
「はいぃぃ!」
『それではみなさん、行ってらっしゃーい!」
「まってまって、めっちゃ高いよ!?高いよこれ!?山見えるよ!!」
柚愛「こーたろー。私のこと見ておけばいいんだよ?」
伊丹「きゃぁぁぁ!!!尊いよこのカップル。」
柚愛「もぉぉ!それどういうこと?!」
榎本「俺も怖いかも。助けてぇ!」
『きゃぁぁあ!!!』
コースターは一気に加速し、下降する。下降したかとおもうと、グワングワンに横に周り、そして一回転。
「一回転は聞いてないって!本当に怖い。助けて柚愛!」
柚愛「こーたろーマジで怖がりすぎw」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
「ようやく終わった。マジで死んだかと思った。」
柚愛「ほんとこーたろ怖がりすぎw遊園地恐怖症じゃんw」
午前はジェットコースターやロデオとおう絶叫系を明るいうちに済ましておいた。
伊丹「昼食はさ、私ハンバーガー食べたいんだけど、いい?」
柚愛「私も行きたいと思ってたんだよね!ここのハンバーガー有名だよね。」
『いただきます!』
僕はチーズハンバーガーを頬張る。正午の太陽は南に構えていて、眩しく感じるが、辺りはまだ寒く感じる。でも柚愛はそんな眩光をもろともせず、はっきりと見える。
柚愛「次2時からショーあるからさ、みんなで見よう!」
「おっけー。どこが見やすいかな?」
地図を両手に、みんなに見えるようにして、みんなは手で僕の掲げた地図を指すようにして。
「始まったよ!これが1番落ち着くわ。」
柚愛「wwwこーたろーやっぱりかっこいいというよりかわいいね。
榎本「なあ伊丹。お前はやっぱり三河高いくんやろ?」
伊丹「うん。瞬は堂園学園でしょ。はなればなれだね。」
榎本「そういうことだね。」
この会話を自分にも当てはめてみる。自分も柚愛とははなればなれにはなる。
一瞬、柚愛と目が合う。
伊丹「ショー終わったね。これからはさ、別行動にしようよ。ね?」
柚愛「賛成!」
「うん。6時にここに戻ってこようか。」
榎本「了解!」
『じゃあね~』
「ねえ、柚愛。僕たちもさ、はなればなれになるよね。」
柚愛「うーん。そうなるよね。私は明保野中央行く気だからさ。」
「そうだね。なんか、ほんともうすぐで卒業だけど、まだまだ中学生な気がして。」
柚愛「私もそう思う。一生中学生でいいくらい。」
また手を繋いで歩く。足の息はぴったりで向かう先は観覧車ー
観覧車に先に柚愛を乗せてから自分を乗せる。まるで2人の思い出手回る観覧車。想いを馳せて天高く回ってゆく。
「柚愛を初めて知った時、この人なんだって思ったんだよね。一目惚れって感じ?」
柚愛「私も思ったんだよね。社晃汰郎。この人なんだって。」
「そっか。」
観覧車はどんどん上がってゆく。夕陽が沈んでいき、観覧車からの地平線と一直線になろうとしている。
(これって、キスする流れかな?)
