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七部(ななべ)

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題名のない3年間。

第十四話 15の聖夜は時既に満ちて、

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12月24日。今日はクリスマスイブ。世間はクリスマススポットでデート真っ盛り。だが今の僕の辞書にはそんな言葉知らない。12月25日のクリスマス特訓。12月31日~1月3日までの3ヶ日合宿。塾で過ごすんだ。
だから今日、12月24日は地獄の日の1日前としか考えられん。
こんなにも憂鬱になったクリスマスイブはあっただろうか。
12月25日、お弁当と勉強道具片手に塾に収容された。
ひたすら過去問を解き、解くだけの10時間。僕のクラスの人たちは謎に頭がいいから、僕は足を引っ張っちゃってる。
国語では読解文が意味分からんし、算数、いや、数学は公式が忘れちゃうし、英語はスピーキングで、理科も社会もボロボロ。
でも、それでも明保野中央に受かってみせるんだ。
午前11時、休憩の時間中に、とある封筒が一封、先生から貰った。中身を見ると3週間前に受けた模試の結果だ。
偏差値 国語 61 前回 59
    数学 63 前回 61
    英語 57 前回 55
    理科 59 前回 56
    社会 65 前回 62
3教科平均 62
5教科平均 63
第一志望 愛知県立明保野中央高校 B判定(合格率60%)
第二志望 私立境第二高校     B判定(合格率75%)
第三志望 私立尾張大学附属高校  A判定(合格率90%以上)
「よっし!」
塾友「どうしたの?」
「明保野中央、B判来た!」
塾友「まじ?ってか社明保野中央受けるんだ。」
「そうだよ。え、君は?」
塾友「えー、僕は三河高校。」
「まじで!?頭いいところよね。」
塾友「まあね、偏差値75で今の所B判定。」
「いい意味で気持ち悪いわw」
周りが可笑しい、狂ってるだけ。僕はありのまま。『努力』だけで掴んだB判定に心の中は晴天の霹靂。今日の天気は曇天、5℃の空。
この日の午後から調子が良く、第二志望の境第二の過去問を余裕伯爵で乗り越え、聖夜をまあ楽しく終えた。
 18時、帰り道。
自転車を漕いでいる。
「あ、瞬じゃん!」
榎本「よっ!晃汰郎!」
近くのローソンで自転車を停めた。
「聞いて聞いて、明保野中央B判きたわ!」
榎本「まじ!?俺堂園学園A判定きました!」
「すげぇ!まじでいってる?!」
こんな判定の話で盛り上がれる年、こんな年もいいね。
「すみません。じゃあLチキの、レッド1つと、これで。」
店員「はい、366円です。」
コンビニを出て、寒い豊川の夜空の下に2人たむろう。
「うまいね。」
榎本「そいだね。ところでさ、毛利にB判の事言った?」
「もう言ったよ。ちょっと返信見てみるわ。」

「明保野中央高校、B判定きたよ!」
柚愛「マジで!?私も今B判だからさ、一緒に頑張ろう!」
「うん!」

今の僕には明保野中央に、柚愛と一緒に、投稿している未来が想像できる。
柚愛「おはよう!こーたろー!高校も一緒だね!」

そのまま榎本と一緒に帰った聖夜であった。

そして3ヶ日合宿。勉強道具と4日分の生活道具を持ってバスを持っていた。
森の奥の静かな場所で勉強に猛集中。不思議と今だけは勉強が楽しいんだ。
寝る時も、食事中も、お風呂に入っている時でさえも、勉強を怠らない僕に国民栄誉賞を贈りたいよ。
そしていつの間にか後5分で年を越す。
布団の中で柚愛とLINEしていた僕。
「今どこ?」 23:57
柚愛「宿舎だよ、塾のね。」 23:57
「そっか、同じだよ。塾の宿舎。」 23:57
「明保野中央の過去問やってみたよ。手応え覚えてきた。」 23:58
柚愛「そうなの!?私も覚えてきたかも。一緒だね。」 23:58
「このまま一緒に頑張ろうね。」 23:59
柚愛「頑張ろう!もうそろ年越すよ!?」23:59
「3、2、1!」 23:59
「明けましておめでとう!今年も、高校でもよろしく!」 0:00
柚愛「明けましておめでとう!今年も、高校でもよろ~」 0:00
 文脈すらも同じだった、新年明け。
I hope to be with you.
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