柚愛の顔は今までにないくらい赤い。
そして榎本に言っちゃったんだ。
一昨日
榎本「え!?キス!?」
「馬鹿、うるせぇ。」
榎本「そっか。キスか。観覧車のてっぺん。王道だねぇ!」
って感じで。こんな時に男ぶるのはなんだけど、男に二言はないから。
夕陽はどんどん赤くなっていく。呼応するかのように、柚愛の顔も。また、一瞬目が合ったその時。
『………///!!!』
高速で柚愛の顔を目掛け、気持ち悪いかもしれないけど、初めてのキスをした。
1秒、2秒、3秒。
そっと、口を離す。当然、僕も柚愛も黙りこくっている。
不意に柚愛が口を開く。
「こーゆーとこかっこいい。」
夕陽は沈んで日の入りがこの観覧車で迎えられた。そして今宵始めのキスを奪った。何も残すものはもうないから。
ーCuz I wanna be with you.ー
「うーん。9日に境第二の受験あるから、10日の土曜でいい?」22:24
「どこにする?」22:24
柚愛「おっけー。場所はね、ちょっと遠いけど名古屋にあるバブーンパークでもいい?」22:24
「ずっとこーたろーと行きたかったんだよね!」22:24
「オッケー。んでさ、榎本と伊丹さんも誘うんだっけ?」22:24
柚愛「もちろん。あたし咲ちゃん今から誘うね!」22:24
「うん。榎本誘っとくわ。」22:25
「榎本行けるって!」22:37
柚愛「咲ちゃんも行けるそう!」22:39
「おけ、時間とか明日でいい?勉強しないと。」22:39
柚愛「おっけー。頑張ってっ!」22:40
3月1日のできごと。他のみんなは受験が終わり、卒業という悲しみの式典から目を背けているが、僕は未だ受験に背けることができていない。それも8日も。卒業式が19日に控えてあるものだから、僕は10日ほどしか悲しみの式典への心の準備ができないのである。
今まで以上に鉢巻を締め直して勉強、いや違う受験勉強をしている。相手は境第二のみ。合格率は75%以上と高いが、近年倍率を上げており、去年の倍率は3.03倍と2年前より30%も上昇している人気急上昇校だ。
でも大丈夫。今の僕には何もないのである。所謂ところの透明人間である。一度失敗を経験すると人間はいい意味で開き直り、緊張というものを忘れてしまうようになるものだ。その一例に僕も漏れていない。明保野中央という圧から抜け出した僕にはもう目の前にある境第二に猪突猛進する以外に他はない、絶対に。
3月9日。
ー流れる季節の真ん中で、ふと長さを感じる。せわしくすぎる日々の中に私とあなたで夢を描く。3月の風に想いを乗せて、桜のつぼみは春へと続くー
何かどこか誇らしい顔つきへ会場へ向かう。僕の後続には僕と同じような顔つきをした人が1人いた。気が合いそうだ。誰だか分かりそうにないから、一緒に入学できたものならせーので答え合わせをしたいね。
席に着く。寒さなんて感じていない。校舎の外の桜を見る。もう咲きそうな桜のつぼみ達。その答えを知るのは合否が分かってから。
数学のテスト用紙が配られる。
『始め!』
境第二の数学はトリッキーである。なにより過去5年間の過去問がそれを証拠づけている。大問が3つしかなく、そのどれもが文章が長く、全てを読み終えてからではないと計算に進むことができない。それを加味しても50分。家では47分で時終わる。が3分でしか見直しができないのである。
大問1、2はなんなくでき、大問3に入る。
(図形の問題!?え、ここ5年間で図形なんて一度も出てきてないのに)
あわやの出来事で混乱する。えーっと、点QとSが1秒に2cmで、Rが2秒に1回停止する?駄目だ、どうしよう。
天井を一度見上げる。すると、ある会話ぽとんっと降ってきた。
(境第二さ、調べたんだけど、ここ8年も同じような傾向の問題ばっかだよ。でも最近人気上がってるでしょ?どうにか振り落とそうとしてくると思うの。だからワンチャン図形問題とかでるかもよ。気をつけて。)
柚愛との会話だった。本当に当たったのだ、ゆあの助言が。何気ない通話越しの電話だったけど、聞き流す事なんてしなかった。
『終わり!ペンを置いて下さい。解答用紙を回収します。』
出だしの数学を上出来で終わらせたのだ。初めてこの受験で芯から嬉しいと思えた気がした。
私立の受験なので、残りの国語、英語を終わらせて、午前中のまま最後の受験が終わった。
境第二中学校がある名古屋は、大都会でビル群やお洒落な店がたくさんある。高校生活はここで過ごすのか、悪くはないなと思う。
電車を降りて、自転車で最寄り駅から家まで帰る途中のこと。
「あ、柚愛じゃん!」
柚愛「あ、こーたろー!どうだった?境第二?」
「なんとかできたわ。とうか数学、図形でた。」
柚愛「ほんと!?予想的中じゃん、私のおかげ?」
「うん。おかげ、ありがとう。」
柚愛「www、いいのいいの。明日楽しみだね、じゃあね!」
「うん、じゃあね!」
なんだか嬉しくなった。柚愛への想いが届いてなかったあの頃に戻った気がした。モジモジしてた日々の連続。楽しみだね!と自分への想いが相手から届いた時に、キュンと心にくるものがある。これが恋だった。でも今は恋はしてない。恋は。今は愛してるんだ。恋は小さなことで壊れるから、脆いものだけど、愛は心が真ん中にあるから、支え合って生きていくから。
3月10日。卒業シーズンは色々なことが最後の⚪︎⚪︎になる。今日は最後のデートになるかもしれない、遊園地デートがある。
7時駅集合の5時起床。辺りは真っ暗、街灯の灯りは出力最大。
髪の毛を整えて、朝ごはんはそんなに要らない、歯磨きは念入りに。
6時半の空。ぼんやり太陽が東から登ってくる、まだ今日は始まったばっかりだ。
「行ってきます!」
と告げ、家を出る。いつもの待ち合わせ場所で柚愛がいる。
柚愛「こーたろー!おはよう。」
「おはよう、柚愛。」
柚愛「なんか名前呼んでもらったの久しぶりかも。」
「そう?」
手を繋いで、足取りは重くて、気分は上々で。ぶち上げたい日。
駅に着く。まだ、榎本と伊丹さんはいない。
柚愛「ねえ、寒いね。」
「うん、そうだね。」
手をちょっと強く握る。そうすると、そちらも強く握り返される。
柚愛「www、そーゆーことじゃないw」
「どういうこと?じゃあw」
柚愛が背後に回ると、いきなり抱きついてくる。
「www、ちょっとぉw」
榎本「やっほー!ごめん、ちょっと遅れた。って…」
伊丹「きゃぁぁぁ!柚愛ちゃんと社くん、ハグしてるじゃん!!」
「ち、違う、これはさぁ!」
こんなことで笑える日もあと両手で数えるほどしかない。ひと刹那を噛み締めてる。
ICカードをかざし、改札からホームに出ると、まるで僕らを出迎えてくれたかのように電車が来た。
「人多いね。あと10何駅もあるんでしょ?」
柚愛「そうだよ。確か1時間半以上はかかるんだって。」
「まあいっか。こんな時間も楽しいもんね。」
電車は名古屋に近づくにつれどんどん都会になっていく。境第二に向かう時と同じように。都会の風景はどこか冷たいイメージがあるが、そこで過ごす3年間はさぞ楽しいことなんだろう。
柚愛「ついたー!みんな、チケット出して!」
遊園地の中に入る。
「最初何する?」
榎本「とりま人気のジェットコースターでよくね?」
伊丹「ほんとに!?私怖いから無理かも。」
柚愛「榎本くんに守ってもらいなよ、こーたろーはわたしが守るから。」
「どうゆうことだよ!確かにジェットコースター怖いけど、」
柚愛「ほんとこの人絶叫系苦手なんだよ咲ちゃん。」
伊丹「そうなんだー。あれ、柚愛ちゃん顔赤いよ??」
柚愛「そんなことないっ!」
朝だから人気のジェットコースターも待ち時間は15分しかない。15分、900秒という時間は短いものですぐ僕らの番になる。
柚愛「こーたろー!しっかり私に捕まって!」
「はいぃぃ!」
『それではみなさん、行ってらっしゃーい!」
「まってまって、めっちゃ高いよ!?高いよこれ!?山見えるよ!!」
柚愛「こーたろー。私のこと見ておけばいいんだよ?」
伊丹「きゃぁぁぁ!!!尊いよこのカップル。」
柚愛「もぉぉ!それどういうこと?!」
榎本「俺も怖いかも。助けてぇ!」
『きゃぁぁあ!!!』
コースターは一気に加速し、下降する。下降したかとおもうと、グワングワンに横に周り、そして一回転。
「一回転は聞いてないって!本当に怖い。助けて柚愛!」
柚愛「こーたろーマジで怖がりすぎw」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
「ようやく終わった。マジで死んだかと思った。」
柚愛「ほんとこーたろ怖がりすぎw遊園地恐怖症じゃんw」
午前はジェットコースターやロデオとおう絶叫系を明るいうちに済ましておいた。
伊丹「昼食はさ、私ハンバーガー食べたいんだけど、いい?」
柚愛「私も行きたいと思ってたんだよね!ここのハンバーガー有名だよね。」
『いただきます!』
僕はチーズハンバーガーを頬張る。正午の太陽は南に構えていて、眩しく感じるが、辺りはまだ寒く感じる。でも柚愛はそんな眩光をもろともせず、はっきりと見える。
柚愛「次2時からショーあるからさ、みんなで見よう!」
「おっけー。どこが見やすいかな?」
地図を両手に、みんなに見えるようにして、みんなは手で僕の掲げた地図を指すようにして。
「始まったよ!これが1番落ち着くわ。」
柚愛「wwwこーたろーやっぱりかっこいいというよりかわいいね。
榎本「なあ伊丹。お前はやっぱり三河高いくんやろ?」
伊丹「うん。瞬は堂園学園でしょ。はなればなれだね。」
榎本「そういうことだね。」
この会話を自分にも当てはめてみる。自分も柚愛とははなればなれにはなる。
一瞬、柚愛と目が合う。
伊丹「ショー終わったね。これからはさ、別行動にしようよ。ね?」
柚愛「賛成!」
「うん。6時にここに戻ってこようか。」
榎本「了解!」
『じゃあね~』
「ねえ、柚愛。僕たちもさ、はなればなれになるよね。」
柚愛「うーん。そうなるよね。私は明保野中央行く気だからさ。」
「そうだね。なんか、ほんともうすぐで卒業だけど、まだまだ中学生な気がして。」
柚愛「私もそう思う。一生中学生でいいくらい。」
また手を繋いで歩く。足の息はぴったりで向かう先は観覧車ー
観覧車に先に柚愛を乗せてから自分を乗せる。まるで2人の思い出手回る観覧車。想いを馳せて天高く回ってゆく。
「柚愛を初めて知った時、この人なんだって思ったんだよね。一目惚れって感じ?」
柚愛「私も思ったんだよね。社晃汰郎。この人なんだって。」
「そっか。」
観覧車はどんどん上がってゆく。夕陽が沈んでいき、観覧車からの地平線と一直線になろうとしている。
(これって、キスする流れかな?)
柚愛の顔は今までにないくらい赤い。
そして榎本に言っちゃったんだ。
一昨日
榎本「え!?キス!?」
「馬鹿、うるせぇ。」
榎本「そっか。キスか。観覧車のてっぺん。王道だねぇ!」
って感じで。こんな時に男ぶるのはなんだけど、男に二言はないから。
夕陽はどんどん赤くなっていく。呼応するかのように、柚愛の顔も。また、一瞬目が合ったその時。
『………///!!!』
高速で柚愛の顔を目掛け、気持ち悪いかもしれないけど、初めてのキスをした。
1秒、2秒、3秒。
そっと、口を離す。当然、僕も柚愛も黙りこくっている。
不意に柚愛が口を開く。
「こーゆーとこかっこいい。」
夕陽は沈んで日の入りがこの観覧車で迎えられた。そして今宵始めのキスを奪った。何も残すものはもうないから。
ーCuz I wanna be with you.ー
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